修行して来たゼ
謎のドアを潜って到着したのは道場らしき場所であった。
タケル&レイジが状況を整理していたところ、「お二人、何者かな?」と道着を着た爺さんが現れた。雰囲気からして、個々の道場の師範といったところか?
「日本語だね」
「言葉は通じるみてぇだな。ラッキーだぜ。俺たち、後ろにあるドアで別世界からやって来たんだ」
「はて? ドアとな? ワシにはそのようなものは見えぬが……」
タケルとレイジは顔を合わせて、首を傾げる。どうやらこの老人にもドアは視覚出来ないらしい。
「まぁよい。別世界の者だということは分かった。そいでお主ら、この世界でどうする気じゃ?」
「とりあえず、住む場所だよなぁ。どうしたもんか……」
「なら、ウチの道場に来るが良い。衣食住を提供してやろう」
「えっ? いいんですか?」
「ただし……」
筆のような眉毛が上がり、老人は目を光らせる。
「イセカイック拳法を習得して貰う。ワシはこの拳法を広めたいのじゃ。ゆえに1人でも多くの弟子が欲しいのじゃ。一方、お主らは衣食住が欲しい。利害一致しておるじゃろ? なーに、ついていけなければいつでも辞めても構わんよ」
「なーるほどな。どーするレイジ?」
「他にあてがない以上、ここにお世話になる方が得策だろうね。現状は」
「利害一致なんだから、一方的に胡散臭くもねぇ。こりゃあ、ノるべきだな。決めたぜ。俺たちはあんたの弟子になる。俺の名前はタケルだ」
「僕はレイジです」
「ワシは異仙人じゃ。いは異世界の異じゃぞ」
異仙人は2人に背を向け、屋内へと歩き出す。
「空き部屋がある。そこに案内しよう。ついて来るのじゃ」
「おっす」
「はい」
タケルとレイジは異仙人の下、修行をする事となった。
――それから数年後。
「ありがとな異仙人のじっちゃん。修行で培った力を持ってすれば俺たちは元の世界でウハウハ人生だ。元の世界の腐った部分を潰して、楽しく生きていくぜ」
「お世話になりました。では……」
「うむ。イセカイック拳法を有効活用してくれる人が増える。これほど光栄なことはない。達者でな」
タケルとレイジは異仙人に別れの挨拶をし、元来たドアへと再び戻った。
以前の2人は中肉中背だったが、今の彼らは筋骨隆々としており、髪もド派手に逆立っており、まるでプロの格闘家。いや、それ以上の覇気を持つ。覇者の面構えをしていた。