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連載の場合、どれくらいが読みやすいのか思案しての区切りのため、若干ぶつ切り感があると思います(汗)

「っ…?!」


不意に聞こえた小さな悲鳴に意識を向ければ、にわかに怯えた様子で微かに逃げの体勢になる婚約者。

ああ…思念が駄々漏れてたかな。


仕草は怖がってるように見えるのに、自分へと向けられる表情は眉をハの字に変え恥ずかしげに頬を赤めている。


しかも、出会って間もなく告げられた『婚約破棄』の時からそうだったけれど、惜しみもなく瞳に透明な膜を纏わせている眼差しは、本人には自覚は無いだろうけど、此方からすれば色々な意味で煽ってくれて仕方ない。



腰まで届く青藤色を帯びた艶やかな黒髪と、ややつり目がちなアーモンド型の透き通った薄紅色な瞳を持つ彼女。

同世代の少女より少しだけ高い身長―彼女がヒールのある靴を履くと、僕と余り差のない高さになるが、そんな些細な事気にしたこともない―と、やや大人びた顔立ちの影響からか、実年齢より上に見られる事が常だけれども、自分からすれば全てが可愛くて愛しい物。


僕からしてみれば、必然のような偶然によって幼い頃に彼女と出逢い、出逢う度に彼女の人となりを知り恋心を自覚してから早七年。

封建制度によって分けられた階級のせいで、添い遂げることは不可能と思っていた彼女への恋慕を、彼女の父親から与えられた“ある条件”と、それに伴う惜しみ無く続けた努力と結果のお陰か、やっと婚約者となれたのが三年前。


あと一年と少しで、今通っている学院―条件の一つとして、我が国で随一と言われる此処を、常に上位成績を修め続ける事がある―を卒業し、晴れて彼女と婚姻を結ぶ事が可能になる。

自分とは別の学院に通っている彼女にとっては、在学中の結婚になってしまい申し訳ないけど、卒業まで待てる気は更々ないので、既にソレに関する懸念事項は解消並びに承諾は獲得済みだ。


学院が全寮制と言うこともあり、卒業までは連日の休みの時しか逢えない彼女に少しでも良く映って欲しいと、学業だけではなく自分磨きや鍛練も日々怠らずに励み。

休日以外の日は時間が許す限り、彼女の家を継ぐ―後継ぎが居らず婿入りする―ために、領主の後継として必要な経済・経営や領地管理に関する物を学業とは別に学び、公爵家として社交界で必要な様々な知識を、その他にも必要と思えた物は何でも取り入れるために頑張って……。


――彼女を、最愛の彼女と死ぬまで一緒に居られる事を、儚い夢でしかなかった物をあと少しで現実の物となる、手に入ると思った矢先の彼女の言葉…。


――――僕が、後先考えず行動に出たとしても可笑しくないですよね…?





「あ…あぁ、あの…。」

「何…?リリィ」


顔を赤め狼狽する姿に、多少ながら溜飲が下がるのを感じながら、意図的に優しく話しかける。


リリィこと、リーリア・シア・デルフトブルーは、この国に存在する十の公爵家の一つである、デルフトブルー家の一人娘だ。


早くに母親を亡くし、片親―父―だけの環境とリリィに関する“ある事”で“公爵令嬢”としての立場は下位にされているが、ソレは外面的な貴族間での事。

自分より立場や階級が高かろうが低かろうが、礼儀に乗っ取った振る舞いが出来る、素敵な少女だ。


そして、その素敵な少女が僕の想いを受け取ってくれた事と、僕が持つ“ある物”のお陰で、彼女の父に婚約するキッカケを与えてもらえ、今の婚約者としての地位を得ている。

――彼女も、僕と同じ気持ちだと、想いを返してくれていた。



…そう、最後に逢ったあの日、あの時までは、確かに…。


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