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えぴそーど6 姫様御運動

「なぜ来なかった、姫ーーー!!」


 朝起きたら侵入者。

わからない、コイツが今俺の枕元で怒鳴り散らしている理由が。


 …二日連続徹夜で『溶けた血』やってたんだ、学校に行くまでまだ時間あるし、もう少し寝かせろ。


「朝起こしにくるのが、幼なじみのお約束だろうがーー!!」


 吐き気がする、そのシチュエーションは。それに、俺とお前とは中学からの付き合いだろ、勝手に関係を捻じ曲げるな。こっちはツッコむ気力もないんだよ。


「ちなみに今、朝の八時半だぞ」


 助けてください。助けてください!!




「おはよう、優く…うわ、目の下すごいクマだよ」


 俺は不承不承、福島(ふりがなは『へんたい』)と並んで走り、朝のホームルームに滑り込んだ。休止モードの体を強制的に立ち上げたのだが、徹夜のダメージはやはり深刻であった。


「ゲームに熱中しすぎたらダメだよ、今日は部活もあるんだよ?」


「あー大丈夫、一時間目使って寝てればさっぱりするさ」


「残念、一時間目は体育だよ」


 神は我を見捨てた。


「そうそう、シマムーがね、姫宮君は今日から女子の授業に合流してね、着替えも女子と一緒だよ、って言ってたよ」


 一瞬幻聴が聞こえた。何て言ったこの人は? 女子と一緒? ……ぐは!?


 この学校の体育は男女別なねで、二組合同で行われる。そして奇数組で女子、偶数組で男子がそれぞれ着替えをすることになっている。


 いいのかよシマムー? 中身は健全な男の子なんだぜ俺。いやよくないに決まってる。だからおれは体操着を持って教室を後にしようとした。しかしドアには女子が立ちはだかっていた。


「姫ちゃん行っちゃダメー!」

「あっちはケダモノの巣窟なのよ!?」

「私たち姫ちゃんになら、見られても平気だから!」「行ったらアイツラに輪姦されちゃう!」


 待て、最後のはヒドクナイカ? でも確かに、男子の視線が煩そうだな…。でも女子と一緒に着替えだなんて…、イカンさすがにそれはでも男子にマワサレうわぁぁぁぁぁ!


 結局、俺は女子トイレの個室に入っていた。




 さて、アレが現在の全国の学校から廃絶したのはいつごろからだろうか? 小学校のときでさえ、俺の学校では既に消滅していたので、福島に教えてもらうまで知らなかったくらいだ。もちろんその直後に殴ったが。中学でも当然アレは無く、ハーフパンツ着用が義務付けられていた。


 しかし体操着袋の中には、ハーフパンツの代わりにブルマが入っていた。


 俺は露呈される太ももをTシャツで隠そうとしながらグラウンドに向かい、朝に母さんが言ってたことをぼんやり思い出していた。


「優に合うサイズのハーフパンツが無くて買えなかったから、代わりにブ…」


 確かこの辺りで玄関のドアを閉めた気がする。有得ねぇ、なんでハーフパンツが無くて、ブルマがあるんだよ! いや文句言ったってどうにもなるまい。とか考えてる間に着いてしまった。授業が始まるまでまだ少し時間があり、みんなバラバラになって話したりダベってたりしていた。


 …見つかった。誰かが俺を指差して誰かに話してるのが見える。あ、走ってこっちに来る。その数がだんだんと増えていき、二人…、五人…、十人…、これぐらい数えたあたりで、俺は逃げ出していた。


