ストーカーにぬいぐるみを取ってあげて!
「……」
授業中彼女の視線に気づいてないフリをしながら、俺は放課後何をしようか考えていた。
何か面白いことないかなと携帯電話でネットを調べていると、今日は高校近くのゲームセンターがどんなゲームも半額でプレイできるとのこと。
そいつは素晴らしい、今日の放課後はゲームセンターで彼女とデートだな。
放課後になったので学校を出て、少し遅れてついてくる彼女と共にゲームセンターへ向かう。
「うげ……」
店内に入り、ため息をつく。
全部半額だなんて美味しいイベント、皆が飛びつかないはずがない。
まるでフリースクープのように、店内は乞食であふれかえっていた。
「……」
人ごみと騒音が苦手なのか、ちらっと彼女の様子を確認すると居心地が悪そうだ。
ゲームセンターは不良の行くところだって風潮あるしなあ、選択間違えちゃったよ。
引き返そうかなと考えていると、
「……」
彼女の視線が俺ではなく、いつのまにかUFOキャッチャーに向けられていることに気づく。
ふむ、あの大きな熊のぬいぐるみが欲しいのかな。
彼女はコインを投入してぬいぐるみを取ろうとしますが、アームの力が弱くて持ち上げることすらできません。
それでも諦めずにコインを投入する彼女。
くう、不憫じゃないか。
ここはお兄さんが彼女にぬいぐるみをプレゼントしてあげよう。
しかしストーカーとストーカー被害者という関係上、俺が彼女のところまで行って、『取ってあげるよ』とは言いづらいですし、何より俺はUFOキャッチャーが得意でもなんでもない。
取ってあげるよなんてかっこいいこと言って、全然取れなかったら生き恥です。
彼女にも失望されてしまいます。
なのでこっそりと彼女のアシストをしましょう。
「……」
半額とはいえ、既に1000円は使って自棄になりながらぬいぐるみを狙う彼女。
最早俺の事なんて気にもとめていません、ちょっとUFOキャッチャーに嫉妬しちゃいますね。
俺は彼女の向かい側……UFOキャッチャーの裏に隠れます。
そして彼女がぬいぐるみをアームでつかむもすぐに落ちてしまう、その瞬間。
「ふんぬっ!」
俺は思いきりUFOキャッチャーを揺らします。
「……! ……♪」
衝撃でぬいぐるみは台からころんと落ちて、景品取り出し口へと一直線。
「おい君、何をやってるんだ!」
おっと、バイトに見つかってしまった。俺は一目散にゲームセンターから逃げ出す。
「……♪ ……♪」
ぬいぐるみを抱えて嬉しそうな彼女の視線に気づいてないフリをしながら、俺のやったことは正しいことだと自分に言い訳をしていた。
台パン ダメ、ゼッタイ




