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第1王子 レオンハルト・ウェンイザー

 レオンハルト・ウェンイザー、それが僕の名だ。

 ウェインザー王国の第一王子として生まれ、蝶よ花よと育てられてきた。


 兄弟はおらず、唯一の妹は病弱で、母はその妹を産んで以来体調を崩し、顔を合わせる機会は少ない。

 父が側室を娶ることはなく、王位継承はほぼ確実に僕のものとされていた。


 ゆえに、常に周囲の思惑と視線がつきまとう。

 その息苦しさのせいで、人と交わることを次第に嫌うようになった。


 剣術、学問、そして魔法。

 いずれも手をつければ、人並み以上にはこなせた。だが父は忙しく、周囲も当然と言わんばかりの顔しかしない。

 褒められることはなく、返ってくるのは、さらなる高みを目指せという冷たい言葉ばかりだった。


 僕は人の考えを読むのが得意だった。だから、適当に笑みを浮かべ、誰もが求める王子を演じれば事はうまく収まる。

 だが、それはあくまで王子への視線。

 レオンハルトとして見てくれる者はどこにもいなかった。


 敷かれた道を歩くだけの日々。

 望まれた未来をただなぞるだけの毎日。

 それは、退屈で息苦しかった。


 そんな折、希少な火の魔力を持つ公爵令嬢との婚約が決まった。

 政略結婚。王族との繋がりを望む貴族の思惑。それ以上でも以下でもない。


 名はイザベラ。

 初めて顔を合わせた時の彼女は、甘やかされて育ったのが一目でわかる、我儘で高慢な令嬢だった。

 親に吹き込まれたのか、馴れ馴れしくまとわりつき、鬱陶しさしか感じなかった。

 そこにもまた、王宮の貴族たちと同じ地位だけを見つめる視線も見た。


 だが、拒んでも次の候補者が現れるだけ。

 ならば、彼女でいい。

 そう思いながらも披露宴までの一年間、ほとんど顔を合わせることなく過ごした。


 そして、婚約披露宴の日。


 変わっていた。

 かつての彼女とはまるで別人のように。

 我儘さも、高慢さも消え、あの薄気味悪い視線もなかった。


 上目だけなのか?始めは、似た経験から信じけれなかった。

 なので、匿名で届いた披露宴で起こりえる事件。

 自身に危険が伴うかもしれないが、そこで彼女の行動を見定めようと思った。


 結果は見事としか言いようがなかった。


 素晴らしい、と心から言えるほどに。

 ますます、なぜ変わったのかに焦点が向いた。


 聞けば、彼女の従者の影響で、一時期男性不信に陥っていたらしい。

 なるほど、と僕は思った。


 同時に、イザベラを変えた従者。

 そして、僕に縋りつくことのない、唯一の令嬢。

 その二人に、胸を突かれるほどの好奇心が芽生えた。


 そのとき、僕は生まれて初めて他人に興味を持った。

 つまらないと思っていた月に一度の婚約者との面会。人との面会に初めて心が踊ったのだ。

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