ストーカーのチョコ美味しいです!
「明日誰にチョコあげるの?」
「えー特に気になってる男子とかいないしー」
「ほんとー?」
「ほんとよー」
女子はそんな会話をして、
「俺明日紙袋持っていくわ」
「1つも貰えないだろ」
「じゃあ俺逆にチョコあげるわ」
男子はそんな会話をする。
そうです今日は2月13日。
明日は女の子の決戦の日、バレンタインなのです。
「……」
熱心に自分の机でショコラレシピの本を読んでいる彼女。
明日はどんなチョコをくれるのだろうかと思うと、ニヤニヤが止まらない。
例えば自分にチョコレートを塗りたくって……それは流石に引く。
「なあなあ、お前は何個貰えると思ってるんだ?」
恍惚状態に浸っていたのだが、クラスの男子に現実に引き戻される。
ふむ、数か。まあ彼女の分は当然として、
俺はクラスの男子の中じゃ人気ある方だと思うし、義理チョコもそこそこ貰えるんじゃないかなあ。
「本命1。義理4ってとこかな」
「お前みたいな筋肉ダルマがそんな貰えるわけねーだろ」
き、筋肉ダルマだと!? この鍛えに鍛えた美しい肉体を筋肉ダルマ扱いだと!?
「あ? お前みたいなヒョロガキと一緒にすんじゃねえよ、明日5個以上もらえなかったら貰ったチョコ全部屋上から捨ててやらあ!」
「おう約束だぜ。まあ安心しろよ、1つも貰えないだろうから捨てるチョコもねえよ」
ケラケラ笑いながらクラスメイトは自分の席へ戻って行く。
……何を挑発に乗って訳の分からん約束しているんだ俺は!
アホか俺は、もし5個以上もらえなかったら彼女のチョコを捨てる羽目になるんだぞ。
「……!」
彼女の方を見ると、話を聞いていたのか明らかに動揺している。
そりゃそうだ、チョコが少なければ本命チョコをあげても捨てられるかもしれない。
しかしチョコが多くてもそれはライバルが多いということである。
彼女からすれば損しかない展開じゃないか。
翌日。朝早く起きた俺はシャワーをして、身だしなみを整え、ワックスをかける。
バレンタイン当日にこんな事をしても意味がない気もするが、一応ね。
仕度をしている途中に隣の部屋のドアの開く音。
確かめてみると、彼女がいつもより早く登校していた。
恐らく朝早く来て俺の下駄箱か机にチョコを入れるのだろう。
学校につく。彼女が机に座ってもじもじしている。
机の中を確かめてみると、ラッピングされた見るからに本命とわかる大きなチョコレート。彼女のだろう。
「ほ、本当に貰ったのか……しかし残念だなあお前にあげた子も。お前が人気ないばかりに捨てられちまうなんて」
目ざとくそれを見つける昨日の男子。畜生、このチョコをこっそり隠して表向き無かった事にしようと思っていたのに。
大丈夫、女子がどんどん登校してくるから、4つくらいすぐ貰えるって。
「……」
不安そうな目でこちらを見てくる彼女。
時刻は既に昼休憩だが、俺の元にチョコはない。
「なぎさちゃん、はいこれ義理チョコ」
「ありがとう」
うなだれる俺を嘲笑うかのように、近くの席では俺と正反対の存在である女の子みたいなショタガキが義理チョコを何個か貰っていた。
考えてみれば彼女に配慮して、俺はクラスの女子とそんなに交流してこなかった。それがまずかったのか。
結局昼休憩にも1つも貰えずに5時間目。
気が付けば彼女の姿が教室にいない。どこへ行ったというのか。
彼女の心配をしていると、6時間目の途中に戻ってきた。
「……♪」
何故かやりきった顔をして。
「ははは、残念だったな、約束通りそのチョコ捨てて貰おうか!」
放課後になり、涙を浮かべながら俺にそう詰め寄る男子。
この分だと彼は1つも貰えなかったのだろう。
「ま、待て、まだ下駄箱に入っているかもしれない!」
同情はするが、しかしだからと言って彼女のチョコを諦めるわけにはいかない。
悪あがきをするかのように彼を連れて下駄箱へ向かい、自分の下駄箱を開く。
そこには……
「ば、馬鹿な……」
「ほ、ほら見ろ、ちゃんとこれで合計5つ」
ラッピングされたチョコレートが4つ入っていた。
「……♪」
こうして無事に彼女のチョコレートを守ることができた俺。
下校中の彼女はすごく嬉しそうだ。
しかし残りのチョコレートは一体誰のものなのだろうか。
義理ではなく本命の可能性もある。そこらへんはやはり俺も男子だ、気になる。
部屋に戻った俺はまずは彼女のチョコレートを食べることに。
所謂トリュフチョコというやつで、メッセージカードには『好きです』という言葉が添えられていた。
こういうシンプルな言葉が、逆に物凄く響くんだよね。
チョコの味もすごく美味しいよ。100点。
彼女のチョコを食べ終わった後は、浮気ではないと言い訳しながら2つ目のチョコを開く。
所謂トリュフチョコというやつで……ん?
残りの3つのラッピングも剥して中身を見る。所謂トリュフチョコだ。
全部彼女のじゃないか。
なるほど、午後の授業抜けていたのはこれを用意するためだったのか。
見栄っ張りな俺のためにわざわざこんな事をしてくれるなんて、なんていい子なんだ彼女は。
甘い物はそんなに好きではないが彼女のチョコなら別腹だと一気に完食して若干気持ち悪くなりつつもネットゲームにログイン。
『深淵さん、はいこれ、バレンタインのチョコです』
『ありがとう、フレグランスさん』
そこでも彼女にチョコを貰うのだった。




