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えぴそーど4 姫様御授業

「大丈夫かな…,姫ちゃん。」

隣の席から歩美にひっそり話しかけられた,…姫ちゃんって強調するなよ。

歩美の身長は他と比べて低いから最前列の席だ。

…無論俺がダントツでチビだから,俺も最前列なわけだが。


「痛たたた…,みんないきなり玩具扱いしやがって!」

「あはは。でも今の優くんすっごく可愛いよ,後でその髪触らせてね。」

むぅ,だから可愛いとか言うなって…。


あのあと数学の先生が廊下で待っているのにシマムーが気づいて,早々にみんなを席に戻してくれた。

今は数学の時間だ。

…眠いよぅ,数学に限らず授業中の先生の説明って子守唄みたいだ。


「このようにxの二乗とx,定数に展開されている式を上手く変形することで因数分解に持っていけるんだ。さてこの教科書の練習問題13を,今日は五月二日だから…,姫宮!お前が前に出てこれを解け。」


ふざけんなおっさん。

姫宮ってどう考えても出席番号は中くらいか後半の数だろ!

実際俺の出席番号は25番だ。

いったい五月二日と俺の出席番号に何の関係があるってんだ。

「5の二乗は25だ。」

さいですか。

…くそっ,めんどいなぁ…。

「ごめん話してて説明聞いてなかったね。優くんわかるかな…?」

教科書の問題だろ?しかも練習問題だ。こんなの説明聞いてなくったってフィーリングでスラッと解けるさ。

「まあ見てろって。」

「わ…,優くん格好良可愛い…。」

どんな形容だ。


「えっと,xの二乗に5x,プラス6か…,2と3だな。」

方針を立てていざ書き込んでいく,…ぅ。

「…先生」

ぴょん。

「どうした?こんなのもわからないのか,見た目と同じの頭脳なのか君は?」

「いぇそうじゃなくって…」

ぴょんぴょん。

「書いてある問題が高くて…」

ぴょんぴょんぴょん。

「届きません…。」

教室が爆笑で溢れた。薄情者どもめ,ばかやろー!!

…無様だ。




「やっぱり格好悪可愛いかったね,優くん。」

お前は可愛いという単語を付けたいだけだろう。

みんなと一緒になって笑いやがってコンチキショウ。

すっげー恥ずかしかったぞ。


…やっぱり数学って眠りの呪文だよ,先生はラ○ホー使いか?

…だめだ,耐えられん。


「歩美,俺は寝るぞ。非常時以外は起こさないでくれ。」

「わ…,だめだよ優くん。授業は真面目に聞かなきゃ…。」

歩美のそんな囁きを耳にしながら,俺は既に深いまどろみに身を任せていた。




そこは草原の波であった。

風は火照った俺の体をゆっくり撫で,時ををゆっくり押し流す。

目を上げれば,空は雲よりも何よりも高く,果てしなく澄んだ青。

そこで俺は一人だった。

何だろう,この悲しい気持ち。

何だろう,この切ない感覚。


そこで俺は一人ではなくなった。

―――誰かいるの…?

人影が見える,声は幼くあどけない。

人影も声に遜色なく小さい。

膝から下が,草の丈のせいで見えないくらいだ。

お前,どうしてそんなボヤけて見えるんだ?


―――君は,ここに一人でいたの?

人影は俺に話しかけている。

わからない,いやわかってる。

頭の中で答えを既に知ってた気がする。

何だこの既視感,でも確かに初めてな光景。

知らない,いや知っている。


―――じゃあさ,友達になろ!君は何て呼べばいい?




………くん,……うくん。…ゆうくん。

………うるさい,目覚まし時計め,ついに仲間を呼んで復讐に来やがったな。

だが俺は負けないぞ,返り討ちだ。貴様らが数で攻めてこようと,俺は五分で片付けられるぜ。

…いや無理か,ずっと鳴らさせるんだし,でもそれぐらい楽勝なんだ。俺は負けない!


