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君と紡いだ宝物  作者: 朝凪 紡


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3/7

すこしの、いわかん。

翌日――


ピピピッピピピッ


(ん~?)

あまり好ましくないアラームの音が聞こえてくる。

よりによってアラームの音で起こされる朝、これが今日じゃなければどれだけ良かったか。


なぜクエスチョンマークが浮かんだかというと、今日も休みのはずなのだ。

限界突破をしてまで仕事を調整して、勝ち取った有給日にアラームを消し忘れるなんて我ながらあきれてしまう。

朝寝坊できなかったことが少しショックだ。

(変に目がさえちゃったな…今日は雨か)

静まり返る部屋に、雨音がよく響いている。

雨の日は昔からなんとなく好きだった。

特に静けさの中で雨音をただ聞いていられる時間は格別だ。

(雨の日はなぜか落ち着くんだよね)

カーテンを開けながら耳をすます。


ザーザァー…ポツ…ポツ


(せっかくの連休だし今日もお出かけしようかな)

軽く部屋の片づけをすませ、身支度に取り掛かる。

(昨日のお店の定食美味しかったな~雰囲気もこれでもかってくらいに私好みだったし…今日も、行こうかな)

私の好みは少し特殊だ。

いいなと思う服もお店も見つからないことが多い。

だからドンピシャで良い!と思えるものに出会えるのは奇跡だと感動するレベルなのである。

(うん、行っちゃおう)

正直、連日は少し気が引ける。

(……いや、でも気になるものは気になるし!昨日あれだけ刺さったんだから仕方ない)

半ば強引に納得させ、せっせと準備を進めていった。


身支度を終えたころには十五時を回っていた。

軽くのつもりだったが、思いのほか部屋を片づけてしまっていたようだ。

「まさかこんなに時間が経ってるなんて」と、ふと焦りがよぎる。

(ランチ以外も営業してるかな……)

少し不安になったので、おなじみの便利ツール、SNSで調べてみることにした。

しばらくの間、検索しては画面を下にスクロールしていたが、それらしきものは見当たらない。

(あれ…載ってないな)

結局「翠雨」に関するものは一切見つからなかった。

(まぁ見つけるの難しそうだし、ネットとは無縁な感じだったもんね)

とにかく行ってみようと玄関へ向かう。

何事もやってみよう、が私のモットーだ。

開店していると信じて、今日は何があるのかと心弾ませながら傘を掴んで家を出た。


昨日と同じ道を進んでいると、遠目に看板を見つける。

(…っ!開いてるかも…!)

思わずガッツポーズである。

勢いよくしたおかげで傘の水滴が私に降りかかる。

(あぁ、濡れた)

確定ではないものの開いてるかもしれない嬉しさに、濡れたことなどもはやどうでもよかった。

気持ちを体現するように足音が早まる。

そしてすぐに看板の前に着く。

(昨日と違うメニューだ…まだ閉店時間じゃないといいけど)

思い返してみれば、看板にもお店にも営業時間が表記されていなかった。

看板が立ててあるので、希望はあると拳を握り路地へと足を進めた。


昨日とは打って変わって微塵も恐怖はなかった。

とにかく楽しみと期待が競り合っていて、さらに足取りが早くなる。


ポタ……ポタ…

路地を進んでいくとさっきまでザーザー降りだった雨音は水滴が落ちる音に変化していた。

(止んだのかな)

傘をよけてみるとやはり止んでいるようだ。

上を見上げても、ただ灰色の壁がどこまでも続いているだけで空は見えない。

しかし、振り返り路地の入口を見てみると変わらず雨は降っているようだ。

(上の方で建物同士がくっついてるのかな…)

そんなわけないかと一人苦笑しながら傘をたたむ。

色々と考えてみたがさっぱりわからない。

少しずつ視界が明るくなってくる。

(そろそろだ!)

わからなかった疑問はそのまま置き去りになる。

楽しみと期待が再び競り合ったが、路地を抜けた途端に疑問に引き戻される。


(え…?)

そこは昨日と全く変わらない小屋があった。

所々雨のしずくが滴っているが、小屋自体は水滴のすの字すら感じられないほど日が差している。

(そんなに濡れてないことある?そして路地抜ける間にそんなに晴れる?)

混乱しながら上を見ると、そびえたつ壁の先に青空と少しの雲が見えた。

たとえ今晴れたとしても、さっきまでの雨で小屋が濡れていないのは不思議なことこの上ない。

戸惑いを消化しきれないが、考えても何か答えにたどり着くようにも思えない。

深呼吸をして、お店の入口に目を向ける。


『OPEN』


(開いてます!)

営業していることへの喜びで疑問は再び放置される。

流れるように軽い足取りで入口へ向かい、ドアノブを引く。


カララーン


「っ…いらっしゃいませ、また、来てくれたんですね」

声の主は、驚いたようにこちらを見て、嬉しそうに微笑んだ。

その笑みは、一瞬だけど……少し憂いがあるようにも見えて、でもそれ以上に、ほっとしたような顔だった。

どこかに消えてしまいそうな、静かに滲むやさしさに、切なさを覚えた。

(……なんで、そんな顔するんだろう)

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