明日は晴れると願いたい。
はじめまして、小豆です!
覗いていただきありがとうございます。
初投稿です(汗)自己満足ですが読んでください!
よろしくお願いしますm(_ _)m
雨が、降っている。二週間前からずっと。
青が見たい。君の空の青のような瞳が見たい。
あぁ、早く晴れないかな…
◆◇◆◇
突然だが、私は晴れが嫌いだ。照りつける日射し、雲ひとつない青い空。
私は青が嫌いだ。特に幼馴染みの瞳を連想させる空の青は嫌いだ。
私は太陽が苦手だ。正確に言おう、私は太陽のような人、幼馴染みが苦手だ。
私の幼馴染み、ここでは奴としておこう。奴は太陽のような人だ。誰にでも明るくて、誰にでも優しくて。春の日射しにも、夏の日射しにも、秋の日射しにも、冬の日射しにもなれる人だ。
私と奴は家がマンションの隣同士で、両親が学生時代のバスケ部の先輩後輩同士。だから生まれる前からずっと一緒にいた。生まれてからは家族ぐるみで遊び、バスケを通して仲良くなった。保育園から中学校までずっと一緒で、小学校の低学年までは、それこそ片時も離れずにずっと一緒にいたものだ。
奴は大層モテた。なんていったって外見はサラサラな黒髪でまんまるの空を写したような瞳の天使で、中身は太陽のように明るい子だ。老若男女問わず、みんなが奴を好きになった。私は奴が苦手だったが、奴とするバスケだけは好きだった。
小学校低学年の頃、マンションの向かいの部屋に、ある家族が引っ越して来た。その家族には私達と同い年の女の子、ここではあの子としておこう。あの子がいた。あの子は大層かわいらしい子で、フワフワな茶色い髪に甘いべっこうあめのような瞳。なんというか、パーフェクトな見た目をしていた。
「はじめまして!よろしくね!」
あの子は奴だけを見てそう言った。
あの子は少し我が儘だったが、奴はすぐにあの子と仲良くなり、よく一緒に遊ぶようになった。
あの子は奴が好きなようだった。そしてずっと一緒にいる私のことを疎ましく思っているようで、小さな嫌がらせをされたりもした。私はこの頃からバスケを邪魔される煩わしさで、奴と距離を置くようになった。
クラブでは一緒に楽しくやったが、学校の休み時間は一緒にやらなくなった。私はバスケの邪魔をされることが嫌だという自分の気持ちだけを優先した。奴は何も言わなかった。
中学に上がると、奴と初めてクラスが分かれた。代わりにあの子と同じクラスになり、奴と距離を置いているのにエスカレートした嫌がらせを受けるようになった。
◆◇◆◇
「酷い!何でそんなことするの!?友達だと思ってたのに!」
あるとき、あの子はクラスの全員を味方に付けて、私を悪者に仕立てあげた。
「私はやってない!言いがかりはやめて!どうして信じてくれないの?」
あの子は何故か人を味方に付けるのが上手く、私の交友関係は狭く浅いこともあって、信じてくれる人はいなかった。奴に相談する手もあったが、この時私はすでに奴に対して苦手意識を持っていたため、相談することはなかった。
あの子は定期的に被害を造り、悲劇のヒロインぶって私を貶めた。クラスで私は悪者扱いされ、いじめが発生した。私は気にしないよう心がけたが、それがいけなかったのか、いじめはエスカレートした。
そんなある日、私は久しぶりに奴に会った。その日私は水をかけられて、とても疲れて帰っているところだった。
私は奴に酷く八つ当たりをした。支離滅裂な言葉で罵り、大嫌いと言った。奴も怒って嫌いになればいいと思い、奴を見た。
どんなときでも、奴は奴だった。
奴は一瞬傷付いた顔をしたが、すぐに心配そうな顔をして言った。
「お前、変な噂流れてるけど大丈夫か?俺で良かったら話聞くぞ。無理すんな」
奴は優しかった。私はとてもいたたまれなくなった。
「やっぱりアンタ何か大嫌い!」
私は走って逃げ出した。後悔した。優しい奴と一緒にいると、自分が何か汚らしいものに変わった気分だった。これだから、私は奴が苦手なのだ。
中学3年の春、私は事故に会い、脚を怪我した。ブレーキの故障による事故だった。スポーツは、もうできないと言われた。部活のバスケを諦めなければならなくなり、私は泣いた。誰のせいにもできなくて、癇癪を起こした。
私は、奴と一緒にバスケができなくなることに、一番ショックを受けた。奴とするバスケが一番好きだった。
