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第4部 月の地平線 (Luna Horizon)

謎の戦艦 謎の生物 地球の異変・・

さらにヘカテプロジェクトや紫のヘケートの存在 ガイアⅢ世のその後等々・・上手くまとまったか心配ですがいよいよ大詰めです・・

尚エーテルに関しては2部のN線と同様やっぱりあった 新しいのがあった この世界ではある・・のどれかとお考え下さい・・・

 第1章 月からの発進 (Moon Cruiser)

  第1節 ビルベアス

 銃を構える悠子・・

立ちふさがる数人の影・・銃の引き金に指をかける!

悠子も引き金に・・


 目が覚める・・

(またガイアの夢・・もう何年も前なのに・・)

左頬の傷瘢を触る

(これが現実)

 となりには崇が眠っており、反対のベビーベッドには少し浅黒い双子の赤ちゃんが眠っていた。

 眼鏡をかけ、それを見つめる悠子。


 地球連邦設立から2年、目立った事件も無く平和な時が流れていた、数ヶ月前に水星軌道の内側に小さな準惑星が発見されバルカンと命名された事が記憶に新しい、日本語では高炉星・・

 眼鏡をはずし眠っている崇の腕を横に伸ばし腕枕にして横になる悠子・・

(もう一度・・寝よっと・・)


 その頃

暗い格納庫から全長224mの巨大な双胴の戦艦がゆっくりと動き出していた。

「ビルベアス・・・発進・・目標・・地球・・」


 月の裏側から謎の宇宙戦艦が発進した。


  第2節 紫のヘケート

「フェアリーの後ろって狭い」と山河。

「そうだそうだ」大河も言う。

「うるさい静かにしな」

助手席の従妹、洋子が言う。

(たしか洋子ちゃんも以前乗った時は狭いって言ったような・・)と思う悠子。

「もっと広い車買って」

「だめ!あたしはずっとフェアリーに乗る」

「どうして?とばす訳でもないのに」

「山河、それは違うぞ、とばさない、じゃなくとばせないだ」

「ええいうるさい」 その日悠子は銀河の子供、大河と山河そして従妹の洋子(叔父、洋の娘)とレナード・ボーンに誘われ自慢の薔薇の数々を見せてもらった。

レナードに悠子はまだわだかまりがあったが、大河たちにせがまれ仕方なく・・



 しかし数々の薔薇は美しかった・・

変わった薔薇も多い・・


 赤い薔薇の花の中央からまた茎が出て赤い薔薇の二重咲き・・

「変わってますね」と洋子。

「貫生と言います薔薇では珍しいが・・身近ではパイナップルに見られます」

「パイナップル?」

「ほら普通なら先端のはずの実からまた葉が出てますでしょ」

「な~る」レナードの答えに納得の洋子。

「名前はレッドミラージュ・・」

(レッドミラージュ・・赤い蜃気楼・・)悠子の方がドキッとする。


「こちらは遺伝子操作の青い薔薇です、ご存知かも知れませんが薔薇に青い花はありません、青い遺伝子がないのです・・最近では遺伝子操作で青い薔薇も市場に出回ってますが、ここまで鮮やかな青はないでしょう」

「これの名は?」尋ねる悠子。

「ブルーウィッチ・・」

(青い魔女・・わざとだわざと見せている)警戒する悠子。


さらに

「こちらは花芽分化で4つに分離した水色の薔薇・・

クワッドループ・・です」

(クワッドループ・・クワドラプル・・)悠子は確信した。


そして帯状の茎に無数の紫の花・・

「これは帯化と言います・・やはり遺伝子として固定させてます

名前はパープルヘケート・・」

「紫のヘケート・・」思わず声を出す悠子。


「赤は火の色・・熱く上にあがっていく・・対して青は水の色・・冷たく下にさがっていく、その相対する二つの色が混ざったもの・・それが紫・・」

(どうして)困惑する悠子。


「わざとらしかったですね・・ある方から教えてと頼まれました・・」

「誰?」

「今は言えません」

「・・どうぞ、次はあちらです」


 先に行く洋子たち3人


「あなたの様な花だ・・」

「えっ」

 草丈30センチ位で2~3ミリの小さな淡い紫紅の花がいくつか咲いている草を指しレナードが言う・・

「これは薔薇ではありませんがキツネノマゴです・・」

「キツネノマゴ?」

(名前も変なの・・)とその地味な小さな花を見つめて思う悠子。


洋子たちの後を追って出て行く悠子。


『伝えました?あの方の言葉・・』

ネビルがレナードの背後に・・

『ああ』

『キツネノマゴが彼女ですか?私に言わせれば彼女はケシです・・それもソムニフェルム種の・・』

『アヘンのか?』

『そうです・・厳重な監視下で柵の中でしか咲くことが許されない・・』


 リビング様の部屋に遅れてくるレナード。

「最後にこれ天体双眼鏡で撮った史上最大の薔薇」

写真を手渡す

「双眼鏡は歪みを生じやすいですがそれさえクリアすれば立体視は素晴らしいですよ、今度は夜、直接見に来て下さい」みんなを見回し続けるレナード。

「バラ星雲・・オリオン座の隣・・一角獣座の有名な散光星雲です」

(バラだったんだ・・あたしには骸骨に見えたよ・・)と思う悠子。

「どうです中心部には花粉もあります」

(これがバラの花粉?・・いいえこれは飛び散る涙)そうとしか見えない悠子。

「ん?これは何?」

バラの中心(骸骨の左目)辺りの空間が歪んでる。

写真を見直し眼を見張るレナード

「バラ星雲は肉眼では見えません干渉フィルター越しだからこそ見える何かがいる・・いや近づいて来てる」

確認し別の写真を見せる。

「こちらは数日後に撮った写真ですこちらにも写ってました」

「大きくなってる?」

「いままで気付きませんでした感謝いたします」



(あちゃ~)

帰路スピード違反に引っ掛かる悠子。

「良い車ですね」警官が言う。

「はあ・・」

「スピードも出るんだろうねえ」

「それほどでも」

「でも出てたんですね・・それにカラコンしてるの・・運転に支障ない?」

「いえこれは生まれつき」

「だってあなた日本人でしょ・・まあ免許証」

「はい、すみません」

「いったい何キロ出してるの」

「すいません、ついうっかり」

「うっかりですんだら警察いらないの・・ん・・何だこれ」

「あっそれは」EFAの軍証が免許証の裏に・・

(しまった免許と一緒に入れてたんだ)

