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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

七戦鬼シリーズ

《銀の兎》の嫁は婚約破棄された他国の公爵令嬢

作者: サウス・ジュン

「皆、聞け!この俺、ハープル王国第一王子エリオット・ハープルと、リスタング公爵家のリーズ・リスタングとの婚約をこの場で破棄する!また、新たな婚約者にアロマー男爵家のチュリ・アロマーを決定したことをここに告げる!」


その宣言に、思わず俺は食べていた鹿肉を落としてしまった。

ちらりと俺の後ろに控えていた執事のジャンと侍女のマイヤを見てみると、二人とも驚いた表情を浮かべていたので聞き間違えではないようだ。


本日は、楽しい楽しい魔法学園の卒業パーティーの夜会で、俺も忙しくてあまり通えなかったとはいえ、最後くらいはと思って出たのたが・・・


会場内は、夜会とは思えないほど静かになった。

その中心人物・・・婚約破棄を宣言したのは、ここ、ハープル王国の第一王子様だが、彼の周りには彼の側近達と、何故かその豪華な面子に囲まれて守られているような状況庇護欲をそそる見た目のご令嬢。

そして、その正面に一人で静かに佇む、王子様の婚約者のリーズ・リスタング公爵令嬢という構図になっている。


静かになった会場に王子の声が響く。


「お前のような輩に王妃は勤まらない!この性悪女め!」


婚約者に対して何があればここまでのことが言えるんだろうか?正直、訳がわからなかったが、どうやら目の前でおこっているのは紛れもない婚約破棄らしい。


ここで、さっきまで静かに聞いていた公爵令嬢が口をひらいた。


「殿下。婚約破棄とはどういうことでしょうか?それに、そちらのご令嬢はどなたでしょうか?もしかして、その方をエスコートするから、私のエスコートをしなかったのですか?」

「白々しい!貴様は己の罪すら認めぬというのか!」

「殿下。会話になってませんよ。質問に答えてください。そもそも罪とはなんのことでしょう?」

「あくまで、しらを切るか!ならば、説明してやる!ここにいるチュリに対して貴様は今まで数々の嫌がらせをおこない、暗殺者をおくり、あまつさえ、階段から突き落としただろうが!」

「やってませんよ。そもそも、そちらのご令嬢とは初対面です。それと、殿下は婚約者の私がいながら他の女に浮気していたのですか?」

「話をごまかすな!」

「こちらの台詞です。」


・・・なんだろ、凄い会話が噛み合ってない。特に王子。

ちらっと、王子が庇っている令嬢をみると、そいつはなんと弱冠笑みを浮かべていた。


(こりゃ・・・自演かな?)


なんとなく、そんな気がした。

見られているのに気づいた令嬢は笑みを消して、守ってよーという感じのか弱い感じの表情を浮かべた。

・・・うん。こりゃ黒だな。


視線を王子と公爵令嬢に戻すと、どうやら、みんなで罪状を言って公爵令嬢を糾弾しているところだった。


公爵令嬢は黙って聞いてはいたが、少し悲しそうな顔を浮かべていた。

それをみて、俺は・・・


ちらっと、国王の方を見てみると、向こうも丁度、こちらをみていた。

アイコンタクトでどうやら俺がやっても大丈夫そうだ。

ちなみに、王妃は怒りが我慢できないのか、笑顔の迫力が増していた。


そうこうしているうちに、断罪劇は佳境に入ったようだ。

行くなら、今しかないか・・・

ジャンとマイヤの方を一瞥すると、軽く頷いた。

それをみて、俺は足を舞台へと向けた。


「貴様は、心優しいチュリに嫌がらせをして、尚且つ殺しかけた。未来の王妃には到底向かない!よって、貴様は婚約破棄して、国外追放とす「あー、ちょっと待ってくれるか。」る・・・」


言い切られる前に俺は言葉を被せて前に出ていく。

何事かと会場中から視線が集まる。


「何者だか知らぬが、後にしろ!今はこいつの・・・」

「いや、だからあんまり短慮だと国王は勤まらないぞ?話を聞けよ。」

「なにを!」


この程度の言葉で怒るとはな・・・まあ、俺様王子なら仕方ないのかな?


