24.
グルドフがアンシェル国の一室でそう言葉を綴る。
あえて、ラグアンチ国の人たちを野放しという形で猶予を与えていたが、それもこれ以上必要ないと結論を出した。
「ファン、ドルクに連絡を取れ」
「御意」
同じ部屋にいるファンにグルドフがそう声を掛ける。
そして、部屋に引いてある電話に手を取り、ファンはドルクの側近であるラグエルに連絡を取り、ドルクとグルドフが会談できるかを聞く。
すると、電話がラグエルからドルクに変わり、グルドフと電話で話をする。
「……明日を例の決行日にする」
グルドフが受話器口にそう言葉を綴る。
『おぉ!やっとか!待ちかねたぞ!』
その言葉にドルクが受話器越しに喜んでいるのが分かる。
そして、グルドフとドルクは落ち合う場所を話し、電話が終わる。
何が起ころうとしているのか……?
また、戦争が始まるのか……?
それとも…………。
***
「……ふぅ、今日の作業はここまでだな」
アルトがそう声を出して汗を首にかけていたタオルで拭う。
そして、家に戻ってくると、丁度夕飯の支度が出来たところで、テーブルにはパンやサラダ、それと肉料理が並んでいた。
「あっ!お帰りなさい!」
「おかえり!お兄ちゃん!」
皿を持ってキッチンからやって来たレインとミントがアルトを見て笑顔でそう言葉を綴る。
そして、レインを含めての夕飯が始まる。
今日もガンは新たな建物を作るための作業を行っており、遅くまでその作業をしているため、先に子供たちが夕飯を取る。
「お腹空いたでしょう?沢山食べてね」
レインがそう言ってアルトの更に肉やサラダを盛り付けていく。
「お兄ちゃん!これ、私も作るの手伝ったんだよ!」
ミントがサラダを指差しながらキラキラした瞳でそう言葉を綴る。
「……おっ!旨いじゃん!」
「やったー!」
アルトがミントが手伝ったというサラダを一口食べて、そう声を出す。その言葉が嬉しくてミントが万歳をしながら喜んだ。
そこへ、ガンが帰って来てシルクも加わり、皆で夕飯を食べる。
やがて、夕飯の楽しいひと時が終わり、レインはミントと一緒に部屋に戻っていった。
ガンの提案もあり、レインはこの地に来てからアルトたちの家で暮らすようになった。そして、ミントと一緒の部屋で過ごし、レインは家の事をいろいろと覚えていった。シルクも、レインを娘のように可愛がり、アルトとミントと同じようにレインを可愛がった。
「……はぁ」
寝る時間になり、アルトも部屋に戻ってベッドに横になっていたが、なかなか寝付くことが出来なくて、ため息を吐く。
そして、少し夜風に当たろうと思い、あるものを手に家を出る。そのまま、村から少し離れたところにある川に足を運び、川の近くで腰を下ろした。
夜の川は、昼に見る川とは違い、暗さのせいで水の濁りが見えない。そのせいか、その川がとても綺麗に見えてしまう。
暗闇が全てを飲み込み、醜いものを覆い隠しているような、そんな感覚に陥ってくる。
また、この地も襲われるかもしれない……。
いつまでこの穏やかな時が続くかは分からない……。
いつ、また戦争が始まるかが分からない……。
不安が押し寄せてくる……。
恐怖が込み上げてくる……。
それでも、大切な人を守るために戦わなきゃいけない……。
アルトが川を見ながら、そんな思いを巡らせる。
ふと頭を上げると、空には星が瞬いていた。キラキラと輝く宝石のような月と星は、アルトたちをどんな風に見ているのだろうか。天は自分たちの味方じゃない。宝石のように見える月も星も自分たちを助けてくれるわけではない。
(みんなを……レインを守らなきゃ……)
アルトが夜空を見上げながら、そう言葉を綴る。
そうやって、アルトが耽っている時だった。
「……眠れないの?」
不意に声が聞こえてアルトが声の方向に顔を向ける。
そこに立っていたのはレインだった。




