10.
夜道を歩きながら護衛として一緒に歩いている少年に、アルトがそう尋ねる。
「きっと大丈夫です。みんなで戻って来てくれますよ」
護衛の少年が優しい眼差しをアルトに向けながらそう言葉を綴る。
「ご自慢の父上なのでしょう?ガン国主は「鋼の肉体を持つ男」ですからね」
「うん……」
護衛の少年の言葉に、アルトは悲しそうに呟く。
ガンにまた会えるのか……?
それとも……。
アルトの中で、最悪な考えが拭えない。もしかしたら、ガンにはもう会えないかもしれないという想いが頭から離れない。
(……大丈夫!父さんなら絶対生きて戻って来てくれる!)
アルトが最悪の考えを振り払うように頭を振りながら、心の中でそう叫ぶ。
「……ねぇ、その兵たちが言っていたっていう言葉なんだけど、もしかして僕たちに自虐史観を植え付けようとしているんじゃないかな?」
「自虐史観?」
そばを歩いていたグレンはずっと何かを考えていたようで、ふいにそう言葉が口から出てくる。その言葉を聞いた護衛の少年が聞いたことの無い言葉に頭にはてなマークを浮かべる。
「お前たちが悪い、お前たちがこの戦争を引き起こしたって相手の兵士が言っていたんだよね?そうやって、あたかも僕たちが悪いっていうのを植え付けて、戦意を少しでも喪失させて、僕たちが戦いにくいように仕向けたんじゃないかな?」
グレンがそう言葉を綴る。
「……確かに敵国の兵たちの言葉で、上手く戦えない人もいました。そして、その人たちの動きにぶれが出て、相手の兵はその一瞬の隙を狙って倒されてしまった人も沢山います……」
護衛の少年がそう言葉を綴る。
「やっぱりね……。多分それって敵の戦略だと思うよ?」
「そ……そんな……」
グレンの言葉に護衛の少年の顔がみるみると青ざめていく。
それが本当にグレンの言う通りだとしたら、自分たちはその敵の罠にはまってしまったことになる。
「今となっては、それが分かってもどうすることも出来ないけどさ……」
グレンが夜空に散らばっている星たちを見つめながらそう言葉を綴る。
アルトはその言葉に悔しさを感じていた。その言葉が本当に相手の戦略なら、なんでそんな汚い方法を取ったのだろうと、怒りの感情が湧いて来る。
しかし、それと同時にグレンと同様、どうしようも出来ないので、アルトはガンが生きている事を祈るしかなかった。
そして、アルトたち一行はガンに指示された場所を目指して夜道を歩き続けた。
***
一夜が明けて、アンシェル国が放った砲弾を合図にまた戦闘再開になる。
「……悪あがきはやめたらどうだ!」




