埴輪と旅する女①【会津若松編】第015回
『Mikiko's Room(https://mikikosroom.com/)』で連載した、会津若松への旅行記(原題は「単独旅行記Ⅶ」)です。
み「靴脱ぐと楽でしょ。
ホテルの客室は今、どこも使い捨てのスリッパになってる。
シングルルームでも、2足備えてくれてるとこもある。
そういうとこのを1足、もらって帰って……。
次の旅行の車内履きにするのよ」
ハ「床に新聞敷けばいいやないか」
み「それじゃ、昭和のジサマだろ。
そういえば、うちの祖父ちゃんは……。
ズボンも脱いで、ステテコ姿になっとった」
ハ「仕方あるまい。
昔は、冷房なんか入ってなかったんやから」
み「昔って、埴輪時代は、電車さえなかったじゃないの」
ハ「埴輪時代なんてのがあるか。
古墳時代やろうが。
そのころは馬やから、涼しいもんやった。
オープンカーやな」
み「しょうもない。
さ、降りるぞ」
み「見よ、我が愛車の勇姿を」
ハ「何が愛車や」
み「みんな、ぞろぞろ階段を上がっていくな。
どうやら、駅の外に出てもいいみたいじゃないの。
座りっぱなしでお尻が痛いから、ちょっくら運動しよう」
み「阿賀町のポスターがあった。
狐の嫁入り行列のだな」
ハ「確か、花嫁と花婿が、舟で川を渡るんやなかったか?」
み「然り!
滔々と雪解け水を湛えた阿賀野川を、狐火の燃える麒麟山に向けて渡って行くんじゃ。
このシーンは夜だから、いっそう幻想的なのよ。
舟に篝火を焚いてね」
ハ「ほんとの夫婦なのか?」
み「当たり前じゃ。
公募で選ばれるの。
しかしわたしは、頼まれてもご辞退したい。
白無垢で舟から落ちたら、まず助からないからね」
ハ「誰が頼むんや。
そもそも花婿がいないやないけ」
み「やかまし!
しかし、この狐の嫁入り行列……。
コロナのせいで、2020年から、3年連続で中止になっとる」
ハ「来年はやれるやろ。
いや、やらなきゃならんの」
み「そのとおり。
このままじゃ、日本の地方は、ずぶずぶと沈んでいってしまう」
み「ほら、狐もどことなく寂しげじゃ」
ハ「誰の作品や?」
み「駅員さんじゃないの」
ハ「そんなアホな」
ハ「いい駅やないか」
み「冬には来たくないけどね」
ハ「またそういう後ろ向きな……」
み「わたしは常に、悪いときの光景が目に浮かぶの。
よし戻るぞ」
ハ「もうか!
駐車場に出ただけやないか」
み「15分しかないの。
もう、だいぶ経ったわ。
乗り遅れたら、全計画がパーだからな」
み「よーし。
ここまで来れば、もはや安心。
しかし蒸気機関車って、ほんとに生き物っぽいよね」
ハ「石炭を食べて、ぜいぜい言いながら走るからの」
み「よし、階段登って、上からも撮ろう」
ハ「今、下りてきたばっかりやないか」
み「運動、運動」
み「かっちょえー。
空力を無視した無骨な形状。
最高じゃ」
ハ「褒めとんのか?」
み「当たり前じゃ。
よし、もうそろそろ時間だ。
乗るぞ」
ハ「忙しいやっちゃ」
み「あ、後ろの展望室が空いてる」
ハ「さっきの“鉄”は、どうしたんやろ?」
み「ひょっとしたら、津川までの切符しか買ってなかったりして。
行ってみよう」
み「うーむ。
線路しか見えん。
こりゃ、飽きるわな。
よし堪能した。
席に戻るぞ」
ハ「忙しない!
もう少し落ち着けんのか」
み「旅先の日本人の習性じゃ。
よーし、座った。
さあ、出発進行!」
ハ「おまえが言うな」
●使い捨てスリッパの使い道
使い捨てスリッパですが……。
わたしには、車中履きのほかに、もうひとつ用途があります。
決して、SMプレイのスパンキング用ではございませんぞ。
自転車散歩に出るときのバッグに入れてあるんです。
さて、問題です。
なぜ、自転車に乗るのに、スリッパが要るのでしょうか?
これが解ける人は、まずいないでしょうね。
使う季節は、もう1ヶ月くらい先でしょうか。
そのころ、散歩途中にある小学校では……。
学習発表会というのが開催されてることがあるんです。
もちろん、土日にやってます。
家族が来れるようにですね。
これ、わたしの時代では、文化祭と云ってた行事かと思います。
なぜそれが、学習発表会に名を変えたのかわかりません。
入ってみると、わたしの時代の文化祭そのものだからです。
で、その学習発表会を見るために学校に入るのですが……。
当然のごとく、校内は土足禁止です。
しかしながら、学校の玄関には……。
そんなにたくさんの来客用スリッパは用意されてません。
スリッパ入れが空になってる場合が多いです。
靴下裸足であがるか、諦めて帰るかしかありません。
しかし!
わたしには、備えがあるのです。
もちろん、バッグに入れてある使い捨てスリッパです。
便利便利。
ぺちゃんこですから、ぜんぜん嵩張りませんし。
あ、そうそう。
そうやって学習発表会を見て回ってたときの感想。
当然、先生もたくさん目にします。
驚くのは、先生のお歳。
若い先生なんて、滅多にいませんよ。
お年寄りばっかり。
わたしの時代は、若い先生がいっぱいいて……。
休み時間なんか、一緒に遊んでくれたものです。
運動会では、先生だけの短距離走とかもあって……。
もの凄い勢いで走ってましたよ。
当時の児童にとっては、父親より若い、お兄さんみたいな存在でした。
でも今は……。
お祖父さんですよね。
あの先生方が定年になったら……。
足りるんですかね?
あ、いいのか。
子供も減ってるから。
なんかもう、日本も先細りですね。




