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強欲姫

作者: 山田 勝

「欲しーの。下さいなの~、お義姉様ばかりズルいの~」


「はあ、またか・・」


 シャロン姫の欲しがりが始まったとこの国の王はため息をついた。


 この国、シルバーランドには姫が二人いる。

 人目をはばからずにおねだりをするのは2の姫、シャロン。

 15歳になるが幼児言葉を話し。その金髪は二つにまとめ。更に幼く見える。


 そして、1の姫は、シャロンから見たら義姉になる。グレティー姫である。


 王宮の会議でも欲しがりが始まった。


「グレティー、そのネックレスをくれてやれ、うるさくてかなわない」

「はい、陛下」


 グレディーは18歳にして、廷臣達をまとめ。縁談がひっきりなしに来る。

 ここで言う縁談は後ろ盾である。

 その月のない夜を思わせる黒髪は落ち着いた様子に大人びた印象と安心感を与えた。


 しかし、15歳のシャロン姫には誰も手を差し伸べない。

 側妃の子であるが、それだけではない。

 見た目は可愛いが、幼い頃から強欲であることが知られていた。


 12人の兄弟姉妹のうち。生き残ったのは、グレディー、シャロンの二人だけである。


 会議は進み。簡単に王太女はグレディーに決まった。


「さて、皆の者、王太女はグレディーの内定で決まりであるが、功績は魔族討伐である。北方の山に数百の魔族の部族が住み着いた。

 良民を略奪する被害が報告されている。さて、グレディーよ。どうすれば良い」



「はい、陛下、討伐一択でございます。私は魔道が少々使えます。騎士団の精鋭、剣聖、軍師、調整役とし宰相閣下のご子息、後は、A級冒険者を集めれば、討伐は容易でございましょう。

 私が直々に討伐に向かいたいと思います」


「うむ。それが良いであろう。して、一応、聞いておく。シャロンはどう思う?」


「シャロン殿下、陛下のご質問でございますよ」


 お付きの爺やが、もらったばかりのネックレスを眺めているシャロンにささやいた。会議の最中、全くの上の空であった。


「え、何?」

「魔族討伐ですぞ」


「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」


 王族であるが、失笑がもれた。



「はい、魔族は討伐が良いと思います!」


「シャロンよ。どうやって討伐する?」


「はい、王国の騎士団全て、歩兵軍全てと、戦える冒険者を全て投入です」



「はあ、もう、良い。万を超えるではないか?300人いない魔族軍に多すぎる。

 シャロンは離宮に籠もっていろ。追って沙汰を出す」

「はい」


 王宮から離宮へ、次は、外国への政略結婚か修道院であろうとシャロン以外は想像した。

 陛下は決心したのだ。



「うむ。グレディーよ。凱旋の支度をしておくぞ」

「御意、陛下、数ヶ月で討伐してみせますわ」






 ☆☆☆1年後


 グレディーの魔族討伐パーティーは、152名のうち、約半数の72名戦死、残りも怪我人がほとんどであった。

 命からがら逃げ帰ったグレディーは、王宮で報告を行った。




「どうしたのだ?一体、何が起きた・・」


「はい・・・、始めは快勝でした。しかし、徐々にあちらはこちらの戦法を読むようになって、それでも勝ち続けましたわ・・・しかし、皆、疲労がたまり。一人打たれ・・・

 そして、最後、待ち伏せをされ、辛うじて、逃れましたわ」



「敵は思ったよりも強いのか?しかし、全軍で当たったら、各国の笑いものだ・・」


 このとき、ふと、王はシャロンを思い出した。

 今は離宮で過ごしているはずだ。


 呼び出し。対魔族軍について聞いた。


 しかし、答えは1年前と同じである。


「全軍で当たるの」


「しかし、各国の笑い者になるぞ・・」


「もう、笑い者なの・・・これは戦争なの。一人の剣聖よりも平民兵士100人の槍衾なの、一人のネームドのタンクよりも100人の雑兵の盾なの、一人の賢者よりも、100の矢なの。それで勝てるの」