「おい!これは」もう一人の警官。

「まさか」

「し・・失礼しました、どうぞお行きになって結構です」

「でもだってスピード違反・・」

「いえ失礼しました、どうぞお行き下さい」

「でも」

「おねがいです、これ以上苛めないで下さい」

「そんな・・苛めるなんて」

「お願いです、許して下さい」

「許すって・・別に・・」

「お願いします、すみません、すみません」

「・・・分かりました・・」

発進するフェアリーナイト。


「ふー・・」

「下手すりゃ署長の首がとぶぐらいじゃすまないぞ」

「大丈夫かな」

「どうだろう・・・ヤバイぞ」

「でも、なんで・・どうしてガイア・・いやEFA(地球連邦軍)の一等佐官がこんなところにいるんだ・・・」


「すごーい」はしゃぐ山河。

「凄くなんかないよ・・」

(まずった・・携帯が義務付けられてたからつい、免許証と一緒に・・)

「ううん・・おばちゃんってすご~い」山河が続ける。

「ちょっと・・どうして『おばちゃん』なの?この前まで『お姉さん』って言ってくれてたのに」

「だって赤ちゃん産んだんでしょう・・だからおばちゃん」

「まだ23なんですけどぉ・・」

少し嫌な事を忘れた・・


  第3節 その名はアン

「じゃあお義姉さん少し名子(めいこ)ちゃんと散歩してきます」

「ありがとう秋美(あきみ)ちゃん」

風子(ふうこ)はお母さんと留守番しよっか」

義妹の秋美と双子の姉・・名子を見送る悠子。


 だが散歩の途中・・謎の人物に襲われる秋美と名子。

「その子を渡せ」ハスキーな女性の声。

「バカ言わないでこの子は大切な姪なんだからね」名子をしっかり抱きしめる秋美。

そこへ突然男が割り込み助ける!

「あなたは?」


「ありがとう秋美ちゃんそれに天童中尉・・・いえ今は大尉でしたっけ」

「一等尉官ですよ一等佐官殿、その節は失礼失礼しました、傷残ってしまって・・・」

「いいのよ・・それより誰が」

「おそらく見間違いです・・故人に似てましたが・・旦那さん・・特別佐官にも宜しく」

名子を見つめ

「ありがとうございます」椅子に座り名子を受け取る。

(優しい瞳だ・・それが翠に変化した時の二面性・・いや・・ギャップというべきか・・・)

それを見つめる天童・

「佐官の最大の武器はムーンレーザーでもムーンサンダーでもなくあのアイビームかも知れんな・・・」

「えっ?」天童の呟きに声をかける秋美。

「いや・・なんでもない」


「あなた、お義姉(ねえ)さんの事好きなんでしょう・・」天童を送りながら聞く秋美。

「あたしじゃ駄目・・かな?」

「・・強い者は倒したくなる、でも弱い者は守るべきだ」


 それを遠くで見つめるコバルトブルーに黄色いラインのの服のスレンダーな少女。

「此れは警告だ・・時は来た西村悠子は私が倒す・・此のアンが・・」


 数日後ヘンケルス・チギュン・ポゥ元首来日、悠子と守に召集がかかる。

イオルト=ジョン・ユイダック米大統領と実相江梨緒総理も同席している。

「猊下・・・」と悠子がポゥ元首に言う。

『よく来てくれた西村一等佐官、それに竜崎二等尉官も・・今日はEFAのレーダーがとらえた謎の飛行体の事で』

 足がよろめきよろける悠子。

受け止める守。

「触るぞ」

「・・もう触ってる」


  第4節 南極に散る

 その頃悠子の町に宇宙戦艦ビルベアスが出現。

 船体からテニスボール大の放射球をばらまく。

地上に落ちた放射球は光線を四方八方へ撒き散らし、それに当たった人々が次々に倒れる。

 駆けつけた悠子がペネトレーターを呼ぶ。「Eye for eye,tooth for tooth,hand for hand,foot for foot,burning for burning,wound for wound,stripe for stripe,and claw for claw.」

ペネトレーターは放射球を空中で次々と破壊。

次いでビルベアスに向かうも、ビルベアスは去っていった。


 町のいたるところで人々が倒れている

 家に入る悠子・・

 健二とリカが名子と風子を庇うように倒れている・・

「父さん母さん」


「悠子」後方から声が・・

「崇さん」振り向く悠子。

悠子に抱きつく崇。

「ちょ・・崇さん」

放射球が転がってくる・・

悠子を押し倒す崇。

「崇さん?」

悠子を抱きしめる崇・・

「ちょっ・・崇さん」

「・・悠子」

「んっ?」

「おまえ小さいな」

「何言ってるのこんな時に」

放射球から光があふれ出し崇と悠子に降り注ぐ。

悠子を覆い光を一身に浴びる崇・・

「崇さん・・死んじゃうよ!」

「良かったよ、お前を包み込めて、あの光は人体を通さない・・人体にとどまって、生命活動を極端に低下させるが・・死にはしない」

「崇さん」

崇に降り注ぐ光の帯・・


 別の場所では天童と秋美が倒れていた・・



 その頃ビルベアスはアンの森に現れていた・・

アンの森に爆雷が降り注ぐ・・


 悠子、崇の下から這い出し・・

「崇さん崇さん返事して・・返事してよ・・」

声を大きくするも崇は答えない。

「返事して・・でないとあなたが嫌がる事言うわよ」

崇を揺さぶる

「クレア・・」

返答なし・・

「クレア・・」

というか全く動かない・・

「怒りなさいよ」

さらに揺さぶる・・

「怒りなさいよ」

全く反応無し・・

「・・お願い怒ってよ」

泣き叫ぶ悠子

「嫌だよ崇さん」



 アニーが来るが無事放射球から助かったのは悠子と風子のみ。

名子はリカが・・風子は健二が庇っていた、その体格差で風子は放射球の光の洗礼を免れたのだ・・

その他の家族や知人はすべて被害に・・

それだけじゃなく近くの数ヶ所の町が壊滅状態だった・・

ただ幸いにも地下にまで爆雷は届かずアンナたちは無事だった。


 アンヌの探索でビルベアスを南極で発見・・

悲しみに沈む悠子を見ながら・・

「アンナ、アンヌ、悠子さんをお願い・・」

アニーが光に包まれ消える。

アンナが呟く「悠子さんの心の時限爆弾のタイマーは確実に早まった・・」

 南極に実体化するアニー。

軽いブリザードが吹いている・・


その向こうに立ち上る雲?