クラスのみんなは、ざまあみろと言った。あの子は笑っていた。
私はイヤになり、逃げることにした。高校は奴ともあの子とも違う遠いところに決め、両親を説得し、一人暮らしができるようにした。奴やあの子の両親には教えないでと、涙ながらに頼み込んだ。
卒業式の日、奴は私に言った。
「バスケの強い高校に行く!お前の分も、俺がやるから!だから見てろ!お前も、バスケから離れんなよ!マネージャーとか、しろよ!お前が支えて、俺がやる。それで、一緒にやってることになるだろ?」
奴とは事故にあってから疎遠になっていたから、驚いた。そして、泣きそうになった。でも私は何も言えなかった。見てるとも、ありがとうとも、頑張るとも、頑張ってとも…
高校生活は、快適の一言に尽きた。あの一件で学んだ私は、狭くても深い交流に切り換えて、親友と呼べる存在も出来た。部活はバスケ部のマネージャーになり、充実した日々を送った。奴の話は、定期的に私に聞こえてきた。頑張っている、ようだった。
バイトもした。喫茶店のバイトだ。穏やかなマスターに優しい奥さん、少し厳しいバイトの先輩。何もかもが優しかった。逃げてよかったと心から思えたが、奴のことが気がかりだった。
高2の冬、私は久しぶりにマンションに帰ってきていた。奴とあの子は出かけているようで、心底ほっとした。
家族の団らんを楽しんでアパートに帰ろうとマンションを出ると、奴とあの子がいた。あの子は何事もなかったかのように久しぶりと言い、「あたし達、付き合っているのよ」と自慢気に話した。
私は奴から目が離せなかった。中学では同じだった背丈が頭ひとつ分大きくなり、幼めだった顔つきが男らしく精悍になっていた。簡潔に言うと、かっこよくなっていた。バスケ部のエースと言うのも、納得だった。
あの子が喋っている間、奴は黙って下を向いていたので、私がどうかしたのかと聞くと、いきなり私の肩を掴んで「違う!」と叫んだ。
「俺はコイツと付き合ってない!俺が好きなのはお前だ!」
驚いて突き飛ばした。奴はすごく傷付いた顔をした。二人して黙っていると、あの子がブツブツ言い出した。
「おかしい…おかしい…なんで…どうして…あたしを好きじゃないとおかしいのに……おまえがいるから…おまえがいるから…おまえが!!」
私は車道に向かって突き飛ばされていた。全てがスローモーションに見える中で、奴だけが私に向かって手を伸ばし、私を突き飛ばした。
次の瞬間、目の前をトラックが通り過ぎた。
◆◇◆◇
気がついたら病院の手術室前にいた。奴とあの子はいなかった。一緒にいた人に聞くと、奴は手術室の中で、あの子は取り押さえられて、警察に連れていかれたらしい。私は救急隊員の質問にしっかりと答えていたらしいが、全く記憶がない。
とりあえず私や奴の両親に連絡をと思いその場を離れると、私と奴の両親が此方に向かって走ってきていた。4人は私を見てとると、私は大丈夫か、奴は無事かと聞いてきた。私はただそれに、わからない、どうしよう、ごめんなさいと、そればかり繰り返していた。
奴が手術室から出てきた。包帯が沢山巻いてあって、怖かった。このまま死んでしまうのではと思い、恐ろしかった。医師は、覚悟してくださいと言った。奴の母は泣き崩れ、奴の父はそれを支えながら、医師に奴の状態を聞いていた。
奴はそれから二週間も目を覚ましていない。その間、ずっと雨が降っている。天気予報は晴れなのに。
私はその間、ずっと奴についていた。死んでしまったらどうしようとか、バスケができなくなったらどうしようとか、考えることは沢山あるはずなのに、私はずっと事故の前の告白を思い出していた。
こうなってからで情けない限りだが、私も奴が好きだと気づいた。バスケを私の分まで頑張ると言ってくれて嬉しかった。救われた。胸が痛かった。泣きたかった。どうして今気づいてしまったのか。
あぁ、奴が好きだ。
思えば小さい頃から私は奴が好きだったのだろう。
「ねぇ、起きてよ…」
あぁ、晴れた空が見たい。あの青い綺麗な空が見たい。
あぁ、今度こそ天気予報の通りに、
明日は晴れると願いたい。
読んでいただきありがとうございました。下手ですみません(汗)
ハッピーエンドじゃないと思った方、待って!奴視点もあるから!ちゃんとハッピーエンドだから見捨てないで!