エリートになっても報われない現代社会だから異世界へ行ってみるゼ
ある日の真昼間のことだ。
24歳成人男性であるタケルはコンビニから出て来て、近くのベンチに座った。コンビニで買ったペットボトルのスポーツドリンクを飲み始めた。その時、タケルにとって聞き慣れた男の声が。自分の名を呼ぶ声に反応し、首を向けたら大学時代の友・レイジがいた。
「やぁタケル君。久しぶり」
「おぉ。レイジか」
「あれ? 君さぁ、とある大企業に就職したんじゃなかったっけ? 内定が決まった時、嬉しそうに内定手続きの書類を見せてくれたじゃないか」
「俺、会社辞めたんだよ。長時間労働・激務過ぎてよぉ。あんなトコロで働き続けたらマジ死ぬぜ。高給取りの正社員といっても、毎日12~13時間労働、土曜出勤当たり前じゃあ、給料使う前に死んじまうぜ」
「なるほど。死ぬ前に回避。賢明な判断だね」
「そういうお前も真昼間から私服でブラついているじゃねぇか。お前、教師になったハズだろ?」
「君と同じく、辞めたのさ」
「クソ忙しいのか?」
レイジは爽やかに首肯し、話を続ける。
「それもあるけど、ストレスがね……。モンスターペアレンツに、いじめ問題にと人間不信になっちゃうよまったく……」
「狂っているよなぁ。働いていると生きているのか死んでいるのか分かんねぇよ」
「う~む。報われないよねぇ。僕ら、日本最高峰の学歴を手に入れたのに……」
「なー。一流大学出た奴には一日6時間・週4日・月収30万以上くれてやってもいいのによぉ~」
「実際は、どの大学を出ても激務を強いられ、人間としての尊厳を奪われるだけなんだろうね」
「政治家や大企業のクソ経営者とかブッ殺してぇなぁ~」
「他人を殺してしまったら、逮捕されちゃうじゃないか」
「わーってるよ。ぼやいただけだって。んあ?」
タケルが顔を上げた時、異常なるものを目にした。奇妙な扉である。
「なんか変な扉あっぞ?」
「えっ? 確かに……」
しかし、タケルとレイジ以外のその周辺にいる通行人たちは謎の扉の存在に反応もせず、淡々と歩き進んでいく。
「どういうこった? あの扉、俺ら以外には見えていねぇのか?」
「現状、そう判断していいだろうね。どうする?」
「とりあえず、近付いてみっか。どーせ、今無職の俺らは暇なんだしよ」
「OK」
ちょっとした好奇心で2人の青年は謎の扉へと接近した。
タケルはまず扉に触れてみた。
「触れるみてぇだな」
レイジはコンと手の甲を使ってドアを叩いてみる。なんの変哲もない、木製ドアを叩いた時に響く音が聞こえた。どこかで聞いたことがあるような音だ。
「ノック音がするだけ……。ドアの向こう側の近辺には人はいないようだ……」
「誰かの家の扉ってワケではなさそうだな。開けてみっか?」
「ここまで来たらね……」
好奇心・恐怖心が入り混じりながらも、2人はドアノブを捻った。ドアを開けた先には……。
乱れる道着。飛び散る汗。複数の武闘家らしき人物が拳を振り、蹴りを描く。演武を披露していた。
そこの世界の人間は耳が翼のような形状をしており、自分らと同じ人間ではないのだとタケル&レイジは納得した。
「おいおい、ファンタジーな世界への扉だったってぇのかよ?」
「そう判断するのが一番しっくり来るだろうね……」
つづーくぅ