「いえ湯気?」


(氷下の温度が上昇してる・・)

身構えるアニー。


氷を溶かし宇宙戦艦ビルベアスが上昇する・・

全長224mの双胴の艦体が光る。


立ち込める湯気・・

アニーの視界(サイトセンサー)が遮られる!

湯気の中から細かいビームが何本もアニーに照射!

アニーも4連装ビームキャノンで対応!


続いてミサイルを射つビルベアス。

(動きを読まれる)

【やつはこちらの行動を予測してるそれにアン式独特のマルチラジオを僅かだが感知】

U1(ユーイチ)さん、どう言う事、予測型まさかアルテミス」

【アルテミスは完全に壊れたはずだ】

「でも・・」

【いずれにしろコンピューターのお前では予測しやすい俺の指示で動け】

「U1さん」

【人間のアバウトさが好都合だ】


(なかなか攻撃が当たらない)

『予測と外れてる』船内の影が苛立つように言う。


ビルベアスの攻撃を避けて4連装ハンドキャノンを射つアニー。


『さすが4連装(クワドラプル)のアニー』

外部スピーカーからハスキーな声が・・

「あの声は・・まさか」

ビルベアスの左右二つずつある胴体前方の砲門が光り4条のビームがアニーを直撃!


『やったか』

しかし上空にアニーが4連プラズマ砲衛星と共に実体化・・

ビルベアスに4連のプラズマビームが襲いかかる!


衝撃を受けるビルベアスだが戦体が少し傷ついたのみ。

『此ならどうた!MMTを受けてみろ』


「MMT?」

ビルベアスの双胴の間のブリッジ上部の2つの砲身が上を向く。

それぞれの砲身のシャッターが開きタキオン粒子のきらめきが収束、次いでそこから目映いばかりの光が・・

【しまった!主砲はこっちだったか】

アニーがU1の声を聞いた時はプラズマ砲衛星ごとアニーの身体は光に包まれた。

自身の物質分解光でなく高出力の破壊光線に!

MMTマイクロムーンサンダーでアニー散る・・


 第2章 決戦・・太平洋上 (Moon Thunder)

  第1節 孤立

(皆んな意識不明)ベッドで眠り続ける家族、知人を見つめる悠子。

(そのうえアニーまで)崇のベッドで足が止まる・・

(崇さん・・あたしたち成り行きで結婚しちゃったけど上手くやってきたわよね・・・)

悲しみに沈む悠子・・更に視線は名子に・・


「一旦旧ガイアの楊貴妃に移動しましょう、彼方の方が安全です」と言うアンヌ。

「スタンバイOKフランドールです」アンナがコックピットに座るEFAの戦闘ヘリ・・フランドールがアイドリングしていた。

「また・・心の時限爆弾のタイマーが早まった」操縦桿を引きながらアンナが言う・・


 第2節 フランドール

 太平洋上を飛ぶフランドール。


「ええいこのカトンボが」群がるEFAの戦闘機の中を移動するビルベアス。


スピードを上げ振り切る。


フランドールの前にビルベアスが雲の中から出現・・

「何っ!」操縦桿を切るアンナ「レーダーに反応しない」

「私も感知出来なかった」アンヌも言う。



「極局地的に高いN線・・大当たりだな」

船内の人影が呟く。


間髪入れずビルベアスの攻撃がフランドールを襲う。

フランドールに激しい衝撃!


フランドール内部にコバルトブルーに黄色い縁取りの服・・手首には黄色いサポーターの赤褐色の髪の少女が実体化。

「留奈!・・まさかっ・・いえ違う」風子を抱き叫ぶ悠子。

そこにいたのは数年前の親友の姿をした少女・・セレネに改造されアルテミスを産出した当時の留奈

「私はAnn式コンピューターE-4745型・・ANNE(アン)

アルテミスの試作品だった私は長年かけて月のコンピューターにデータを移し戦艦ビルベアスも改造しCPUを搭載、地球に戻ってきた」

「何の為に」

「お前を倒す為」

「どうして」

「どうして?そうプログラムされているからだ」

「もうMISはないのに」

「そんな事は関係無い使命を果たすのみ」


 悪夢は終わってなかった

悠子の首を締めるアン。

飛びかかるアンヌ。

アンが離れて消える。

同時にフランドールに衝撃が!

扉がショックで開く

さらに衝撃!

風子が悠子の手からすり抜け宙を飛ぶ!

悠子の叫び!

悠子には風子がスローモーションのように遠ざかってように感じた・・開いた扉からフランドールの外へ・・

そして海へ・・

落下して行く・・


さらに爆風!

悠子の腕に傷が付く。

そんなことは構わず、叫ぶ悠子!


ムーンサンダー一閃!!


光に包まれたビルベアスは破壊されるも主砲の砲身・・双頭の戦闘機アルディニュームの機首だった・・が間一髪射出される。

「あの戦闘機内にアンのCPUが」とアンヌ。


フランドールを自動操縦にして海に飛び込むアンナ!

アンヌも続く。

しかし二人の懸命の捜索でも風子は見つからなかった・・ただムーンサンダーを受けた荒れ狂う海面だけが何処までも広がっていた・・


 数時間後・・フランドールはアメリカへ到着・・燃料ぎりぎりだった・・

放心状態の悠子・・

「またお会い出来て光栄です、西村佐官」

「・・レンゲちゃん」

「今回副官として佐官付けになりました・・元ガイアの建物、船、車、全て治外法権です、ご安心を」

「法律の通用する相手なら・・ね・・」

「はい?」


「あたし母親失格だ・・あたし脚は駄目だけど・・腕には自信あったのに・・なのに・・」

「小柄とは言え生後8ヶ月の風子さんの体重が約7Kg 幾らフランドールがホバリングしてたとは言えかかる衝撃力は体重の50倍以上・・350Kgの一瞬にかかる衝撃を支えるのは不可能です・・」アンナが言うが・・

「そんな理屈は関係ない!あたしは風子を手放した・・それだけが事実・・せっかく父さん・・母さんが守ってくれた風子なのに・・」


(時限爆弾は何時爆発しても可笑しく無い)考えながらふと悠子の腕の傷を見るアンヌ・・(サイトセンサー)をみはる。

(バリアーが消えている!今までは体温の急上昇や刀に困惑した時に消えたけど・・まさか悠子さん・・死にたいんじゃ)


