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…シリアスとコメディ?の差分が…

叶うならば、何時まででもリリィの反応を愛でていたいけれど、まだ学生の身分では時間は僅かながらの有限しかない。


少しでも事の終わりを早めて、束の間のひと時だけでも心穏やかに彼女と過ごしたいと思う気持ちを胸に、繋ぐ手をソファーの上に置き、中断してしまった話を再開した。


「…もう一度、訊くよ?誰に、言われたの…?」





「――…言えません…」

「……え…」


数秒か数分か。問いかけに対して赤く染めた顔は直ぐになりを潜め、何かを隠すように俯いた彼女だったけれど、再度視線を交わした時に見せた表情は毅然とした、社交の場でよく彼女が見せる物へと変わっていた。

それと共に告げられた言葉は、彼女の意志も頑なであることを態度で示している。

ソレはつまり、僕には…いや、僕にも言えないと捉えるべきなのか、判断に迷う物だった。


思わず零れた意味を成さぬ声は、驚嘆のただ一つ。

なぜなら、今までその振る舞いを自分にへと向けられた事は公の場以外ではなかったから。

しかも、話の内容が内容だ。

つい先ほどまで見せていた年相応なリリィは何処にも居ない。

今、目の前に居る彼女は、僕のリリィではなく、“公爵家令嬢”としてのリーリアに変わっていた。


「――――それで、僕が諦めると思ったの…?」

「え…?」


少し前までの僕ならば、諦めてしまったかもしれない。やはり、僕は必要とされてないのだろうと取っただろう。

だけど、さっきの彼女の姿を見て、彼女のリリィの心を信じると決めたからには、ここで引き下がるなど、しかも素直に是と頷くなど到底できる事ではなかった。


「リリィは、僕に言ったよね?“必要”だって。そう望まれてるなら、僕は破棄を認めない。爵位を持ち出されても、関係ない。公爵に見合うまでの功績は早々出せないだろうけど、学業の合間にだけど、それなりに実績を上げてきたんだ。伝手を使って、何処かの上位階級の養子に入って、もう一度リリィに求婚するだけだからね?あ。その間に誰かに求婚される可能性もあるね。あの公爵が早々頭を縦に振ることはないだろうけど、リリィは綺麗で可愛いから、僕って言うこんやくしゃが居なくなったら、沢山お見合いを求められるかもしれない…。うん。その時は、全身全霊をかけて未然に防ぐから安心してね?リリィが嫌な思いをせずに済むよう、ちゃんと守るから」


「ふぇ…?」


突然語り出すように始めた会話についていけないのか、毅然とした様子は軽い驚きに変わり、最後にはきょとんと丸い瞳を瞬かせた状態でこちらを見つめるリリィに、ただひたすら撫で回したい気分を頂いた。

あああああ。もう、『ふぇ…?』って何?!可愛いなあ、可愛いなあ。可愛いなぁぁ!

話が纏まるまで、良い意味で終わるまでソレは我慢だと、撫でたい衝動に手が微かに戦慄くのを理性で必死に抑えて、もう一度確認するように話しかける。


「それでも、リリィは破棄を求める…?」


自信満々に、言ったことは嘘偽りではなく本気だよ?と、暗に示すように訊ねれば、え…っ!?えっと……あの…。と、また困ったように誰かに助けを求めるように視線をさ迷わせ、少し開けたドアの向こう―廊下―に、侍女が控えていると判っているものの、助けを求められる内容ではないと判断したのか、何度か視線を向けただけで留め、最後には自分の足元を見るかのように俯く反応で動きを止めるリリィ。


自分なりに冷静に理性的にと思いながら、心情を結構ダダ漏れさせたかな?と、自分の愛情の重さにリリィが怖がっていないか引いていないか不安に思いつつも、青褪めたり嫌悪したりと言う兆候は見えず、そして変わらず繋いだままの手が振り払われてない現状に、まだ大丈夫かな…?と、望み交じりの予想をして、窺ってみる。


「……もし、破棄をしないでくれるのなら、凄く気にはなるけれど…とりあえず、今は、誰がそんな嘘八百も甚だしい事を言ったのかは、訊かないよ…」

「…リース、様…?」


「公爵には、負けるかもしれないけど…いや、公爵の場合は、かぞく愛だろうから次元が違うと思うけど。女性として、リリィの事を誰よりも好きで愛してるって僕は自負できるだけの自信がある。…だから、どうか…僕を婚約者に、将来の夫にするのを許してほしい…」


泣き落としに近い訴えだと、女々しくも卑怯な手だとも判ってる。

実際のところ、仮の未来として破棄された場合の話をしてみせたけれど、ソレは“もしも”の話で。出来る事ならば、そんな未来が来ないでほしいと切に願っている。

破棄をされてしまえば、今までのように接することが叶わなくなる。

求婚を受け入れてもらえるまで、その準備をするまでに他の誰かにリリィが触れるなんて到底許せることじゃない。

――――もし、そんな事が起きれば……自分がどうなるか、想像も出来ないのだから。


「僕は、これからもずっとリリィと一緒に居たい…」


子供じみた要求だと内心自嘲しながら、最後に、これが本当の最後だと自分に言い聞かせて、だから…。と、一字一句自分の想いを乗せて告げる。


「婚約の破棄はしない、って言ってほしい…」

「――――…っ…」


息を詰めたように声を溢すリリィに、思わず不安に駆られて繋いでいる手に力がこもる。

恐怖に近い何かに鼓動も徐々に早まってきた。

これ以上は何も言わないと自分で決め、ギュッと唇を閉ざし、最終判決へんとうの時を待つ。





「…しません…」

「…!」


一部だけとは言え返された物に、思わず顔が緩みそうになるのを抑えて、ハッキリと告げてもらうのを待つ。


「婚約の破棄は、しま……――――」

「?!リリィ…っ!?」


――が、一変した状況にそんな物を気にする余裕なんて微塵もなかった。


「…リアっ!!!」


答えを得れると思った瞬間、彼女が突然首元を押さえて苦しみだした。

繋いだ手を離し、様子を見るために彼女の両肩に手を置いた時に、パキン…!と割れる何かの音がやけに耳に響いて残った。


間もなく薄紅色の瞳に宿る彼女の輝きを映していた光が消え、腕の中で息もなくぐったりした姿に、ひゅ…っと引き攣れた声しか出せなくなっている自分に届く、自分とは違う彼女の愛称を呼ぶ深い低い声に、一体何が起きたのか判らない現実に、頭も視界も色を失くしたように何も見えなくなった。



たぶん、皆様もお気づきだと思いますが、最後の一言がお父様です…!

一応、登場です><。


これから、シリアスに突入です(たぶん)←

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