ストーカーに餌をあげないで!
須藤王のヒタヒタ☆ストーキング日記とは多分関係ありません。
「大丈夫? 怪我はない?」
路地裏で俺がクラスメイトの彼女にそう話しかけると、彼女は顔を赤くしながらコクリとうなずいて、その後何度もペコペコとお辞儀をしながら去って行った。
状況を説明すると、高校入学して早々、クラスメイトの女の子が不良にからまれているのを目撃してしまったから、都合よく武術の心得があった俺は不良を追い払ってそれを助けたわけだ。
何だかいいよね、こういうの。漫画みたいな展開だよね。
これがきっかけで俺、彼女に惚れられるんじゃないだろうか?
明日辺り、告白されちゃったりしてね。流石にそれは出来すぎな話か。
にやつきながらも俺は自分の住むアパートへと戻るのだった。
翌日。助けた彼女に告白される事はなかった。しかし……
「……」
授業中、彼女の視線に気づいてないフリをしながら俺はちょっとはがゆい感じになる。
うん、間違いなく俺は彼女に惚れられているね。
馬鹿な男は『あいつって俺の事好きなんじゃね?』と勘違いしてしまうこともあるが、
不良から女の子を助けて、翌日には熱い視線を向けられているのだからもう確定でしょう。
ということは、俺が告白されるのも時間の問題ということだ。
一度も会話したことはないけど、結構俺の好みのタイプだし、告白されたら受け入れよう。
あー高校入学してすぐに彼女ができるなんて、俺勝ち組だぜ!
数日後。
「……」
授業中、彼女の視線に気づいてないフリをしながら俺はもどかしい感じになる。
うーん、告白されると思ってたんだけどされないなあ。
やっぱり俺の勘違いなのかな、でも四六時中向けられる彼女の視線は間違いなく恋の視線だと思うんだけど。
まあ、好きになったからすぐに告白するってわけでもないか。
気長に待ちましょ気長に。
その日の放課後。
「……」
帰宅中、後ろからの彼女の視線に気づいてないフリをしながら俺は悩ましい感じになる。
……これストーカーだ。
彼女は俺を好きになったはいいが告白する勇気が出なくて結局毎日俺のことを見つめてばかりな彼女はとうとう俺の後をつけるようになったのですね。
うーん、どうすればいいんだろうか。
逆にこっちから告白するってのもありだけど、やっぱり男としては告白されたい。
それに俺が武術の心得あるから付近の気配を察知できるとも知らずにこっちが気づいていないと思ってストーキングしている彼女、萌えですね。
よし決めた。彼女で遊ぼう。彼女のストーキングに付き合ってやろう。
俺は早速カバンから一枚のハンカチを取り出すと、わざとそれを落とす。
そのまま何気なく歩き、こっそり後ろを伺うと、
「……♪」
彼女が俺のハンカチを嬉しそうに自分のカバンに仕舞っていた。
大事にしてね、俺のハンカチ。
彼女は俺のハンカチをこれからどうするのだろうかと考えただけでにやにやが止まらない。
その後俺は自分の住んでいるアパートへ行き、自分の部屋のドアの前へ。
彼女が双眼鏡を持ってアパートの前でこちらを伺っているのを確認した俺は、彼女に見えるように部屋の暗証番号を押す。ちゃんと覚えた? 俺の部屋の暗証番号。
そして自分の部屋に入った俺は鍵を閉めて、部屋の窓から一旦外へ出て、自分の部屋のドアの前へと向かって様子を伺う。
「……」
何やら彼女は俺の部屋の隣をチェックしているようだった。そこは今誰も住んでいない部屋だ。
彼女がアパートから去って行くのを見届けた俺は、近日隣に可愛い隣人が越してくるなと確信した。
数日後。
「……」
登校中、俺が部屋を出た数秒後に隣の部屋から出てきた彼女の視線に気づいてないフリをしながら俺は微笑ましい感じになる。
本当に彼女は俺の隣の部屋に引っ越してきました。
そんな行動力があるのなら、俺に告白してほしいものだけどね。
まあそれだけ愛されてるってことだし、不思議と悪い感じはしませんね。俺って見られたい願望でもあるんだろうか?
この話は、ストーカーな彼女と気付いてないフリして彼女を弄ぶ俺の、甘酸っぱい青春活劇。