「崇さんにも何て言ったら・・風子を失ったなんて言えないよ・・・」


 楊貴妃の200階の自室で、一人ぽつんと、歌う、悠子・・

「♪シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ 屋根まで飛んで こわれて消えた 風 風 吹くな シャボン玉 飛ばそ・・

シャボン玉消えた・・飛ばずに消えた・・生まれてすぐに・・こわれ・て・消・・え・・た・・・

風~風~吹くな・・・・シャボン玉・・飛・・・・ば・・・うううううううう・・・・」


陰で見守り唇を噛むレンゲ。

「わたしは・・無力だ」


  第3節 異変

 地球連邦科学班はついに近づいてくる謎の物質を解明した。

それは電磁気生命体、大きさは海王星軌道の約1/20・・

「宇宙というエーテルの海に漂う巨大なクラゲ・・・」

誰ともなく言う・・

「この電磁生命体は宇宙空間のエーテルフィールドがほとんどを占め僅かに自我・・本能か・・を持った電磁波で構成されています」観測員が伝える。

「クラゲは99%水分だが・・まさに、電磁クラゲ」別の観測員が続ける。

「それにしても、こんなに大きい・・」とレンゲ。

「ほぼ火星軌道なみの大きさです・・」アンナが言う。


 電磁気生命体が木星付近に差し掛かる・・先端エリアが覆っただけで木星がエネルギーを得て拡大、発光 第2の太陽となった・・大きさは比べるまでもないが地球からでも1cmぐらいに光って見える・・


 さらに地球にも異常続発 超大型ハリケーンが3つ続いてアメリカ本土上陸・・その名も、バーバラ、チャックそしてダイアナ・・

元ガイアの総本部白亜の双璧がきしむ、丁度クレオパトラの100階の居住区で強風の外を見つめる悠子・・「ダイアナ・・」ぼそりと呟く。

自室への帰路・・

第2空中通路(スペースウェイ)の白亜の壁1メートル位のところに傷があるのが目につく・・


3年前のガイア時代・・

壁にもたれゆっくり杖をあげ・・

「あたしはそんなんじゃないしそんなんになりたくもなかったよ!」杖で壁を叩く・・


「あの時の・・」思い出す悠子。

(あたしがつけた・・)

その時めまいに襲われる悠子、身体もだるい・・

(まさかあたしも)


  第4節 ガイア再び

 地球の異変は続いていた・・

寒冷 干ばつ 猛暑 噴火 吹雪 竜巻 津波 洪水・・地域により全く逆の減少が起こる。

「これは磁気生物とは無関係なようです、何かのエネルギーが地球に作用している」とアンヌ。


 その頃・・悲しみにくれる悠子の前に水の塊が現れた・・盛り上がり、うごめく、ほとんどピンクの水・・

【わたしはテラ-テルス-ガイアⅢ世】頭に声が響いた。

「どうしてそんな姿に」何とか立ち上がる悠子。

(襲われる?)なぜか恐怖はない・・

しかし一定の距離を置いたままのガイア・・

【人間も殆んどは水だ・・わたしはそれを究極まで高めた】

(ピンクは血の色それとも火の赤?)ぼんやり思う悠子。

【ずっとオリジナルの身体を欲していた・・お前の身体を貰う】

「・・こんな身体でいいなら」

「佐官!」

レンゲの銃撃に去るガイア・・


「アメーバの遺伝子が作用しているのかも知れませんね」急に後ろから声が。

「ヘケート・・壊れたんじゃ」振り向く悠子の目にゴルフボール大のグレーの金属球が浮遊しているのが映った。

「あれは私の無数の眼の一つにすぎない」

「ずっと見てたのね・・」

「佐官・・」金属球に銃を構えるレンゲ

「あたしは・・もう・・いえ、しばらく泣かない・・泣いてるうちにみんなが・・地球が・・太陽系が・・危険に・・泣くのは全てが終わってからだ!」

「又会いましょう」爆発する金属球。


 第3章 ファイター・アン (Moon Fighter)

  第1節 シンディとエンディ

 コロラドの町工場で何かの機体を修理する男女・・

シートのかかった大きな塊。


 その時、近くの町並みにアンナたちの姿があった・・


「あの双頭の戦闘機の軌跡とわずかに感知するマルチラジオの周波数から此の近くなのは間違い無い」とアンヌ。


「此の先の工場で何か大きな機械を修理してるって」アンナが情報を仕入れてくる。

「修理?」

「工場の責任者は入院中、残っている従業員・・エンディミオン・シェパードが1ヶ月位前に急に現れたシンシア・フュービーと言う少女と色々な部品を取り寄せ何か修理してる・・」


工場内・・

『シンディこれは』

『私の命』両手首に黄色いサポーターしているスレンダーな長身の赤褐色の髪の少女がハスキーな声で答えた・・


  第2節 アルディニューム

 工場内・・

『後この部品でOKだ』10cmぐらいの棒状の部品を手にエンディミオンが言う。

『ありがとうエンディ』少女が答える。


 その時工場の扉が開く。

 駆けつける蜃気楼。

『貴方、何してるか分かってるの!』アンナがエンディミオンに言う。

『なんでもいい、彼女が望むなら』

『彼女は人間じゃないわ』

アンナに飛びかかるシンシア・・

避けて飛び上がりシートの上に下り立つ。

「間違いないあの戦闘機」


 それを見たエンディミオンは「お前たちこそどうなんだ」と問い詰める。

「私達は・・」アンヌが言いかけた時・・


シートの一部が盛り上がる・・コックピットのキャノピーが上がった・・

乗り込むシンシア

アンナが飛びかかるがキャノピーが閉まる。

コックピット内で計器を操作するシンシア。

シートが外れる・・ゆっくり動きだす紅の翼の双頭の23.8mの戦闘機・・

コックピット両側面にはそれぞれANNEの文字。

吸気口上部にはE-4745の文字。


「間違い無いアン」

『まだ飛び立て無いか・・やはり部品が・・』

 ゆっくり道路を移動4車線の大きな道路ながら車を遮るには十分な機体・・町は大混乱!

 やがて軍隊も出動するが戦闘機に傷一つつけられない。


 アンナたちも外観には取り付けるも内部には入り込めない。

『内部は電波が届かない』

『アンは内部にCPUが有るから』


 その時エンディミオンが駆け寄り『シンディ』と

最後の部品を投げる。

 コックピットから消え外部に実体化するアン・・コバルトブルーの服に変わっている・・まさしくフランドール内に実体化したアン・・

 部品を受け取りメンテナンスハッチを開け部品をセット!