「起立!」…あ,しっしまった!俺は反射的に起き上がるが,周りを見ると…,クラス中のみんなが俺を見てクスクス笑ってる…。

数学の教師は,いつの間にか国語の教師に変わっていて,やはり俺を見ている。

「礼!」

福島の号令で礼をし,がたがたと座る。っし,心臓がまだバクバク言ってるよ。


「緊急時だから起こそうとしたのに…」

「何で数学の後の休み時間で起こさないんだよ…。」

俺はひそひそと歩美に不平を漏らす。

こんなギリギリで起こそうとするから良い晒し者じゃないか。


「だって,数学が終わった後の号令で起こそうとしたのに,優くんぜんぜん起きないんだもん…。休み時間だって起こそうとしたのに,ピクリともしなくて…。」

さいですか。

なるほど,俺は号令も,休み時間の喧騒も物ともせず昏々と眠り続けていたのか…。

でもピクリとも動かないって…,無呼吸症候群!?


「おい姫宮,何だその髪は。」

ビックリして前を向くと,国語教師が俺の前に立ち止まり,ジロリと見下ろしていた。

あ…,そういえばコイツ,生活指導だったっけ。

ってか先生にとって俺に対する注目点は髪だけですか。

もっと別に聞きたいことあるんじゃないの?

…数学では何も聞かれなかったな,男性教員は順応性があるのか?


「地毛ですよ,気づいたらこんな髪で…」

「ふざけるな!そうだとしても,校則では黒にしろと書いてあるんだぞ,何故黒く染めてこない!?それに制服はどうした!?」

無茶言うなよおっさん。

この格好になったのは今日なんだぞ,染めてる暇なんてあるか。

それに学ランだってブカブカなんだ,そうすぐに用意できるか。


「とにかくその髪をなんとかしなきゃな!来い,職員室で染めてやる!」

「いやちょっと待って,聞いてくれって…,痛!?」

いっ痛たたたたたた!?おっさん待てって,髪引っ張んなよ!


「ちょっと待ったぁ先生!!」


危うく教室のドアまで来たところで,福島の叫びが教室に響いた。

…コイツで大丈夫かなぁ?些か不安だぞ,前例が前例だけに。


「何だ福島?貴様,生徒会長のくせにこの違反者を庇うつもりか?」

「先生,それは誤解じゃぁありませんか?生徒手帳には服装・髪型に関する規定で,『元の髪の色を変色させることを禁じる』と書かれていて,脱色も禁止されてはいますが,姫宮のその金髪は紛れもなく地毛です。先生,『そうだとしても』って前提を認めていますよねぇ?」


そっそうなのか福島?だとしたらこのおっさんの早トチリ…,

「いや!こいつの金髪をこのままにしておけば,いずれ他の女子も真似をするに違いない。悪い芽は早目に摘まなきゃならん!」

何ぃ!?つまり俺は皆に対する見せしめか!?

「なるほどなるほど,あっはっは。でも先生は偽者の毛を頭に乗せていますよねぇ?」


場の空気が凍り付いた。

…は?偽者の髪…,まさか!?

「っそ,それは関係なかろう!?…いや,元々私はヅラなんて」

「先生,ヅラなんて一言も言っていませんよ?あ,もしかして先生はカツラをお被りになられているのでしょうか?あっはっは,いやこれは失敬!まさか皆の風紀を正す先生が,自分を偽ってカツラをお被りになっているとは思わなかったのでねぇ。」

「ちっ違う!私はヅラなど被ってなんか…」

「ε(イプシロン)!!ξ(クサイ)!!」


何を言ってるんだ福島?

福島は急にコードネームのような物を叫び出した。…うわ!?

