ストーカーのお風呂覗かない!
修学旅行一日目の夜。
スキー講習でくたくたになった俺達はホテルへ戻り、そこの宴会場で美味しい食事を頂く。
やっぱり北海道と言ったら蟹だよね。といってもいまいち俺は蟹の良さがわからない。
食べるところあまりないし、食べづらいし、無駄に高いし。
「……」
いつのまにか俺の隣に座っている彼女は蟹を食べるのに夢中で無口だし。
いや、これはもともとか。
食事を終えた後、それぞれの部屋へ。
ホテルの部屋割りは基本的にクラスごとなので、同じ5組の男子とトランプしたりゲームをしたりして遊んでいると、誰かがこう呟いた。
「……そろそろ風呂の時間だな」
そいつの発言で、バカ騒ぎしていた雰囲気が一気に張りつめたものとなる。
「……覗くか?」
「覗くしかなくね?」
「お約束だよなあ」
怪しい笑みを浮かべる男達。
確かにこの学年は可愛い女の子が多いと評判だ。覗きをしたくなる気持ちもわかる。
先ほどまでバカ騒ぎをしていたからか、上がりきったテンションは止まらない。
あれよあれよと男達は覗きの算段をするのだった。
勿論全員が全員覗きに加担しようとしているわけではない。
「おいふざけんなもしも俺の妹を覗いてみろ簀巻きにして瀬戸内海に沈めるからな」
双子の妹を持つシスコンショタ野郎は怒り心頭だし、
「やっていいことと悪いことがあると思うぜ」
俺も反対だ。
彼女の裸体がこのいやらしい男どもに見られてしまうと思うと気が気でない。
彼女の裸を見ていい男は俺だけ! そうだろ?
「おいおい、男なら覗くのが筋ってもんだろ? ええ? お前男らしくなりたいんじゃねえのかよ?」
「ぐっ……」
「お前女っ気ないけど、ひょっとしてホモ? うわ……離れて寝てくれよ」
「なっ!?」
しかし民主主義国家日本、多勢に無勢で俺とシスコンショタ野郎はこの馬鹿共を止められそうにない。
俺をホモ扱いした無礼な男共は、
「リスクにびびったヘタレは歯を噛みしめながら震えてるんだな! ははは!」
謎の捨て台詞を残して意気揚々と部屋を出て行った。
部屋に残されるシスコンショタ野郎と俺。
「ぐっ……やっぱり俺も覗きに行くべきなのか? 漢になるべきなのか?」
「惑わされるなよシスコンショタ野郎、お前確か仲の良い女友達もいるんだろ? 覗きなんかしてばれたら妹にもそいつにも嫌われてバッドエンド一直線だぜ。それより今は着実に好感度を稼いで、堂々と裸を見れるような関係になるべきだ」
「……そ、そうだな」
「え、何でそんなドン引きしてんだよ、俺間違ったこと言ってるか?」
あまり交流の無かったクラスメイトとの間に更に溝を作っていると、
「男だらけのむっさいむっさい部屋に天使見参! ゲームしようぜ」
「……あれ、二人しかいないですね。みんなお風呂ですか?」
「……」
天は我らに味方したようだ。
シスコンショタ野郎の妹も女友達も、更に何故か彼女までこちらの部屋に遊びにきているではないか。
「んあ? こいつ? 何かこの部屋の前でうろうろしてたから遊びに来たいのかと思って連れてきちまったんだけど、ひょっとして俺の早とちりだった?」
「……♪」
グッジョブだぜ金髪。免許取る時散々ノロケ話聞かされた時はかなりいらついたが、これでチャラにしてやるよ。
「も、もうちょっと手加減してくれないかな……?」
「……♪」
ネットゲームではなく、彼女と友情破壊ゲームで遊ぶ。
酷い、友情どころか千年の恋も冷めるくらい彼女は本気だ。
「にしても、他の男子全然帰ってこねえな、どんだけ長風呂なんだ?」
金髪の疑問ももっともだ。
もう1時間は経っているのに、覗きに行った男子が帰ってこない。
「大方覗きがばれて教師にたっぷり説教を受けてるんだろ」
「え、覗きしようとしてたんですか? 最低ですね」
「いや、俺はしてないんだが……」
シスコンショタ野郎の冷静な推理。いやあ危なかった、覗きに行ってたら彼女との甘い一時を味わうことができなかったよ。
「……」
俺が覗きなんかに参加しない清廉潔白な人間だとわかったというのに、彼女はちょっと物足りげなさそうな顔をしている。
ひょっとして覗いて欲しいのか?
スターシステム多用するやつは三流




