2話
最初は一つの事件からだった。
5月2日
本日は晴天なり、誰かが昔言った言葉だ。
この時期にしては気温が高く太陽が僕を嘲笑うように照り輝いている。
今日は五月の大型連休の2日目、1日目は何もなく家に引き篭もって休みを謳歌していた。
2日目も…いや、大型連休全てを折角だからとごろごろしながら過ごそうとしていた所、母親に子供は外に出ろというお達しから、大型連休が始まって僅か2日目にして休みを謳歌しようとする少年の願い虚しく、大型ショッピングモールに1人寂しく足を伸ばそうとしているところだ。
僕の事を少し話そう。能力未だに発現せず、彼女はいない、友達は少なくはない方で東京の私立の高校2年生だ。一つ下の妹がいて、母さんと妹と3人で暮らしている。父親は海外を転々としており何の職業かはわかってない。
「ほんと僕ら3人置いて何してるんだろ、あの親父…。」
そんなことをぼやいていたらショッピングモールに辿りついていた。
「あ、すみません。」
ふわりといい匂いがした。入り口付近で僕と同じくらいの歳の、綺麗な黒髪を肩口付近まで伸ばしている少女が、端末を見ていたからか後ろからぶつかってきて、その事を振り返って僕に謝罪をした。
「いえいえ、こちらこそ。」
「急いでいるので、これで失礼します。」
と在り来りな事しか返事が出来てない僕を気にすることなく、少女はショッピングモールの奥に消えて行った。
「綺麗な人だったな~」
少女が見えなくなった後思わず呟き、母親に帰ったら多少の恨み言の一つや二つを言うと決めていたのをやめようと思った瞬間だった。
このショッピングモールは大きく、大抵のものはここに来れば揃う事から主婦にも僕ら学生にも重宝されている。閑散としている所を見たことがないけれども大型連休だからというべきか、この時期は人が多い、いつもの2倍増しである。
僕の今日の目的は好きな漫画の発売日という事で、その本を買うために本屋に立ち寄る予定だ。そこでなら、立ち読みでもして時間が潰せるだろうという打算もあった。そして、朝から綺麗な女の子を見れた事からか自然と歩くスピードが上がっていた。
「ふぅ、いい買い物をしたよ。」
目的の物が買え、さらにはある程度時間が潰せた事もあり帰路に着こうとお店を出てショッピングモールから出ようと1歩を踏み出した時に事件は起こった。
バンッ、バンッ、バンッ
"キャーーーーー!!"
一階の入り口付近から銃声と共に女性の悲鳴が聞こえた気がした。