僕って、あ…!?ヒロインに落とされるキャラだ。〜最強従者に転生してました〜
お嬢様への愛の告白。聞き入れられるどころか不気味がられた僕は再度部屋へ放り込まれた。
今度は懲罰房ではなく医療室への異動となった。
「引かれる事は言ってないんだけどなぁ…。そもそも前世の自分は20代後半。天地がひっくり返ったって8歳相手に変なドアは開かないって。」
まぁとりあえず、さっきの食事の続きでもしながらなら前世での乙女ゲームの設定等々確認することにする。
僕が死ぬ前までやっていた乙女ゲーム、その名も『乙女ゲーム TRUE LOVE』。王道の魔法学園での恋愛物だ。攻略対象は4人。
ゲームのスタートは15歳、王立魔法学園入学から始まる。
主人公は平民ながらも最もレアな光の魔力を宿した子だ。
貴族だらけの学園の中でいじめられていた主人公を王子様が助ける所から始まって…という意外さゼロの作品である。
攻略対象の4人についても王道を貫く。
1人目
この国の第1王子であり未来の国王゛レオンハルト・ウェンイザー゛イザベラお嬢様の婚約者だ。
金髪に赤っぽいブラウンの目。基本何でもできる天才肌のイケメンキャラクター。が、目的達成の為に手段を選ばない少しエグめの性格。
両親、国民からとプレッシャーを受けており窮屈な日々を過ごしている。
弱点は甘い物。魔力は火、しかし水も少しだけ使える。
2人目
そんな第1王子の護衛役゛ルーカス・ヴェイル゛
紫髪に金色の瞳は少しチャラめな王子とは変わってしっかりとした真面目な印象を受ける。
護衛役の割に剣術以外王子に勝るものがない(王子を守る能力が低い)ことにコンプレックスを抱えている。口数が少ない。
そんなクールなツンデレキャラだ。
魔力は氷。
3人目
主人公が所属する生徒会、その先輩で会長キャラになる゛ラファエル・アルマン゛
一番の常識人であり気さくなキャラクター。気配りができ人付き合いも上手い。それだけに攻略レベルは高難易度。白髪に黒目の美形。
魔力は土。
4人目はまだ前世のゲームで攻略できていないキャラクターだ。え〜と…公式情報を、公式情報…。
悪役令嬢の従者゛クロード・ヴァレ゛
少し長髪の黒髪、黒目の少しミステリアスなやつれ顔。性格は悪役令嬢に叱られ続け負け気に沈んでいる暗めだ。
しかし悪役令嬢の従者をしているだけあり、能力は優秀で戦闘、工作何でもござれり。このキャラとの敵対ルートは緊張感は半端ない!
魔力は風。
…ってあれ、クロード・ヴァレ…。
ゲームの悪役令嬢キャラの名前はイザベラ・ド・ノワール…。
「風よふけ!ウィンド!」
ヒューーー
自分の黒い髪が軽く揺れる。
僕の魔力も風だ!
「…いや、僕かよ〜〜〜!?!?!?」
僕は慌てて洗面台へと駆け込み、鏡を覗き込む。
そこに映ったのは、少し顔色は良いものの、ゲームのパッケージに描かれていたやつれ顔の従者そのもの。
……確定だ。間違いなく、僕はあの従者に転生してしまった。
「いやぁ〜、ヒロインに落とされるのか…。」
前世で彼女はいない。女性に迫られた事はない。
まんざらでもない気がしてきた…。
数分はそう想像なんかしていたりした。
が、少しすると気がつく。
ヒロインに落とされたら落とされたで自分の手でお嬢様を処刑しないといけない運命にあるのでは?と。
そもそもお嬢様が悪役令嬢に成った境遇が同情できるから前世で金を注ぎ込んだのだ。
ヒロインには屈しない!
と言うか、僕が落とされなくても基本どのルートでもお嬢様は倒される運命にある。
改めて再確認だ。
『乙女ゲーム TRUE LOVE』悪役令嬢イザベラ・ド・ノワール。ノワール公爵の1人娘で傲慢我儘なご令嬢。
幼少期に兄を亡くしておりそれが原因して両親は甘々に。
公爵家、魔力は火、赤っぽい瞳。それらの理由から王家の方からレオンハルト王子と婚約の提案。
その婚約で高飛車ぶりが加速。家での調子乗りから社交会へ、そして学園へと登っていった。
魔法学園では平民で王子が気にかけたためにヒロインをいじめる。
詳しく言えば、乙女ゲームの主人公のヒロインがレオンハルト王子を攻略成功すると、犯罪すれすれなイジメを暴露され国外追放。
失敗してもイジメは浮き上がり、公爵家は没落。
護衛役、ルーカスのルートを成功で、ヒロインに嫌がらせをしていた彼の婚約者共に共犯者として国外追放。
失敗したら彼の婚約者を嫉妬で襲い、逆に刺されて死亡。
先輩キャラのラファエルルートでも同じようなもの…。
要は、平民なのが気に入らないくイジメるので、基本どの攻略ルートへ進んでも茶々を入れ、ラストには破滅を迎えるのだ。
つまり、お嬢様を助けたい僕ルート。クロード・ヴァレルートに進む以外には破滅する。
しかし、クロードのルートはほぼ裏ルートと言われるほど難易度が高く、ほぼないルートだ。
つまり死ぬ運命にあるということ。
そしてそして、大事な事だが、この先をどうしよう?
今すぐに逃走を選ぶのか、お嬢様を救うのか…。
正直、乙女ゲームを無視したら魔法の世界に来たということ。
乙女ゲームの変なしがらみを無視して逃げてしまったほうが幸せな気はする。
男の子としてはそっちのほうがワクワクしてしまう。最強スペックを与えられたわけだし。
逃げて最強チヤホヤ人生を選ぶか、悲惨な悪役令嬢を救うのか…。
「…前世は中途半端なところで終わった。そんな中でこのキャラとして転生したことには意味があるはず…。よし!お嬢様を救おう!」
しかし場合によってはボス(悪役)になる僕が公で活躍するのも良くない。
王国の騎士団とかから引き抜きの話とか出てきたら嫌だし。
動き的にも、乙女ゲームのクロード敵シナリオの行動を真似できたら楽だし…。
ってことで、
「お嬢様のために、裏で暗躍してあげますか!」
こうして今世の行動目標が決まったのである。
そして、そのための第一歩としては、攻撃魔法に無詠唱魔法の習得を目指すことにした。




