26.&エピローグ
「……お父さん……」
ミントがガンとシルクに抱き締められながらガタガタと震えている。アルトとレインが居ない事にはすぐに気付いたが、探しに行くことも出来ない。
「闇討ちを仕掛けるなんてな……」
ガンが怒りを露わにそう言葉を小さく綴る。
その時だった。
二人組の武装した兵士が乱暴に扉を叩き蹴り、家に侵入してくる。
ガンがシルクとミントを守るように兵士に向って手を広げる。
「お前たちは俺が守る……」
ガンがそう声を発する。
兵士がガンに銃を向ける。
――――バババババッ…………!!!
「ガッ……!」
身体に銃を打ち込まれたガンが口から血を吐く。
「……しぶといな」
銃を撃っても倒れないガンに兵士がそう声を出す。
「俺は……守るんだァァァァァァ!!!」
ガンがそう叫んで、体中から血を流したまま男たちに殴りにかかる。そして、二人組の兵士を素手で家の外に投げ飛ばした。
「……はぁ……はぁ……はぁ……あ…………」
ガンがその場に倒れて、動かなくなる。
「あなた!」
「お父さん!」
シルクとミントがガンに駆け寄り、目を覚ますように必死に声を掛ける。
その時だった。
――――ドカーーーーン……!!!
その家が砲撃され、跡形もなく吹き飛んでいった……。
***
「……なんだよ……これ……」
村の近くまで戻ってきたアルトがその光景を見てレインと茂みに隠れながら小さく声を出す。
兵士たちが村のいたるところで銃を放ち、仲間たちが恐怖で悲鳴を上げている声が響いている。
その時、アルトたちの近くに二つの戦車がやって来る。
アルトとレインは見つからないようにその場で息を抑え、じっと動きを止める。
「これで、やっと一網打尽だな」
「いや~、グルドフ殿の自虐史観というのは本当に使えたな!ファン殿が教えてくれた『聖地』という作戦は本当に役立ったよ!」
「そうだな。聖地でも何でもない土地をそのように偽るために自国の兵士にそう植え付け、奴らにはその聖地を犯したお前たちが悪いと言う自虐史観を与え、戦意をそぎ落とす……。これは他の戦争でも使えるだろう」
(……じゃあ、あの戦争は……?!)
アルトが聞こえてきた会話を耳にして愕然となる。
仕組まれた戦争……。
自虐史観を植え付け、戦いやすくするための作戦……。
(そんな……そんな……)
アルトが心の中でそう叫びながら一筋の涙を流す。
やがて、音が止み、グルドフとドルクたちがその場を去って行く。アルトは、完全にその姿が見えなくなるのを確認すると、レインと共に村の方に駆けていく。
しかし、目に飛び込んできたのは殺された仲間たちの遺体と破壊された家や建物だった。
深夜を狙った奇襲……。
アルトとレイン以外の仲間は全て殺されていた。
空気に乗って漂うのは煙と血の匂い……。
「あ……あ……」
アルトがその光景に呆然として声にならない声を出す。レインもその光景に愕然として、手で口を覆っていた。
「……行こう」
どれくらいの時間が流れただろうか……。アルトがその場で泣き崩れているレインにそう声を掛ける。
そして、レインの手を引いてアルトはある場所に向って歩き始める。その道の途中で先程までいた川に寄り、そこに置いてきた本を手に取り、その本を広げると、その本を見ながらある場所に向かった。
~エピローグ~
「ここだ……」
アルトがそう口を開く。
三日程歩き、辿り着いた地は寒さで凍えるような場所だった。辺りは暗く、空には幾万の星が輝いている。
「寒い……。ここは一体……」
レインが体を震わせながら、アルトにそう尋ねる。
「サイハテの地……」
アルトが持っていた本をレインに見せながら、そう声を出す。
その本はアルトがまだ十二歳の時にグレンから渡された本だった。アルトはその本にどこか惹かれるものを感じ、ずっと大事に持っていたのだった。
アルトが寒さで凍えているレインの為に焚き火を用意して、その日の前で二人で肩を並べながら暖まる。
二人は焚き火の日をじっと見つめたまま、口を開かない。
アルトの中でいろいろな想いが巡る。
なぜ、人は戦争をするのだろうか……。
その答えは何処にもない……。
戦争は『幸せ』を産まない……。
戦争が産むのは『苦しみ』と『悲しみ』……。
戦争で沢山の命が奪われるだけ……。
それなのに、なぜ人は戦争をするのだろうか……。
戦争の意味は何なのだろうか……。
その答えは出ない……。
人の『欲』が生み出す戦争に終わりは来るのだろうか……。
アルトが夜空に向って片手を掲げる。
そして、星にそっと願う。
これ以上、戦争が起こらないことを――――。
(完)