アンナが飛び付いた時にはアンはハッチを閉め消えた。

そしてコックピット内に実体化!

計器確認

『右エンジン作動せず・・片肺飛行か』操縦幹を引くアン!

『行け!アルディニュームっ』

ほとんど滑走もせず飛び立つ双頭の戦闘機・・アルディニューム!

 見送るエンディミオンに警官が手錠をかける。

旋回しそれを見ながら『ありがとう・・そして、さようならエンディ・・エンディミオン・シェパード!』とアン。

飛び立つアルディニューム・・


アンナ達も捕まるが

『さよなら』と言い手錠を残し消える・・


 唖然とする軍人、警官、町の人々・・ただ一人エンディミオンだけが口を真一文字に硬く接ぐんでいた・・

ただ一言・・『シンディ・・シンシア・フュービー・・自分の道を行け』と・・


  第3節 エマージェフ

 その頃ますます地球の異変は拡大していった・・

 台風 地震 津波 洪水 寒波 干ばつ 噴火等が次々に襲う。


 南硫黄島北北東約5キロ北北西に淡緑色の変色水と軽石と見られる茶褐色の噴出物が長さ12キロ、幅5キロにわたって確認・・大規模の海底火山の噴火と思われた。


 インドネシア、東カリマンタン州のスハルトの丘・・石炭層から出る揮発性ガスに引火

割れた地面から炎の上がる地中火が広がる。


日本でも月が三重に見える現象が・・


「空中に浮かぶ無数の氷の結晶が光を屈折させ月を三つに見せているんです」とアンヌ。


火山噴火も各地で起こり、地球が火山灰等の塵に覆われ赤道上空ではうっすらと輪が形成される・・

「大多数の塵は幸い成層圏を越えましたが少しは塵が浮遊してます外出時はマスク眼鏡を忘れずにして下さい」アンナが言う。

 塵の影響で夕焼けは緑に・・月は青く見える。

「塵が青い光を散乱させているのです」アンヌが説明。


モニターに写し出される地球の輪。


「土星みたいに・・ですか?」レンゲが聞く

「そこまでの輪じゃありませんが・・」アンナが答える。

「ますます気温が下がります」アンヌが続ける。


 一方、地球に接近の電磁波生命体は電磁クラゲ(ElectroMagnetic-JellyFish)を略したEMa-JeFからエマージェフと呼ばれた。

(エマージェンシーに似てるのは皮肉かな)と思う悠子。


「地球の異変もエマージェフの接近も月のエネルギーの漏れ増大のせいと思われます」係員が説明。

「月のエネルギーで地球が異変に見舞われ、あの巨大クラゲも月のエネルギーに引かれて・・」

「月を小ざかしい知恵で弄んだ罪なの・・」悠子が呟く。


さらに太陽の活動が活発化

「フレアの活発化、デリンジャー現象・・全てエマージェフの影響と思われます」

「木星の輝きも増してます」

「不幸中の幸いは火山活動の塵で下がった気温が太陽の活発化で気温が上昇・・ぎりぎりのところですが何とか気温維持につながってます」

係員が次々説明。

「位置関係はエマージェフ&木星、太陽、地球ですね・・このまま行けばまず太陽がエマージェフのエリアに入りそれから地球が・・エマージェフが地球にどんな影響を与えるか・・地球は木星や太陽とは異なりますからまだ分かりませんが・・」

「しかし太陽の活動がこれ以上活発化すればエマージェフ到着以前に地球は太陽に呑み込まれます!」


 そうしてるうちに太陽の活発化に巻き込まれた準惑星バルカン(高炉星)は発見から1年弱で消滅した。

「地球の未来か?」誰かが呟く・・

「異変の回避方法は?」

「月からのエネルギーは月の表面から地球に降り注いでいます・・ので月を反転させエネルギーを地球から遠ざける」

「どうやって?」

「ペネトレーターに月反転のプログラムを施し月に戻します」


「しかしエマーフジェフまで回避可能なのか?地球から外にエネルギーが向くだけで太陽系の外に向かうわけじゃない」

次々と科学班の意見が飛ぶ。

「でも・・やるしかないんだね」悠子が呟く。

「ペネトレーターを呼んで下さい」と係官が・・

「分かりました・・Eye for eye,tooth for tooth,hand for hand,foot for foot,burning for burning,wound for wound,stripe for stripe,and light for light.」

飛来したペネトレーターを科学班に預ける。


 科学省からの帰路、悠子の前に妖精が現れる。

今度は逃げない・・しかし体調がすぐれないい悠子は追いかけられない・・

が妖精の方から近づいてくる。

『時は来た・・あなたに新たな能力を生む・・最後の鍵を・・』

妖精の緑の濡れた髪・・(アオミドロ?)そんな感じだった。


『月の世界に行きなさい』

『月?』

『第3の極の・・』

『第3の極?』

『北極、南極に次ぐ第3の極です・・そこであなたを待っているものが・・』

『誰?』

『・・知ってました?キツネノマゴの花言葉は可憐美の極致・・女性の美しさの極致・・この上なくあなたは愛らしく可愛い・・』

『ん?』

『究極の美人って所ですかね』

『そんな・・と言うかレナードに頼んだのは・・あなた?』

『わたしじゃない・・第3の極で待っているものです』


飛び立つ妖精


 しばらく後、突然発生した竜巻に巻き込まれ妖精が行方不明となった事を悠子は知る。


  第4節 第3の極

 ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に挟まれた山間に広がるラダック地方・・

デリーから飛行機で北上する事1時間少し・・

レーの町に下り立つ・・

「呼吸が・・」呟く悠子。

「標高3500m以上です・・空気も薄い」付き添ったアンナが言う。

「ここから西へ約120Km離れたラマユル村の近くに月の世界と呼ばれる所があります・・」アンヌも説明。


 整備されて無い道。タクシーでも4時間はかかる・・


「行く」・・

黒いカゲロウのようなトンボのような羽・・悠子の背にG-ウイング簡易形出現。

徐々に浮かび上がり、ゆっくり飛行・・・・アンナたちが小さくなっていく。


インダス川が眼下に・・

(新たな能力とはこの事?飛ぶことに専念した・・でも慎重に・・制御できないと谷底に墜落する・・)


シャドー・フェアリー 飛翔・・

静かに、しかし何者も寄せ付けず・・孤高なる影の妖精・・翔ぶ・・・


 ラマユル村の手前で山に沿って上昇・・急に黄色い岩肌が出現・・(ここが月の世界・・)

岩の大地が続く・・


さらに・・


(誰?)・・頭に言葉が飛び込んで来る・・しかし前回のガイアとはニュアンスが違う。


(東南に?)