「そもそも貴様は何者だ!」


王子の側近の一人がそう聞いてくる。


「俺か?俺はアラン・ルーニエ。」

「ルーニエってまさか・・・」


おっと、さすが公爵令嬢。知ってるよな。

会場のほとんどの人は俺の名前だけで分かったみたいだ。

・・・一部を除いて。


「ふん!何者かは知らんが王族に対する不敬には変わらない。衛兵!この者を捕らえよ!」


わかってない。王子はそう声高らかに指示を出すが、誰も動かない。


「なにをしている!さっさと捕らえよ!」

「無茶言っちゃダメだよ。そんなことしたら戦争になるかもしれないしね。」

「なんだと?」


訝しそうにみてくる王子と側近。(あと、男爵令嬢)

まさか、ここまで無知とは・・・


「なあ、ルーニエ王国って国は知ってるか?」

「なんだ?当たり前だろう。ここ最近になり栄えた国だろ?」


知っててもこれなのか・・・

頭がいたいよ・・・


「そうそう。で?俺の名前はアラン・ルーニエ。分かったかな?」

「ふん。それがどう・・・」


すると、そこで動きが止まる王子。


「な・・・まさか・・・」

「じゃあ、正式に名乗ろうかな。」


俺は変身魔法を解くと、左胸に銀のバッジをつける。

驚愕している王子と側近に見せつけるように宣言した。


「俺の名前はアラン・ルーニエ。ルーニエ王国の国王にして、七戦鬼が一人『銀の兎』の称号を与えられし者だ。」

「なぁ・・・!」

「えっ・・・うそ・・・!」


驚愕する、王子と側近達。

七戦鬼とはかつての戦争でその当時の最大の敵であった帝国を滅ぼした7人に与えられた称号で、それぞれ色と動物をモチーフにされている。

何故か俺は兎だったのが、少し納得いかないが・・・

まあ、ぶっちゃけ、最強とされる7人の1人が俺でついでに国王なのです。


とまあ、それはさておき。


「さて、それでは話をしましょうか。ハープル王国第一王子殿。」


にやりと笑ってやると、前ほどまで自信満々だった王子は真っ青になった。

まあ、そりゃ他国の王様に不敬を働きそうになればそうなるか。


「まあ、今回の婚約破棄は他国の問題だから本来なら俺は介入しない。だけど、巻き込まれた以上は俺は事実をはっきりと証明してみせよう。」

「じ、事実もなにも、その女が・・・」

「少し黙ってくれ。」


そう言って睨めば王子は静かになった。

五月蠅いやつだな・・・


「さて、結構有名だと思うけど、俺は変わった魔法を使えてね。こういった断罪劇などでは特に有効なものなんだが・・・今からそれを使う。ハープル国王陛下よろしいかな?」


そう言って俺は馴染深い人物に視線を向ける。


「お願いしてもよろしいかな?ルーニエ国王陛下。このような細事に付き合わせて申し訳ないが・・・」

「なっ・・・父上!」

「黙れ馬鹿者。ルーニエ殿よろしく頼む。皆のもの。今からルーニエ殿が示すものが真実だ。逆らったものは反逆罪とみなす。」


さすが、国王。わかってるな。


「では、はじめます。《我、アラン・ルーニエが欲す。真実を示す者よ。偽りをほふりて、その真実を曝け出せ。》」


詠唱が終わると俺の後ろには魔方陣が浮かぶ。

そして、会場の人間はすべて口を閉ざす。


オリジナル魔法《審判》

これは、指定範囲の人間が真実のみを話すようになる魔法。

いわば、嘘がつけないようにするためのものだ。

俺からの質問には絶対真実を回答して、偽りは一切口にできない。


さて、それでは


「では、まず、リーズ・リスタング公爵令嬢に問う。あなたはそこの、チュリ・アロマー男爵令嬢に対して嫌がらせをしたか?」

「いいえ。してません。」

「では、そこのアロマー男爵令嬢との初対面はいつだ。」

「本日はじめてお会いしました。」

「では、ここ一年の間の嫌がらせとやらには心当たりはあるか?」

「いいえ。私は王妃教育に忙しくてほとんど学校には通えなかったので。」


そこで、公爵令嬢の言葉に目を見開く王子。

まさか、婚約者の動向すらしらなかったのか・・・


「では、次にエリオット・ハープル王子に問う。あなたは、そこのアロマー男爵令嬢とはいつ知り合った?」

「2年になって、チュリが転入してからすぐに。」

「いつから恋仲になった。」

「転入してきてから1ヶ月くらいで。」

「婚約者がいたのにか?」

「はい。」


呆れたものた。不誠実な男とはこういうやつなのだろう。

国王も呆れてるし、王妃はもはや見るのが怖いレベルなんだけど・・・

じゃあ、最後に・・・


「では、チュリ・アロマー男爵令嬢に問う嫌がらせを受けたのは本当か?」

「嘘です。」


やっぱりか・・・

王子は今の発言にさらに顔面がおもしろくなってるし、言った本人も焦ったように口を閉じようとしてできなくて困ってる。


「では、何故そのようなことを?」

「そうすれば、王妃になれると思って。」

「では、嫌がらせはすべて自作自演か?」

「はい。」


王子はもはや顔面が蒼白になった。

録に確認もせずに断罪したんだろうな・・・

まあ、それはさておき。


