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ストーカーに歌を歌わせないで!

「今からカラオケ行く奴集合~」

「ウチ行く~」

「わしもわしも」

放課後、クラスのお調子者がカラオケの提案をして、ギャルや体育会系がそれに集う。

カラオケか、最近歌ってなかったな。

「俺も行っていいか?」

勇気を出して、その輪に入る。



けれども、勇気を出せない人間もいるわけで。

「……」

例えば、俺達一行がカラオケへ向かう間、ずっと後ろをついてきている彼女とか。



「5人、フリータイムで、機種はジャムで」

カラオケ店に入って部屋をとり、さあ歌うぞ……と、その前に。

「あ、俺飲み物用意するから、皆は先に行っててよ」

周りを先に部屋に行かせ、ジュースを用意しながら、

「……」

俺達の部屋の隣の部屋を予約しようとしている彼女を見守る。

部屋を予約する際に、何か喋っているはずなのだが、遠くからじゃ聞き取れない。

もう少し近づきたいが、流石にばれてしまう。結局彼女の声を聞くことはできなかった。

しかし俺達が今日何をしようとしているのか思いだす。

そうだよカラオケだよ。しかも彼女は隣の部屋なんだから、歌えば声が漏れるじゃないか。

いやあ、どんな声をしてるんだろうな。ぼそぼそ声かな? 可憐な声かな? アニメ声かな?



聞こえねえ! 全く聞こえねえ!

もう入室して1時間くらい経つが、隣の部屋からは声どころか曲すら流れてこない。

俺目当てとはいえ、折角カラオケに来たんだから歌えよ!

「お前さっきから壁に耳当てて何やってるんだ? お前も歌えよ」

うるせえ! 俺は今彼女の歌を聞こうと集中してるんだ、静かにしろ!

……と、いかんいかん。俺も当初の目的を忘れていた。

密かに応援しているアイドルグループの曲を、裏声で歌って見せる。

引かれるかと思ったが、意外と好評のようで何より。

まあ引かれたとしても俺はカラオケ行ったらこの歌を歌い続けますけどね。

人の目気にして流行りの歌ばっかり歌うなんてつまらないじゃん、好きな歌歌いたいじゃん。

……そうだ。

「いやー、俺この曲大好きなんだよね。この曲歌ってる女の子とかいたら惚れちゃいそうだよ」

俺は隣の部屋に聞こえるように、わざとらしく言って見せる。

「えーマジ? じゃあウチ歌っちゃおうかなー?」

同室の女子がそう言うが、歌って欲しいのはお前じゃない、すっこんでろ。



……聞こえた!

隣の部屋から確かに聞こえるぞ、この曲のイントロが!

見事に彼女は俺の発言にひっかかり、曲を入れたわけだ。

さあ、果たしてその歌唱力は!?



「いやー、今日は歌った歌った、じゃあまたな!」

「うん、ばいばーい」

カラオケ店の前で解散し、俺と、少し遅れて彼女はアパートに向かって歩き出す。

結論から言うと、彼女の声が小さすぎたのか声が隣の部屋まで漏れずに聞こえませんでした。

どうしても聞きたかったので店員のフリをして彼女の部屋のドアを開けてやろうかと思ったくらいです。



部屋に戻りしばらくすると、隣の部屋からまたもあの曲のイントロが。

どうやら歌の練習をしているようですが残念ながら聞こえません。

何度も何度も繰り返し流される曲の音源。聞きたいのに聞こえない声。

彼女の努力もむなしく、もどかしさと何度も曲の音源だけ聞かされたことによる飽きで、その日の夜にはあまりあの歌が好きじゃなくなっていた。

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