表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶世の姫は愛を拒み、呪いを遺した―西の京・山口に眠る姫山伝説―  作者: さとちゃんペッ!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

第7話 桜御前は野蛮な田舎侍がキライ

ご覧いただきありがとうございます!

伝説……この伝説を知ったのは、書物からではなく、生きた人間との会話からでした。伝説を元に創作した物語をここに謹んでお届けします。

 弥助は桜御前の寝屋に向けて小石を投げた。しばらくすると、御前が顔をのぞかせた。

「御前様、小夜姫が蛇攻めにあいました。小夜が死んだと偽りの報告をすると、蛇攻めの小屋に火をかけ山火事になっています」

「誰の仕業じゃ」

「陶晴賢でございます」

「何て野蛮な。だから、田舎侍は嫌いなのです。ああ、都に帰りたい……陶はなぜにかようなことを?」

「小夜に殿の子を身ごもらせ、その後、陶が娶る手はずだと申しておりました」

「ふん。陶の機嫌を取るためじゃな。田舎侍たちの浅知恵であろう。女の命などどうでもよいといわんばかりの策じゃな。弥助、その小夜はどこにいる?」

「ここにおりまする」


 庭の石の陰に身をひそめた人影が動いた。

 御前が庭に降りて小夜の姿を見た。

 小夜はひざまずいて桜御前を見上げた。

 小夜の髪の中から蛇の子どもが顔を出していた。





 桜御前の話を聞いた義隆公は、胸を痛めた。蛇攻め、小夜はどれだけ怖かったことか。しかし、陶のすることに口を出すと、どんなことになるやもしれない。陶がこんなことに智を巡らしている間は、文化的なまつりごとをするのに都合が良い。


 宿老が桜御前の相談にのった。宿老の理解は早かった。


「陶は次なる美女を探していると聞く。次なる美女の命を助けねばならぬ。しかし、やり方次第では陶と戦になるやもしれぬ。それは避けたい。女一人の命で戦が防げるのなら……」

 桜御前は怒った。

「どなたも女の気持ちも命も軽く見ている。だから、田舎者は嫌い」 


 桜御前は立ち上がると、怒りを鎮めるため館の外を歩いてみた。すぐに弥助が周囲を伺う。


 桜御前は思った。

(この家の蔵には明の宝物がぎっしり。石畳の道も水路も民家も京風に整えられてきた。けれど、人の野蛮さは隠しきれないわ)

夜が明けた。山火事はおさまった。

 山はところどころ青白い煙をあげながら、静まり返っていた。

 何もなかったかのように。


 風が吹き、鳥が鳴き、

 昨日と同じ朝が来る。


 長者の家には小夜の死が伝えられた。

「主の命を拒み、不慮の事故で亡くなった」

 父母は昨夜の火事の意味を知る。

(あの子は、焼き殺されたのだ)


 命を拒んだという理由で、葬式を上げることが許されず長者館は静かに喪に服した。


 それから二カ月の時が流れた。

 梅雨空の下、若い商人龍一郎が異国の香を持って長者館を訪れた。


「長者殿、今度の七月、また明を訪れます。各地の市場で良質の商品を仕入れてまいります。何かお望みの品はございますか?」

「いや、何もいらぬ。欲しいのはただひとつ。小夜の亡骸だ。亡骸さえも消えてしまった悲しい最期だった」

「それは……ご期待にそうことはできかねます。……出発の日、三田尻港にお越しください。きっとあなたさまの望む物がみつかることでしょう」 

「見つかるものか。龍一郎、お主も小夜のことは忘れて、良き妻を娶ってくれ」



 七月、三田尻の港は男衆と見物人でごったがえしていた。磯の香りが強い。遠くで藻塩を焼く煙があがっていた。


「長者殿」

 長者が振り返ると、龍一郎が立っていた。


「遣明船をご案内いたします」

 はしけ(小舟)に乗り、大きな船に乗り移った。

 帆柱がそびえたつ。その下には大きな帆が丁寧に畳まれている。


 男衆が木箱を運び込む。

「あれは何じゃ?」

「ああ、長者殿、あれは銀塊ぎんかいでございます。石見銀山から届いた銀の塊。かの国ではこれで物を買うことができるのです」

「ほう」

「長者殿、まだ元気がありませぬな」

「わしはもう一生笑うことはあるまい。娘が死んだのだからな」


 その時、目の前に何人かの僧が現れた。頭を青々と反り上げ、そろいの僧衣をまとっている。

「彼らは桜御前様が遣わす留学僧でございます」

 龍一郎が紹介すると僧たちは深く頭を下げた。そして、船の底にはしごを使って降りて行った。

 一人残ったのは……


「おお、お前は?」


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!

いかがでしたか?


感想をいただけるとすごく励みになります。

次回もどうぞお楽しみに!


さとちゃんぺっ!の完結済み長編歴史小説、良かったら読んでください。↓

歴史部門:なろう日間2位 週間2位 月間2位 四半期2位 (1位はとれない)

源平合戦で命を落とす安徳天皇に転生した俺、死にたくないので、未来の知識と過剰な努力で、破滅の運命を覆します

https://ncode.syosetu.com/n7575kw/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