プロローグ
はい、気まぐれ新シリーズです。よろしくお願いします。
「俺はどうして生きているのだろうか…」
「どうしたんですか、急に。」
俺は会社でいつも通りの仕事をしていると、ふと思った。
「なんかねぇ、思ったんだよね。どうして生きてるんだろなぁって。」
「哲学ですか〜?」
「まぁ、そんな感じかな。」
今年でもう54歳、早くに妻を亡くして愛猫もこの世をさり、男で一つで育てた一人娘も高校生でこの世を去った。
家族を失った今の私には生きる理由がない。
まぁ、生きるのに理由も何もないと思うが。
「先輩は何か趣味とかないんですか?アニメとかプラモ作りとか。」
「趣味ねぇ。趣味もやれるとこまでやちゃったしなぁ。お金にも特に困ってないし、なんなら意味のない貯金がどんどん増えるだけだし。」
実際、お金に関してはこの前に買ったVRゴーグルも50万程したが、一括で払える程には貯金がある。
だが、それ以上に体力がちょっと厳しい。
「羨ましいっすねぇ。そんだけあるならちょっと位くれても良いんじゃないですかぁ?」
「そう言われると何か違うんだよなぁ。」
「人ってめんどくさいっすね〜」
本当、人ってめんどくさい。
「それで、先輩何か悩みでもあるんすか?」
「いやぁ、それがないんだよねぇ。」
「じゃあなんであんな事言ったんです?」
「さっきも言ったろ?どうして生きてるんだろうなって思ったんだよ。」
家族と過ごしたあの頃は、俺の人生の中で一番輝いていたと思う。
でもその後から、俺の人生は色を失っていった。
「それって、ゴールとか目標がないって事ですか?」
「そんな感じかなぁ?」
でも、今はまだ楽しい方だと思う。
なぜなら、不満の無い会社でいい後輩を持てたのだから。
「なら、子供の頃とかの夢とかは無いんすか?」
「夢ねぇ」
「例えば、どんな職業になりたいとか。」
「それならもう叶ってるぞ?」
「そうなんすか?」
「あぁ、こんないい後輩を持てたからな!」
「も〜茶化さないでくださいよ〜」
「すまんすまん。」
仕事中でもこうやって笑える職場に居ると、少し色が戻った気がする。
「だが、それでも俺の失ったものは大きかったのかもな〜」
「ご家族のことですか。」
「そう、あの頃は大変だったけど、なんやかんや楽しかったからなぁ」
「一度見失った目標は探すのが難しんですかね。」
「そうだなぁ」
俺の生きる理由だった家族はもういない。
だけど、ここなら退屈はしない。
だけど…
「やっぱ一度良いもの味わったら忘れられないんだな〜」
「また会えるとしたら、先輩ならご家族にどう声をかけます?」
「そうだな…もうおいていくな、かな。」
「そうっすか。」
「何かしんみりした空気になったな…よし!この話は終わり!仕事するぞ!」
「あぁ、そうだな。」
「え?」
返ってきたのは後輩の声では無く、どこか機械的で、恐ろしさを感じる低い声だった。
止まって感じる時間の中、黒い服を身に纏うそいつは俺に何かを向けた。
「これでお前の望み通り、退屈な人生は終わりだ。」
その瞬間、俺の視界は地面に落ちた。
そこに聞こえるのは後輩の声。
さっきの黒い奴はもういない。
何だったとかと疑問は尽きないが、考えていくうちに一つのことだけは分かった。
(あぁ、ここで俺は終わるのか。やっと家族の元に行けるのか。)
だが、世界はそう簡単に俺を終わらせてはくれない様だ。
目に映るのは俺を包む光。
後輩には見えていない様なその光の中には、確かな温かみと安心感があった。
それなのに、私を突き飛ばす様な確かな拒絶も感じた。
(俺はまだ死ねないのか)
そう思った途端に光が強く輝き出す。
そして3つに別れた光の中から、懐かしい声を聞いた。
(貴方はまだ来てはいけない)
(貴方はまだ彼女を救えていない)
(貴方は彼女を救うまで、こちらには来られない)
懐かしい声と鳴き声、大きな光と2つの小さな光から、確かに感じた3つの想いは確かに亡き妻と愛猫のものだった。
「どうして…お前たちの声が…」
未だに疑問の尽きぬまま、私の意識は遂に幕を閉じた…
どうでしょうか?気まぐれなので猫宿よりもさらに投稿頻度が低いですね。はい