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カチコミに来られました!?

 ルーカス・ヴェイルは次に会うときどうなっているか。

 そんな事を思ったのが2日前。


 今日、彼の婚約者に屋敷に押し寄せられた。ルーカスも彼女に付き添って来ている。


「お嬢様…何か思い当たる節は?」


「いいえ。第一誰か知らないわ!」


 お嬢様はそうエントランスで仁王立ちしている。

 なぜこんな動じていないのだろうか?


「どうぞ、中へお入りくださいませ。」


 しかし、長時間門の前に放置するわけにもいかず。僕は扉をお開いた。


 重厚な玄関扉から差し込む光の中、現れたルーカスは婚約者の令嬢を腕をギュッと掴まれていた。

 ルーカスは少し気まずそうに視線を逸らし、無言のまま。


 そして彼の婚約者…乙女ゲームルーカス・ヴェイルルートの敵対ヒロイン。リリーナ・フェルメン。

 彼女は少し怒った様にお嬢様を見つめ、わずかに顎を上げている。そのせいか、若干勝ったような顔をしているのがさらにここに居る謎を加速させる。


「…まったく、何のつもりかしら。」


 お嬢様は持っていた扇子をパチンと閉じ、ため息を吐いた。


 エントランスホールにいる使用人達には緊張が浮かんでいた。

 なにせ、リリーナも公爵令嬢。さらには一時期レオンハルト殿下の婚約者候補であり、イザベラ様と緊張を走らせていたからだ。


 理由は分からない。しかし相手も公爵家の令嬢。

 急な来訪、それも押し寄せるような勢いで訪問してきた相手を拒むわけにもいかない。


「応接間へご案内します…。」


 リリーナを睨むように立つお嬢様。

 話が進まないと、渋々僕は動いた。


 廊下を移動も、尚ルーカスは視線を逸らし続け、リリーナはお嬢様と火花を散らす。

 その歩みに合わせ、屋敷全体の空気がぴりぴりと張り詰めていくようだった。


 少しで到着した応接間。

 しかし、僕はリリーナ嬢に「イザベラ様とお話したいから。」と言われ、ルーカスと共にドアの前で立ち止まった。


「…今日は急に申し訳ない。」


 いつも通り風魔法で盗み聞きしようとした所、ずっと黙りこくっていたルーカスが口を開いた。

 一体全体なんだっていうのか。僕は強めに聞いた。


「はい。なんなんでしょう。本当に?」


 強い口調を言い終えて思い出した。ルーカス・ヴェイル、彼はヴェイル公爵家の子供だと。

 身分違いにも程があった。


「…本当に申し訳ない。実は…」


 身分差よりも今日の訪問を重く受け止めているらしく、僕の言葉に怒ることなくルーカスは説明をしてくれた。


 遡ること昨日。

 2日前に王宮で僕らにあって僕に言われたこと、お嬢様に言われたこと。

 2つを考えてひとまず婚約者に捨てられないかの確認にフェルメン公爵家に行き、話をしたらしい。

 リリーナの前で初めて笑顔で話をした所、彼女はお嬢様が自分婚約者をたらしこんだと勘違い。

 そして乗り込みに来たらしい。


 始めはボッコボコにでもしてやろうかと思ったが、所詮は子供の行動。なんともなんとも可愛らしい嫉妬である。


 それをルーカスは軽く笑いも見せつつ語ってくれたのだから、2日前とは完全に別人。

 まぁ何かされたと思われてもしょうがない変わりようだ。


 元凶であるこいつボコったろっかな…。


「説得するよりも、あの素直で自由なお嬢様に会わせたほうが早いと連れてきてしまって申し訳ない。」


 深々と頭を下げたルーカス。ボコろうと思いもしたが、ここまで真面目に謝られるとそんな気は失せた。

 王子様にお嬢様のツンを全面的に見せさせてしまっている(失礼な)僕が言えたことではない気がしたのだ。



 そうこうすると、僕とルーカスは他愛もない会話をして時間は過ぎた。

 そして、


「…それででしてね!」


「それは良いわね。」


 しばらくすると応接間の扉がゆっくり開き、お嬢様とリリーナが肩を並べて出てきた。


 リリーナよ表情は先ほどまでの鋭さは消え、楽しげな笑顔を浮かべている。

 お嬢様はふん!とスカした顔をしているが、口元にはニヤリと笑みが見えた。


「…解決、いたしましたか?」


 出てきたリリーナ嬢に僕はお辞儀を1つ。


「ええ。ノワール家の皆様、本当にすみませんでした!」


 少しからかってやるつもりが、公爵令嬢がルーカスと同じく頭を上げてしまったのでその場はパニック。

 高貴な人を(お嬢様以外を)軽くからかうのはこれ以降やめようと僕は思った。


「ルーカス様の言っていたことは本当でした。疑ってしまって、申し訳ありませんでした。」


「いえいえ、私の方こそ今まで申し訳なかった。」


 今度はルーカスに謝るリリーナ。2人は見つめあって、最後には笑顔を見せた。


「…イチャイチャはよそでやってよ。はぁ、リリーナ様にルーカス様がお帰りです!」


 2人にムカつきながらも僕は使用人達指示を飛ばす。


 2人の公爵家の子息がお帰りになられるのだ。使用人全員までとは言わないながらも、半分くらいで見送らなければならない。



「クロード様、恋愛したいのですか?」


「まぁ、あんなイザベラお嬢様だって婚約者がいるわけで…。ここ3日間、リア充のイチャイチャ見せられたらね…。」


 2人を門で、馬車で去っていった所まで見送り終わると、隣にいたメイドに話しかけられた。

 例の天狗なお嬢様にいじめられていたのを助けた子である。名前は、エミリー。

 彼女はニヤニヤっと笑って何か嬉しそうに去っていった。


 何だったのか…。

 そんな事よりも、今度は急な何かはないよなと言うこと。

 なんだかんだと、乙女ゲームでは見られなかった出来事を思い返すと、未来は良くなっていると明るく思えた気がした。

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