【少し東よりに】

マリーのナビシステムをチェック・・エベレスト?・・・しかも1000Km以上ある・・「それでも行く・・」自らを励ますように呟く

G-ウイングが酸素を引き寄せ、冷気を遮断しているも、長時間では酸素不足、低気温がこたえる・・

でも・・必死に飛ぶ。


(約500Km・・東京~大阪間ぐらいか・・しかしまだ半分にも・・)

マリーの情報チェック

【こっちよ後70Km】

また声が

(エベレストまで650Km以上あるはず)

【私はエベレストには居ない、エベレストのような人が訪れるところは好まない・・

ここなら登頂許可の下りない信仰の山だ・・しかもこの世界樹でますます人は遠ざかった・・】


(そういえばこの数年で急成長した巨木があり世界樹と騒がれたニュースがあった・・)


マリーナビチェック・・

(カイラス山・・行程のほぼ中央の山だ・・)



 カイラス山に下り立つ・・

第3の極ヒマラヤで待っていたもの・・


それは・・


ヘケート・・紫のヘケート・・

「あなたが」


カイラス山、中腹に天まで届くような世界樹が

世界樹は一本の幹でなくいくつもの幹に分かれ絡まりあい天空に伸びていた・・

葉は細い針葉樹なのにツツジに似た紫の花が沢山咲いている。

【ヘケートは1つじゃない・・】

頭に声が響く。


【エンジェルもデビルもマーメイドもフェアリーも・・ヘケートの一つ・・そればかりじゃない・・ペネトレーターストラトス・・いやMISのアルテミスやセレネさえもヘケートの一つ・・

今その全てを伝えよう】

赤い蜃気楼と青い魔女・・月の超科学から生まれた機械と生命・・それ(赤と青)が融合し生まれた紫・・

根源はMISから・・いやその前からあったのだ・・



ヘケートはΑ(アルファ)からΩ(オメガ)まで存在


ヘカテプロジェクトα(アルファ)=ヘケートΑ(アルファ)⇒アンナ複製計画(リアンナ計画)

ヘカテプロジェクトβ(ベータ)=ヘケートΒ(ベータ)⇒改造型ターミナルパペット(アルテミス計画)

ヘカテプロジェクトγ(ガンマ)=ヘケートΓ(ガンマ)⇒サイボーグ兵士(セレネ計画)

ヘカテプロジェクトδ(デルタ)=ヘケートΔ(デルタ)⇒監視球ピーピング グローブ

ヘカテプロジェクトε(イプシロン)=ヘケートΕ(イプシロン)⇒月の科学研究(超科学力)

ヘカテプロジェクトζ(ゼータ)=ヘケートΖ(ゼータ)⇒統一国家計画(ガイア帝国)

ヘカテプロジェクトη(イータ)=ヘケートΗ(イータ)⇒サブリミナル(静かなる侵略)

ヘカテプロジェクトθ(シータ)=Θ(シータ)⇒ムーンレーザー他(月の兵器研究)

ヘカテプロジェクトι(イオタ)=ヘケートΙ(イオタ)⇒ムーンサンダー(究極兵器分析)

ヘカテプロジェクトκ(カッパ)=ヘケートΚ(カッパ)⇒ペネトレーターストラトス(地球と月の科学の融合)

ヘカテプロジェクトλ(ラムダ)=ヘケートΛ(ラムダ)ヒトゲノム計画(悠子の力解析)

ヘカテプロジェクトμ(ミュー)=ヘケートΜ(ミュー)⇒クローン技術完成

ヘカテプロジェクトν(ニュー)=ヘケートΝ(ニュー)⇒胎児遺伝子操作テラ・テルス・ガイア

ヘカテプロジェクトξ(クサイ)=ヘケートΞ(クサイ)⇒合体(エンジェル=人+翼)

ヘカテプロジェクトο(オミクロン)=ヘケートΟ(オミクロン)⇒変質(マーメイド=肢を鰭に)

ヘカテプロジェクトπ(パイ)=ヘケートΠ(パイ)⇒キメラ(フェアリー=珪藻+人+羽)

ヘカテプロジェクトρ(ロー)=ヘケートΡ(ロー)⇒進化加速(デビル=蝙蝠を進化)

ヘカテプロジェクトσ(シグマ)=ヘケートΣ(シグマ)機械化(L)

ヘカテプロジェクトτ(タウ)=ヘケートΤ(タウ)高機能医療(延命)

ヘカテプロジェクトυ(コプシロン)=ヘケートΥ(コプシロン)⇒ゾウガメ・アイルランドガイ(長寿)

ヘカテプロジェクトφ(ファイ)=ヘケートΦ(ファイ)⇒クマムシ(不死身)

ヘカテプロジェクトχ(カイ)=ヘケートХ(カイ)⇒ベニクラゲ(不老、若返り)

ヘカテプロジェクトψ(プサイ)=ヘケートΨ(プサイ)⇒アメーバ・プラナリア(ある意味不死)

ヘカテプロジェクトω(オメガ)=ヘケートΩ(オメガ)⇒樹木(超長寿・不死?)


【そう最後のヘケートが私・・ヘケートΩ(オメガ)】


ゾウガメが寿命200年・・最も長寿な動物アイルランドガイは400年・・


クマムシは

極度の乾燥・・

151℃~ほぼ絶対零度・・

真空~75000気圧・・

高線量の放射線(X線の致死量が57万レントゲン・・ちなみにヒトは500レントゲン)・・

に耐える・・


ベニクラゲのポリプ期への退行(若返り)。


アメーバも次々細胞が増殖すればいつまでもその個体の死を確認出来ない。


プラナリアも幹細胞でクロ-ンを作り、ある意味寿命が無い。


樹木も病気や事故が無い限り寿命が無い・・と言う説もある・・違っても間違いなく長寿・・千年単位で生きてる・

樹齢10000年近いトウヒも見つかってる。


終盤のヘケートはそういうものを参考にしたり取り込み長寿、不死、不死身を研究していた・・


【管理の不備からエンジェルやマーメイド達は脱出・・私も此処まで種子を風に乗せ移動して来た】

「ヘケートはあたしの周りに絶えずあったのね」


【わざわざ来てもらったのはそれだけじゃない・・此れを見せたかった】


【上がっておいで悠子・・50m程上だ】


G-ウイングで上昇・・


そこに・・


「留奈」

世界樹の絡まる幹の中に紫の花に囲まれカプセルに入った留奈が眠っている・・

【クローン技術で再生した、オリジナルの脳も別にだが保存してある、何時か身体に移植出来ればダイアナは蘇る・・月の再生技術のように脳ごと記憶人格魂まで再生出来ないのでね】