 あっさり捕まって玩具にされた。



「…という理由なんで、今日はこの格好で授業を受けます」


 俺は四十人近くの女子(プラス福島)に弄ばれてるところを女子担当の女体育教師に剥がされ、難を逃れていた。今はその経緯を話したところだ。


「そう…、突然環境が変わったのだし、急に別の用意をしろと言われても無理だもんね。今日はそれでも構わないわ。…これから大変でしょうけど、頑張ってね」


 初めて優しい言葉をかけられた気がする。



 色々問題はあったが、やっと体育の授業だ。…どうせグラウンドを駆けずり回るだけだがな。夏のプールの授業に入るまでは、体育なんて我慢の時間でしかないのだ。


「優くん、寝不足なんでしょ? あんまり無理しちゃダメだよ」


隣に並んで走っていた歩美が話しかけていた。

「別に問題ないよ、むしろいつもより体が軽くて走りやすい気がするんだ。…て、実際そうか」


「でも…」


「気にしすぎだって、ほら、先に行くぞ」


 体が軽くなったのは事実であり、男子の体育のランニングのときより楽に感じていたのも確かだった。


「あ、あれ?」


 だがその分、筋肉の量も肺活量も落ちていたのだろう。それなのに急に張り切ったせいだろうか。さらに寝不足も合わさったためか。


 急に体は砂袋を乗せられたように重くなり、視界がブラックアウトしながら傾くのを感じていた。大きな音と衝撃があって、ぶっ倒れてる自分を発見していた。


「 く ! だか 言  の ! 先生、 宮さ  倒れ   !」


 …情けない。手足はだらーんと弛緩し、視界は未だ薄暗く、混濁した意識は何も考えようとしない。


「   ら熱射  よう  、保  員! 手   て! 姫   保 室に連  行き  」

 何も聞こえない。

 何も理解できない。

 何も感じない……。




 空はいつの間にか優しい夕日の色に包まれていた。目につく全てのモノ──永遠に続きそうな草原も、遠くに見える森も、高みに見えた雲も、あの人も──暖かく燃えていた。


 ───もう、帰らなくちゃ───


 なんで、まだ大丈夫だろ、もっと遊ぼうぜ? …でも、『うん』とは言ってくれないんだよなぁ。…また知ってるよ俺。

 ───早く帰らないと、お母さんに怒られちゃう───


また、淋しさが込み上げるような気持ちだ。せっかく、やっと会えたのに…。…? …せっかく? やっと?


───大丈夫、また明日遊びにくるから───


 その言葉で、俺の心もあったかくなった。




 甘ったるい匂いがする…、それに体が動かない。重いとかそういう次元じゃなくて、本当に動かない。


「ん……、な!?」

「あらやっとお目覚め?」


 あまりの現実感の無さに絶句した。うっすらと目蓋を開けた目の前には保険室の女教師が、鼻がくっつきそうなほど近づいて、身じろぎしようともがいた四肢はベッドにロープで縛られていた。


 拉致られた!?


「あなたの体のことは、色々と聞かせてもらったわ。面白い例だから、実際に調べさせてもらうわよ。うふふ…」


 ヤバい、ってか下唇を軽く噛むように発音してヤヴァい。何がヤヴァいかって、手がワキワキ動いてるのも不気味だし、うふふふふふ……なんて延々笑い続けてるのもキショく悪いし、何より右手に異様な器具が!


 ……な、なんで注射器なんて!?


「は〜い、ちょっとチクッとしまちゅよ〜♪」


 本能という名の警鐘が頭の中でガンガン響いている。あれを刺されたら良くて昏倒、最悪

「ひぐ○し」

みたいに首をガリガリ掻き毟って死亡!?


 やめてやめて! そんな物騒なもの腕に近付けないで、これで色々楽しんじゃうわよじゃねぇよ年増!! ひぃっ!? ごめんなさいごめんなさい! 刺さないで、た……


「助けてください!!」


「任せろ姫ーー!!!」


 神は半分投げ遣りに救ってくれるようだ。


 ガシャーーン!! というガラスが割れる効果音と供に現われたのは、もはや説明はいらないヤツだった。


 学ランの代わりに特殊部隊チックな服装を身につけ、両手には黄色と黒が螺旋を巻くロープと、何やら注射器より物騒な得物を持っていた。なぜ日本の学生がM4なんて持ってる!?ってかここは一階なんだから屋上からロープアクションなんてしてないで普通に入れよ!


「ここは任せろ姫、あなたは早く逃げ」


「任せたぞー、ってか二人とも助からないのがベスト!」


言われるまでもなく逃げていた。


「ふ…、『で、でも…』『いいから早く、俺も後ですぐに行く!』『きっとだよ!』ぐらいのやり取りは定石だろうに、不粋なものだ」


「あら、あなたも逃げていたほうが身のためではなくて? かなり機嫌が悪いわよ私」


「抜かせ、以前から信用できない輩だと思っていたが、蛇蝎魔蝎の類だったとはな! 貴様は会長直々に手を下してやる。Θ(シータ)とγ(ガンマ)は手を出すなよ、俺の獲物だ」


そして戦いの火蓋は切って落とされた、らしい。


全く興味は無かったし、本気で相討ちになったほうが学校のためになると思っていたしな。


 後々わかったことだが、あの女教師は気に入った女生徒をとっ捕まえては怪しげなことを続けていたらしい。


 そのことに関しては一応福島に感謝だな…。


 あ、それよりさっさとこの服着替えないと、いつまでもこんな格好じゃあ、また誰かに取って食われちまう。

パソ使えないとすごくやりづらい……、思いついたことがパッと書けないし、「サ行の文字」を書こうとして電源ボタン連打してて全部消えちゃったり……。まあ言い訳はこのへんにしないと見苦しいので……、更新遅れてごめんなさい!!!m(__)m

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