誰だこいつら!?顔を黒いマスクで隠した学ラン二人組みが降ってきた。

そいつらは先生に走って近づくと,何かを奪って教室から走り去ってしまった。

…あ。


わいわいがやがや!「うわ!?マジで禿げてやがる!」「完全バーコードだ!読み取れるんじゃねぇの!?」「ヤベー,超ウケル!」


教室中が「ハゲ」だの「カツラ」だのといった言葉で溢れていた。

先生は正真正銘のバーコードハゲであった。

いや待て待て,さっきのあの黒い二人組みは誰だよ,授業サボって天井で何してんだ!?

…いけね,先生頭真っ赤にして怒っちまったよ。


「福島ぁ!!貴様,先生に向かって何ていうことを…」

「物騒なカラスですねぇ先生,いきなり教室に入ってきて先生を襲うなんて。ねぇみんな!!」


わいわいがやがや!「そうだなぁ!危ねえカラスだ!」「歩美ちゃん駄目じゃない,窓を空けてちゃ危ない鳥が入ってきてカツラを盗んじゃうでしょ!」「あれ?カラスじゃなくて生徒…」「まったくねえイケ好かねえカラスだ!」


空気を読めていない一人を除いて,みんなはカラスだと連呼してる。

みんな…,俺のためにこんな…。涙出てきそう。

…ひぃ!?先生,顔の色が赤を通り越して真っ青ですって!


「そんなわけあるか!貴様こんなことをしでかしてどうなるか…」

「先生。こんなところ,父兄に見られたらどうなっちゃいますかねぇ…?δ(デルタ)!!」

パチンッ!!


今度は福島が指をキザっぽく鳴らすと,部屋が真っ暗になり…,出たカラス!!

カラスこと謎の学生は小型のプロジェクターのようなものを取り出し,スクリーンに何かを映し出している。

…俺が先生に髪を引っ張られてるところだ。

ただ場所はここではない。

…なんで小学校の正門の前なんだ?


「まッ待て待て!?こんな合成写真,信用されるわけな…」

「でも先生,髪を引っ張っていたのはここにいる皆が証言してくれますよ?…おわかりですよね先生〜?」

「きょっ今日は自習だ,各自好きな科目の勉強をしていなさい!ひいぃいぃぃぃ!!」


そして先生は,悲鳴のような声を残しながら頭を隠して逃げ去っていった。

お,部屋も明るくなった。カラスは,窓から飛び降りる最中であった。…ここ4階だぞ?


と,とにかくすげぇよ福島!何だかよくわからなかったけど助かった,たまには役に立つん

「大丈夫ですかーーーーー!!?我が愛しの幼き姫よーーー!!!はぁはぁ,あの汚らわしい手から君を逃すためならたとえこの身を滅ぼしてでも君を救っぶべっ!!?どぅぐはぁぁぁ!!!」

「誰がテメエの姫だ!?ってかお前は姫ってよぶんじゃねぇー!!」


さっきまでの格好良さの欠片も残っていない,醜い姿となって近づいてきた福島に,思わずローキックで足元を崩して顔に怒りの鉄拳を食らわせていた。

あんた,さっきまでの勇姿が台無しだよ。


「や…,やったなぁこいつぅ…。俺は君のツンなら,甘んじて受け入れるぞ…。」

おまえはマゾか,危険人物め。

しかも小学校で何してやがった。


その後三日間,先生は学校に来ることができず有給を使って引き籠もってたという噂だ。

この事件は後に,

「カラスとカツラ事件」

として長く語り継がれたらしい。

福島にカラス部隊(先の出来事で命名されてしまった)のことを聞いてみたんだが,適当にはぐらかされてしまった。

まぁあいつが指揮官みたいなものなんだろうなってことはわかるが,恐るべしカラス部隊の仕事の速さというべきか…,ん?

カラスを使って小学校に忍び込ませたのでは…?

…考えないようにしよう。

大学のネットサーバが使えなくなって、ずっと投稿できませんでした…。遅くなって申し訳ない!!初めての方は、読んで下さり感謝感謝です♪

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