「どうして・・あなたが?」

【長年の付き合いだ・・それに彼女もヘケートΓ(ガンマ)だ、是位は・・ね・・】

「留奈・・」

【是でTime bomb of Mindは解除だ】

「えっ?」

【知らなかったのなら良い・・其れより花にはレンゲツツジの様に毒が有る・・ただし毒素は本来の数百倍・・気を付けろ】

「毒?」

【結構毒を持つヘケートは多い・・エンジェルも有毒鳥ピトフーイの羽・・フェアリーも蜉蝣の翅に薄っすらだが毒蛾の鱗粉・・マーメイドもゴンズイやミノカサゴの様に鰭の棘に毒・・デビルは体内にウイルスを保菌】

「どうして?」

【身を守る為だ・・大丈夫、敵意の無い者には何もしない】

「そうかあの声は・・」

悠子はあのノイズ交じりの声を思い出した

「私は#☆に・・レ・・ンゲ・・○▲※には・・気をつけろ×◎が・・・」

「私はヒマラヤにいる、ただしレンゲツツジには気をつけろ毒が・・・」


「あれはレンゲツツジの毒のこと、だったんだ・・」


悠子の脳裏に留奈が入院していた病院の石碑にあった竹中郁氏の詩が思い出された・・


 木々は枝を広げています

 やさしい影をつくっています

 ここへ立ち寄る人々は しずかなこころになるのです

 しずかなこころの人だけが

 この木の下へ入れます


 第4章 月の伝説 (Moon Bow)

  第1節 終焉

 地球各地に末期的災害が相次いでいた

更なる火山の噴火巨大な雹がふり

地震もや津波も頻回におこる


日本でもオーロラが見られた・・

旭川では冬でもないのに最低気温-41.0度を更新・・

地球全体が悲鳴をあげていた



 そんな中ついにペネトレーターの改造が完了した。


「悠子さんお願いします」

「Eye for eye,tooth for tooth,hand for hand,foot for foot,burning for burning,wound for wound,stripe for stripe,

and cosmos for cosmos」アンナの指示にペネトレーターを呼ぶ悠子。

「何?宇宙には宇宙?」聞くレンゲ。

「きっと・・宇宙には秩序を・・ですよ」アンナが言う。


 研究室からペネトレーターがゆっくり飛んでくる。

そして悠子の手に。

「いままでありがとう・・あなたもヘケートだったのね・・」

上段に構え、上空に向かって投げる。

 徐々にスピードをあげるペネトレーター・・やがて見えなくなる・・

「月到着まで5日です」とアンナ。

「これで・・」アンヌも続ける。

「んっ・・」頷く悠子。

「佐官!」レンゲも感慨深げ。

「後する事はただ一つ」

言葉を吐き出す悠子。



 ますます体調が悪化する悠子だが病気をおし出向く・・

そこへブラックミッションが到着した。

「アン・サリバン・・・もう一度奇跡を・・・」レンゲに支えられ悠子が呟く。

「アンヌ、アルディニュームの通信周波数分かる?」

「前にアルディニュームに取り付いた時分析しました」

「連絡を・・とって」


  第2節 対峙

ブラックベレーのバリアブルコート(戦闘モード)でブラックミッションに乗り込む悠子。

 車椅子のシートに座る

「また車椅子のお世話になるかもね」

「佐官わたしも行きます」とレンゲ。

「これはあたしに関わること・・あたしがけりをつけたいの」

「でも」

「きっと帰ってくる・・だからレンゲちゃん・・あたしは副官とは言いません、だからレンゲちゃんも悠子って言って」

「でも」

「お願い」

「佐・・悠子さん・・必ず帰ってきて下さい」

「もちろん」

ウインクする悠子。


ブラックミッション・・アン・サリバンの旧ガイア独特の近空間投影ランプが赤、青、黄の直径5mmの光球を次々と数個ずつ上10cmの空間に投影・・1.5秒で消えるが前の光が消える前に次々投影されヒュンヒュンとかん高いサイレン音を響かせ走りだす。



 小雨が降りだす。

波動ワイパーが自動で可動する。

その中を進むアン・サリバン。



人気のない山の裾野・・

映像投影型光学迷彩(車外)を起動し車外に出る。

アン・サリバンから降りる悠子。

車体はほとんど背後の風景を映し出しカメレオンのように景色に熔け込み良く見ないと車のあることさえわからない、もちろんステルス機能も働かせてはいるが、ターミナルパペットであるアンに効くとは思えない(気休めか・・でもなんとか歩けるか・・頑張ってよ・・あたしの足・・)

マリーを見る・・サーモメモリチェック・・

(気温3度・・まだ下降中・・)


(昼間は50度近かったのに・・ますます寒暖差が激しくなる・・月が反転しエマージェフが去るだけで本当に地球は回復するんだろうか)ふと不安がよぎる。


雨が止み雲間からのぞく満月によって現れた淡い虹・・ムーンボゥが輝く・・

見た者に幸福が訪れるというムーンボゥ・・しかし、今は・・


赤褐色の髪コバルトブルーに黄色いラインの服のスレンダーな人影が近づく・・


「私よ留奈よ」

「留奈はここにはいない、

遠いところで眠っている」

「留奈よ・・留奈の身体よ・・」

近づくアン!

「違う!今の留奈はもっと成長してる」

「あたしに触らないで」

「あたしに触らないで」

「あたしに触らないで」


「あたしに触るな!」


レーザーがアンを貫く・・

消えるアン。


アン、アルディニュームコックピットに実体化。


アルディニュームのレーザー砲門・・ミサイル砲門が開く・・

アン・サリバンに乗り込む悠子。

爆振が響く!

「耐えて!アン」

アンのボンネットからミサイルランチャーが迫り出し

発射

アルディニュームをかすめるミサイル!


上空を通過するアルディニューム。

一度旋回し再び迫るアン式コンヒューターの鬼子である、アルディニュームのアン

迎え撃つ悠子を乗せたブラックミッション アン・サリバン。

複数のアンが交錯する


爆雷を投下するアルディニューム

「耐えて・・アン・・耐えるのよ!・・」

祈る悠子

車内の光学迷彩を切る・・まるで生身のまま爆心にいるような光景は耐えられない。

悠子には長時間の爆発に思われたが実際は1分にも満たなかった・・

ようやくおさまる

運転席は無事だったがアン自体が動かない。


いつの間にか小雨はやんでいた・・

そっとアンを降りる悠子。

とたんに上空からアルディニューム出現!

