ストーカーと初日の出!
除夜の鐘をついた後、お寺からアパートとは逆の方向に歩き出す。
「……?」
不審がりながらも、コーヒーをこくこくと飲みながらついてくる彼女。
到着したるは宮島行きのフェリー場。通常ならこんな時間に船なんて運航していないのだが、
元旦は特別にこの時間でも出ているのだ。
切符を買って船に乗り込む俺と彼女。
甲板で海を眺めている俺を、少し離れた所から眺めている彼女。
十数分ほど船に揺られ、宮島へ到着。
「……」
少し気持ち悪そうな彼女。船酔いしちゃったのだろうか?
甲板に出させてごめんね。
それはともあれ宮島に上陸した俺達を鹿が出迎える。
「……!」
鹿も可愛い女の子の方がいいのだろうか、適当に歩いているといつのまにか彼女の周りには鹿が集まっていた。
彼女は鹿が苦手なのか怯えているので、鹿せんべいを買って鹿を誘導し助け舟を出してやる。
気分は世界樹を冒険してヘイトを稼ぐパラディンだ。
ぶらぶらと歩いて社殿へついた俺達は、御賽銭を投げ入れてお参りをする。
一生彼女と幸せになれますように。
さて、そろそろ本来の目的を果たしに行くか。
社殿を出た俺と彼女が向かった先は、弥山の麓。
今日俺が彼女を誘導して宮島に来た目的は、弥山の山頂から初日の出を拝みたかったのだ。
さて、登るかと登山コースへ向かおうとしたのだが、
「……」
何のためらいもなくロープウェーに乗ろうとして、俺が登山コースに向かったことに気づきげんなりする彼女。
駄目だよ、ズルは。頑張って登ろうね。
「……! ……!」
すぐにバテる彼女のペースに合わせて、途中で俺も休憩をしたり、立ち止まって靴の紐を直すフリをする。
登山用の格好させてこなかった俺も悪いんだけど、もう少し頑張ろうね。
それに大丈夫、彼女がバテて遅くなっても初日の出に間に合うように、かなり早目に出発したんだから。
「……! ……♪」
通常の倍くらい時間をかけて、ようやく山頂に到着。初日の出にも間に合った。
息切れしながらもお茶を飲んで休憩する彼女を微笑ましく眺めていると、一筋の光が。初日の出だ。
「……! ……♪」
途端にはしゃいで携帯電話で写真を撮りだす彼女。
苦労して登った分、感動もひとしおだろう? ロープウェーじゃこの感動は味わえないよ。
初日の出に夢中になっている彼女を、こっそりパシャリ。
登りは歩いたけれど、帰りはロープウェーに乗ることに。
ロープウェーからの眺めも絶景だからね。
俺の後ろのロープウェーに乗った彼女の方をチラっと見ると、
「……」
高い所は怖いのか、目を瞑ってガタガタと震えている。
ごめんよ、一緒のロープウェーに乗って支えてあげられなくて。