「では、貴様は、王妃になるために、リーズ・リスタング公爵令嬢に冤罪をきせて、断罪するつもりであったと?」

「はい。」

「ふむ。わかった。」


俺はそこで、《審判》を解くと。

会場中が騒々しくなる。


なにやら、男爵令嬢は王子に言い訳をしており、王子は顔面蒼白。

公爵令嬢はわずかに傷ついた表情を浮かべてはいたが大丈夫そうだ。


さて・・・・


俺はアイコンタクトで国王陛下に先を促す。


「そこの男爵令嬢を捕らえよ!あと、エリオットと側近も部室にてゆっくり話を聞いてから断じよう。エリオット。とりあえず、貴様は王太子候補からは外す。この馬鹿者が!」

「なっ・・・父上!」

「ちょっと!何よこれ!離しなさいよ!」

「チュリ!貴様ら!チュリを離せ!」


青い顔の側近達と、暴れる男爵令嬢と王子は連れてかれた。

国王は改めて宴を続行を宣言してそのまま宴は再開された。


「すまなったな。リーズ。うちの馬鹿者が・・・婚約は破棄にするから。あとのことはこちらにまかせてくれ。」

「ごめんなさいね。リーズちゃん。あの馬鹿息子には私が教育するから・・・」


黙りだった王妃様はどうやら後で発散するようだ。

と、それはさておき、


「ハープル国王陛下。」

「貴殿もすまなったな。我が国の問題に巻き込んでしまって・・・」

「ほんとに、ごめんなさいね。アラン。」


国王と王妃に謝られた。


「いえ、気にしないでください。それよりも実は一つお願いがいりまして。」

「ふむ。聞こうか。」

「では、その前に・・・」


俺はリーズ・リスタング公爵令嬢の前に移動して膝をついた。


「リーズ・リスタング公爵令嬢。こんなタイミングでの宣言になりますが、あなたに結婚を申し込みます。」


ざわりと会場が騒がしくなった。

まあ、婚約破棄騒動のあとの求婚とかおかしいわな。

現に、リーズ・リスタング公爵令嬢もめっちゃ驚いてるし。

ちなみに、国王は苦笑い。王妃は瞳を輝かせていた。

衆人環視での求婚とか辛いな。

でも・・・


俺はリーズの瞳を見つめて言った。


「先程のあなたをみて、私はあなたとならともに生きていきたいと思いました。いえ、あなたに一目惚れしてしまったのです。」


俺の台詞にリーズはどんどん顔が赤くなっていく。

まあ、実際一目惚れは本当かも。

きつい顔立ちの美人なリーズに惚れてしまった。

なにより、さっきの我慢しているような表情に思わず守りたくなる庇護欲をそそられてしまったのだ。


「先程辛い経験をされたあなたには酷かもしれません。無理強いはしたくありませんが、望まれるなら是非とも手をとってください。好きですリーズ嬢。私の・・・私の妻になってください。」


リーズはわずかに迷っていたようだったが決心がついたのか、笑顔で手をとってくれた。


「こんな私でよければ、是非とも、ルーニエ様の隣に立たせてください。」

「あなたがいいんです。リーズ。」

「はい。アラン様。」


そう言うと、会場中から盛大に拍手をもらった。



リーズはそのあとに、両親や姉、友人に盛大に祝福されて、ルーニエ王国の王妃になった。

まあ、その間に色々あったけど、そこは省きますわ。


強いて言えば、リーズは実はかなり甘えん坊なのが分かり、俺は彼女を溺愛してしまいました。


こうして、俺は他国の婚約破棄された令嬢を嫁に貰って、リーズとその子供たちと明るく楽しく国を盛り上げることができた。


俺はリーズのおかげて最高に幸せだ。









お読みいただきありがとうございます。

婚約破棄ものでした。


捕捉・・・

ちなみに、ヒロインは前世の記憶持ちです。

悪役令嬢のリーズは本来は王子を好きな設定なのに、この世界では歯車がくるい、特には好いてはいませんでした。幼馴染みに近いかな?


主人公は記憶はありません。

完全なイレギュラーな存在。

ちなみに、他国の学園に通っていたのは、文化交流のためで、国へは転移魔法で一瞬で帰れます。


あと、王子たちのその後は・・・リクエストあれば書きますが、基本はご想像にお任せします。


と、まあ、蛇足でした。

ふわふわ設定なのであまり突っ込まないでくれると助かります。

それではm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] こういう話見ていつも思うんだけど、男爵令嬢が性悪女ってわかったすぐあとに「チュリ!貴様らチュリを離せ!」みたいな反応が出て来るのが不思議でしょーがないです。騙されて恥かかされて地位も失って、…
[一言] 主人公がどや顔で自分の地位を明かすのはかなり痛いというか、格好よくないというか、むしろキモいというか。 まぁ、割りと安易な作品だったんじゃないかと思いました。
[一言] まさかの主人公イレギュラーw スカッと面白い作品でしたw 他視点や外伝、なんなら他の六戦鬼も出してくださってもいいんですよ?(暴投
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