ストーカーに原付追わせないで!
夏休みが終わり、今日から新学期だ。
休みボケして目覚ましをかけ忘れてしまい、あやうく遅刻しそうになるも、
気のきく彼女が部屋でテレビを音量大きめにつけてくれたため、その音で目覚めることができた。
カレンダーを見ると、9月1日だが今日は土曜日だ。
しかし第一土曜日なので残念ながらお休みというわけにはいかない。
明日が休みなのがラッキーだとポジティブに考えるべきだろうか。
菓子パンを貪りながら制服に着替え、きちんとやってきた夏休みの宿題をカバンに入れて家を出る。
そうそう、今日は彼女に見せたいものがあったんだ。
部屋を出た俺は、駐輪場に泊めていたそれに跨ってアパートの前へ。
「……!」
久々に見る制服姿で部屋を出てきた彼女も、カッコいい俺の姿にびっくりしたようだ。
そう、買ったのだ、原付を。今日はこれで彼女とツーリング気分を味わうことにしようじゃないか。
「……! ……!」
数分で息も絶え絶えな彼女。
そりゃそうだ、こっちは原付、向こうは生身。
遅めに走ってはいるが、それでも彼女が全力で走らないとおいつかないのだ。
いい事を考えた。運動不足な彼女でも、これなら否応でも走らざるをえなくなる。
これを毎日繰り返していれば、みるみるうちに彼女は陸上部も顔負けのアスリートになるのではないか。
そして俺と一緒にランニングをする彼女を想像してニヤついていると、いつのまにか彼女を引き離してしまったようで後ろに彼女の姿が見えなくなる。しまった。
まあ、休み明けにいきなり激走させたら駄目だよね、授業で体育だってあるんだし、そっちで彼女にはしっかりと運動してもらおうと思いながら高校への道を走っていたのだが、そこで悲劇が俺を襲った。
「そこの君! ヘルメットはどうしたんだ!」
「げっ!」
通りがかりの白バイにノーヘルを指摘されて、思わず全力で来た道を引き返してしまう。
ついつい警察に話しかけられると逃げ出してしまうんだよね。
きちんと応対すればノーヘルだけですんだものを、完璧にスピード違反も追加だ。
こうなりゃどこまでも逃げてやる!
「……?」
俺を追うのを諦めて歩いて学校に向かう彼女とすれ違う。丁度分かれ道に差し掛かり、民家も近くにあったので、そこの塀に原付ごと俺は隠れる。
しばらくすると白バイがやってきた。
「ああ君、この辺りをノーヘルの原付が通りませんでしたか?」
「……」
彼女はすっと道路の方を指差す。
「ご協力感謝します」
すっかり彼女に騙された白バイは見当違いの方向へと向かって行った。
「ふぅ、ありがとう。それとおはよう」
難を逃れた俺は彼女の前に姿を現して朝の挨拶。
「……♪」
「ここで会ったのも何かの縁だし、一緒に学校行こうか」
「……♪」
原付を押しながら彼女と並んで歩く。これならノーヘルでも大丈夫。