「分かった。魔族軍は調子に乗っている・・・シャロンに頼む」


「お願いがあるの。作戦はこちらに任すの。口を出さないで欲しいの。それと、ご褒美が欲しいの。宝石とドレスが欲しいの」


「分かった。討伐が成功したら、望みの通りに与えよう」


 シャロンは戦場に出ながらも父である陛下に手紙を送った。


 曰く、

『ドレスと宝石、どれくらいもらえるの?』

『ドレスと宝石の用意の進捗は?』

『お金はどれくらいもらえるのか?』




 この手紙が王宮に届くと、文武百官たちは、ため息を吐き。


 大貴族たちは侮った。


「シャロン姫が勝つ事はありえんだろう」

「ああ、魔族とは話がついている。次は公爵軍が出動したら、退散する手はずになっている」


 魔族の出現は公爵家の内通が原因であった。




 中には陛下に、シャロンの欲深さを警戒するべきだと意見具申する者がいたが・・・


「あの欲深さ。危険です。今、シャロン殿下に全兵権があるのですぞ!呼び出し誅殺なさるのが宜しいと奏上いたします」


「それは、そなたの考えすぎだ。シャロンは浅はかな姫だ。物さえ与えればそれで満足をする。幼子と変わらない。

 決して、国を奪おうとする気概を持たない子だった」


「しかし・・」

「それ以上言うと牢に入れるぞ」

「は、はい」




 全く後方の憂いを心配することが無かった王国軍は、数万で数百の魔族軍を囲み。

 撃滅に成功した。


 行軍と捕捉で2ヶ月、戦闘は一週間もかからなかった。


 そして、魔族がため込んだ軍資金や宝を接収し、捕虜をつれて王都に凱旋をした。



 陛下への報告の第一声では・・・


「ドレスと宝石の新作が欲しーの」


 だったそうだ。



 目録をもらうと。

 すぐにシャロンは義姉に会いに行った。





 ☆☆☆修道院


「シャロン・・・何故、ここに、私は王太女を失脚した女よ・・」

「今までもらった宝石とドレス返すの~」

「何故、貴方・・・」



 フゥ、私はシャロン、前世持ちだ。

 王宮って怖い。

 兄弟姉妹たちは、次々に謀殺されていった。


 グレディーお姉様は王妃様の子で女子だから助かった。


 そして、私は男爵令嬢の子、だから、暗殺の目標にもならなかった。

 さらに、バカな我が儘王女の振りをして何とか侮られて、敵視されなかった。


 グレディーお姉様は優秀だ。まっとうな王道を歩いて来た。だから、暗殺に気がつかなかった。



 公爵家の令息と婚約の方向で動いていたが、ひとつ誤算があった。優秀過ぎるのだ。

 決して、公爵家の意のままに動かないだろう。

 だから、公爵家は魔族を招き。討伐に向かったお姉様の動きを教えた。


 魔族の1人1人は強かったが、数の暴力の前では全く力を発しなかった。

 いつも思っていた。勇者パーティーに任せるよりも軍を動かせば良いのにと。




「公爵家なの。公爵家が王家を乗っ取ろうとしているの。捕虜に司法取引で公爵家の紋章入りの手紙を提出してもらったの。お姉様が蛇を斬り。この国を建て直すの」


「私には無理よ。後ろ盾がないから・・・」


「後ろ盾はあるの。戦役に参加した文官、兵士は、シャロンよりもグレディーお姉様が女王に相応しいと思っているの。

 お姉様は気前が良くて、物をあげるから、臣下に人気はあるの」


「分かった・・貴方はどうするの?」

「ご褒美をもらって、他国で暮らすの~、今から逃げるの」




 数年後、グレディーは、女王に即位した。

 後ろ盾を失ったグレディーであったが、大国からの信任を得ることに成功し。その力を用い。

 公爵家は外患誘致で取り潰しになった。


 年代記では、シャロンが国を出た頃から、大国のザルツ帝国の社交界に名を家門無しのメアリーと名乗る利発な令嬢が現れ、しきりにグレディーを宣伝し。グレディーを女王にしたら帝国にも益があると主張した。

 彼女は後に第四皇子の婚約者になった。


 一説にはシャロンではないか?と云われたが、幼児言葉を話さないことから、説の域を出ない。

 しかし、年齢は同じで生涯グレディーとは会わなかったと伝えられている。






最後までお読み頂き有難うございました。

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