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絶世の姫は愛を拒み、呪いを遺した―西の京・山口に眠る姫山伝説―  作者: さとちゃんペッ!


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9/9

参考文献 大正時代の新聞記事  引用

ご覧いただきありがとうございます!

伝説……この伝説を知ったのは、書物からではなく、生きた人間との会話からでした。伝説を元に創作した物語をここに謹んでお届けします。

 山口町の附近平川村に姫山と呼ばれる山がある。打ち見たところ平々凡々格別変わったところでもないが、そのくせ名だけはすこぶる高い。それは一齣の怪奇なロマンスを持っているからでそのロマンスというのは次のごときものである。

 何でも大内氏第二十六世義隆卿の時代とかに、山口に非常なる美女があった。花顔細腰明眸皎歯、小野小町か、衣通姫か、否、それよりもずっとずっと美しいだろうと人々に持て囃されて、その名声は遠近に轟き渡るに至った。このことがいつしか義隆卿の耳にも入り、殿も興ある事に思われ、ある日侍臣に命じて、美女を館へ召し出された。

 義隆卿は美々しく着飾って坐に着かれた。小姓は長剣を捧げて従った。名ある家臣は綺羅星のごとく居流れた厳かな光景である。

 美女はしとやかに進み出て、静かに定めの席へ着いた。

「面を上げい」

 こうした声がかかると、美女は顔を上げた。嬌羞は含んでいるけれど、少しも臆する色はみせなかった。

 殿はじっとそれをみつめられた。果たして世にも稀なる美女であった。

 夢見るような黒瑪瑙の瞳。

 玉葱色の唇。緑なす黒髪の匂い。殿は恍惚と、とろけんばかりの心地になられた。

 やがて引見御儀式は終わった。

 その後、殿は美女を寵姫の一人に加えようとして、種々と手をつくされた。

 けれど美女はその意に従わなかった。彼女は清純な童貞を守りたかったのである。

 口説いても、口説いても、駄目であった。いかなる甘言も功を奏しなかった。

 彼女の前には、虚栄に憧憬する浮ついた心は微塵もない。妾になって栄耀栄華するよりも、陋巷に童貞を続けて行くことがいかに尊いかしれなかった。

 広大な主君の威光も、ついに彼女の魂を動かすことは不可能であった。恋に目のない義隆卿も、到頭立腹された。そして美女に堪え難い苦痛を与えて、失恋の鬱憤を散じようと思われた。かくして、世にも恐ろしく痛ましい、それは聞くだに身の毛のよだつ惨劇が展開されたのである。

 恋に狂って、人間の残忍性を遺憾なく曝け出した義隆卿は、こっそりとある事を、家臣の心利いたものに命じた。

 ある夜、一挺の駕籠が、数人の警護の武士と駕籠人夫とによって、秘やかに館を出た。その一行は道を急いで、とある山の上へと登って行った。

 山上には、すでに怪しげな固屋が一つ建てられてあった。その固屋の前まで行くと、駕籠は下ろされた。そして、一人の美しい若い女が、荒々しい武士に引き出されて、固屋に入れられた。

 人跡絶えた山中に、これは又何という出来事であろう? けれどもその美女が例の美女である。といってしまえばこの疑いは氷塊するであろう。

 美女の蛇責めは開始された。

 数さえ知れぬ多くの蛇は、一疋ずつ美女の部屋に投げ込まれた。五疋、八疋、十疋、十五疋、二十疋、三十、五十、七十、百……、二百……。

 その蛇は一疋ずつ、鎌首をもたげて、美女のほうへのたくって行った。美女の暖かい肌の甘酸い香を慕って―ー。

 そして、勢いよく身体を匐い廻ったり、巻きついたりした。赤い、二つに避けた細長い舌を、ベラベラ閃かして嘗め廻しもした。

 美女は苦しんだ。悶えた。そして、悲鳴を挙げた。それでも、主君の心に従おうとはしなかった。

 そこで、今度は、美女から、その衣類をことごとく剥ぎ取った。燃ゆるような猩々緋の腰巻一つにしてしまった。磨きあげた白玉のように美しく艶々した肌であった。見るからにその肌の下には、青春の暖かい真っ赤な血潮が躍流してる事が感じられた。もし手を触れてみたら、どんなに柔らかく、そして弾力性に富んでるであろうか、と思われる好い肌であった。

 けれども今迄の苦悶に元結が切れて、丈なす黒髪はうなじに垂れさがり、美しい顔は血走って、妖かにも物凄かった。

 そんな事には頓着しない惨忍な武士は、さらに蛇の数を殖やして責めた。

 蛇は女の首へ巻きついた。手へ、足へ、からみついた。太ももへ巻きついてるのもあった。

 美女は絶え入るような悲鳴を挙げて到頭悶絶した。蛇はところかまわず噛みついて、肉は破れ、血は流れた。口からのたくり込んだのは、腹の皮を食い破って、ニョッキリと顔を出した。ふくよかな乳房を食い切ったものもあった。

 彼女は断末魔の苦しさに叫んだ。声を絞って――。

「ああ!!! 美しく生まれたものは禍いだ。わたしはこの山から見えるところには、美女を生ませない」

 かくして、彼女は言うようなき苦痛懊悩のうちに、その美しい一生のページを閉じた。童貞のままで……。

 それから、その山を姫山と呼ぶようになった。山口に美人の生れ出ぬのは、姫山美女の呪詛によるということである

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!

いかがでしたか?


感想をいただけるとすごく励みになります。

次回もどうぞお楽しみに!


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歴史部門:なろう日間2位 週間2位 月間2位 四半期2位 (1位はとれない)

源平合戦で命を落とす安徳天皇に転生した俺、死にたくないので、未来の知識と過剰な努力で、破滅の運命を覆します

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― 新着の感想 ―
執筆ありがとうございます、 大内も、陶も因果応報というような滅び方しましたね。 まあ、美人の定義も時代で変わるし、子供を守るための優しい嘘ですね。 バッドエンドではない結末ありがとうございました!
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