6.
「……アルト」
建物の中から窓の外を見ているアルトにレインが声を掛ける。そして、アルトの横に行き、窓の外を眺める。
外は嵐が吹き荒れていた。木々が揺れて、雨が音を立てながら強く窓を鳴らしている。まるで、天が怒っているような、そんな嵐だった。
「……なんで、こんな事になっちゃったのかな……」
レインがポツリと呟く。
「分からない……」
その言葉にアルトがポツリとそう答える。
「なんで、穏やかに毎日を過ごすことが出来ないんだろう……」
レインがそう小さく言葉を綴りながら、静かに涙を流す。
アルトがレインの涙を見て、そっとその涙を拭う。
(レインは俺が守る……)
アルトが心でそう呟く。
「あ……そういえば、カルマは?」
アルトがいつもならカルマもレインと一緒にこの場にいそうなのに、姿が見えないので不思議そうに声を出す。
「カルマなら、もうぐっすり寝ているわよ。いつか自分も戦いに出てみんなを守るんだって言って、必死で木の枝を剣代わりに練習していたわ」
「そっか……」
レインの言葉にアルトが微笑む。
国を守ろうと自分だけでなく、カルマも国を守るために、いつか役立つために頑張っているという事が分かり、嬉しい気持ちがアルトの中で膨れ上がる。
(俺もいつか力になるんだ……)
アルトが心でそう呟く。
そして、アルトとレインは子供たちが集まっている部屋に戻っていく。
部屋に戻ると、部屋の隅でろうそくの明かりを頼りに一人の少年が本を読んでいた。
「グレン、何を読んでいるの?」
アルトに声を掛けられて、グレン=ドミニンが顔を上げる。グレンは頭の良い少年で年齢はアルトの三つ上の十五歳。いつも本を読んでいるグレンは色々な知識が豊富で、いろんな国のことや、人の心理を読み取ることが出来る天才児と呼ばれている少年だった。
「……これ?これは『サイハテの地』っていうユルクっていう人が書いた本だよ」
「ユルク??」
グレンの言葉にアルトが頭にはてなマークを浮かべる。
「ユルクはずいぶん昔の人で、博識者って呼ばれていた人なんだ。その人は世界中を旅していろいろな話を書いているんだけど、今読んでいるのはユルクが記録として書いたある場所の話だよ」
グレンがそう言葉を綴り、読んでいる本の内容を語る。
その『サイハテの地』と題された本は、ここからかなり南に向かって歩いた場所に、周りが岩だらけのその地があるという。その地は、冬は骨まで凍りそうな寒さで、夏は暑さで溶けてしまいそうな、とても人が住めるような場所では無いことが記されていた。
「良かったらアルトも読んでみる?」
グレンがそう言ってアルトにその本を差し出す。アルトはその本にどこか妙に惹かれて、その本を受け取り、自分でも読んでみることにした。
蝋燭の明かりを頼りに、その本をレインと一緒に読んでいく。読み進めていく内に、こんな場所が存在することがどこか信じられない自分がいることに気付く。でも、それと同時に何かを感じてその本を読み進めていく。そして、一気にその本を読み終えて、息を吐きだす。
「……本当にこんな場所があるのかな?」
アルトがその本を見つめながらそう言葉を綴る。
「でも、例えあったとしてもこんな場所には住めないわね」
レインがしんみりとした顔で、そう言葉を綴る。
「そうだね……」
アルトがそう口では言うものの、どこかその本が気になり、自分の鞄にその本を入れる。
そこへ、シルクがやって来て、アルトとレインにそろそろ寝るように声を掛けた。
***
「……なかなか止みませんね」