機関砲を発射!

悠子の近くに炸裂!


細かい破片が悠子を襲い擦り傷が・・

(バリアーが無い)驚愕する悠子。

さらに執拗なアルディニュームの攻撃!

月が雲に隠れ闇が覆う

(バリアーがなくて戦闘機に立ち向かえないよペネトレーターもないし・・)


物陰に隠れ身を小さくする悠子・・(風子の処へ行くのか・・それもいいかも・・

いえそれは駄目)


「風子・・何時かそっちへ行ったら謝るから、いくらでも謝るから、だから・・今は呼ばないで」


  第3節 パーフェクトウイング

悠子の背に黒い白鳥の翼が出現・・それに黒い蜻蛉の羽が重なり・・融合・・蝶の翅の形に・・黒い揚羽蝶のように変わった・・

形は揚羽蝶の翅だが構成してるのは一枚一枚の鳥の羽根・・

暗闇の中なのに、羽根の一つ一つまで、

尾状突起まではっきり見える

これがG-ウィング完全形・・


接近時の記憶をプレイバックするアン

(鱗粉のように光の粒子が周りを囲んではいるも如何してこんなにはっきりと・・・)

『そうか漆黒の闇というが漆黒は光沢のある黒・・・光を反射してる・・』


真の闇の前では暗がりすら光って見える

その闇の光に照らされ黒き揚羽蝶が舞う・・


ダーク・スワローテール 乱舞・・

漆黒の闇すら光輝く・・闇の揚羽蝶が・・夜に抱かれて舞う・・・


悠子の髪に僅かな光の干渉で浮かぶ青、緑、紫、赤、黄・・と玉虫色の輝きが映える


悠子の眼が翠に・・


『空と海が混ざり海に変わる時全ては消滅する!ってか・・させるか!』

アルディニュームを悠子にとるアン。


しかし途中で異変

上に落ちる?

反転するアルディニューム!

悠子の周りの重力が反転してる・・


再度アルディニュームで接近。

重力反転区間で背面飛行。

しかし今度は・・

重力が横に!

『くそっ』


G-ウイングを広げ、上昇する悠子。

揚羽の尾状突起が伸びアルディニュームに襲いかかる!

避けるアルディニューム。


羽ばたくG-ウイング

鳥の羽のような塊がアルディニュームに襲かかる!


バランスを崩すアルディニューム。

なんとか脱出し下部からジェットを出しホバリング。

「お終いだ悠子!MMTで決着をつける」外部スピーカーから声が・・

「MMT?」

「マイクロムーンサンダー・・アニーも是で止めを刺した」

「アニーを」

「如何する・・お姫様・・ムーンレーザーではアルディニュームの装甲は破れない・・しかしムーンサンダーを使えば近くの町まで2Km弱・・最低出力でも被害は免れない・・しかもMMTと呼応すれば爆発力は相乗的だ半径10Km以上は壊滅するだろう・・オキシジェンスピア、ムーンマジックでもこの数秒で如何こう出来る物でも無い・・如何する」


悠子、地上に降り立つ・・


「終わりだ!」

アルディニュームの双頭の機首の発射口シャッターが開きタキオン粒子のきらめきが収束・・

悠子へ向かって突進するアルディニューム!

右手人差し指を立て腕を挙げる悠子「ムーン・・」

腕を後ろに引く「レーザー・・・」

「無駄だ」アンの声が響く。

その声には動じず引いた手を一気に前へやる悠子、アルディニュームの方を指差し叫ぶ「アタック!!」

数十のムーン・レーザーがシャワーのようにアルディニュームに降り注ぐ!

あちこち破損するアルディニューム。

収束しかけていたタキオン粒子が飛散する。

『何っ!レーザー対応装甲のはずっっ!』制御不能、コクピットにも火花!

コクピット後方のE型コンピューターも小さくだが2.3度爆発・・

ふっ・・と笑うアン・・

『終わるのは私の方か?・・・・・バイ・・子持ちの・・月宮殿の・・お姫様・・・』

完全に制御不能に陥ったアルディニュームは悠子の前方で大きく右に弧をえがき向こうの山腹に向かう

そして激突寸前四散して散った。


G-ウイング消え、地面に倒れる悠子。


夢をみた・・いや、夢ではなかったかも知れない・・

ガイアが語りかけてくる・・

【私は小さな人間になるのはやめた・・もっと大きなものに・・】

 

  第4節 新世界

 ペネトレーターの月到着から3日・・ペネトレーターからの信号を受けた月がゆっくり反転しはじめた。


さらに2日後、磁気生命体進路にぶれが・・


「エマージェフ去ります!」係員の声に湧き上がる歓声。


 静かに空を見つめる悠子。

「悠子さん」

レンゲが話しかける。

「さようならエマージェフ・・・あたしの知る限り一番大きな生物・・・」悠子も呟く。


 さらに数日後

海がピンクに染まっていく・・どんどん拡大し、やがて地球の海全てがピンク色に染まるのに一日とかからなかった・・

(ガイアが地球と一体化している)そう感じる悠子。


 その中を人魚がはねた、人魚に助けられた妖精と悪魔の姿もある。

悠子の知らない大洋の上での事だが・・


「もし、みんな目覚めたらびっくりするね・・」呟く悠子。

 景色が変わった・・

どんよりくすんだようなグレーの空に、小さくだが昼間も輝く木星・・

地球の輪・・

少し大きくなった太陽・・

緑の夕焼け・・・・

そして月はあれ以来裏面のみを青く見せている・・


さらに海はガイアのピンクに・・・


「もうあたしの眼は空の色でも珊瑚礁の海の色でもなくなっちゃった・・」

「なんです?」

「んっ・・何でもない・・」

アンナの問いに答え左頬の傷瘢を触る悠子。


(あたしに出来る事は・・全て終わったのかな?)


「風子・・」

(する事がないと・・どうしても思いだす・・)


「・・少し寝る・・」

「悠子さん・・」

アンナの声を聞きながら眼を閉じる悠子・・

(次の7月20日はまだ先だ・・・)

いままで読んで下さった方ありがとうございました・・後少し(外伝除く)で終了です・・

次回 エピローグ風子・・・です・・・

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