第9話 異常者は帰宅部
今月分です。
こっちやる余裕が全然ない。
学校に到着した俺達は席に着く。
教室はかなり騒がしい。
周囲を眺めると既にいくつかのグループに分かれているようだ。
その中でも大きくて目立つグループが二つ。
どちらも一人の人物を中心に形成されたグループらしい。
片方のグループの中心人物は委員長男。
もう片方のグループの中心人物は委員長女。
名前は覚えてない。
俺の記憶力は良い方だが興味ないことはわざわざ記憶しない。
記憶力が良いからこそ、いらないことを覚えておくのは脳のリソースの無駄だからな。
「騒がしい。さっさと帰りたいわね」
「そうだな」
俺も玲奈も基本的に家から出たがらないひきこもり体質だ。
俺も玲奈も外にいるという事実、周りに人がいるという事実が苦痛なタイプの人間だ。
勿論玲奈の一華さんは例外だが。
「何か暇をつぶせるもの持ってきてなかったかしら?」
「今日は持ってきてないわね。しょうがないし適当にスマホでWEB小説でも読みましょ」
「そうするか」
俺と玲奈はポケットからスマホを取り出して起動し、WEB小説アプリを開く。
俺と玲奈は結構なオタクだ。
暇な時はアニメを見たり、ラノベを読んだりする。
ちなみに俺も玲奈も電子書籍は使わない。
金に困っているわけでもないのだが、なんとなく本を読むなら紙で読みたいのだ。
それにサイトが終わったり、スマホが壊れたりすれば二度と読み返せなくなるかもだし。
その点WEB小説は良い。
物によっては実際に売られている者とほとんど変わらない物が投稿されていたりするし、書籍化はしていなくても面白い小説がたくさんある。
それに数が多い。
当たりはずれの振れ幅は結構大きいが、その点を数の多さでカバーできる。
まぁそういうわけで俺も玲奈も暇なときはWEB小説を読むことが多い。
ゲームもスマホに入ってはいるが、大抵ハマったアニメのソシャゲとかだし。
そういうのは悲しいことに割と早くサ終してしまう。
そんなことを考えながら俺はお気に入りしてあるリストの未読話を呼んでいく。
ちなみにこのリストの内容は玲奈と全く同じだ。
俺と玲奈は幼い頃からずっと一緒だったため感性がほぼ同じだ。
それは好きなジャンルなどにも当てはまる。
俺が面白いと思う小説は玲奈も面白いと思うし、玲奈が面白いと思う小説は俺も面白いと思う。
なのでお気に入りに入れる場合は大抵相手に話すため結果的にリストが同じになるのだ。
「ねぇ、零。これ面白いわ」
「うん、なんて奴だ?」
「「無感情執事と無感情令嬢のVTuber生活」って奴。VTber物なんだけど、VRMMOの要素もあって大衆受けはしないけど私達は面白いと思うわ」
「OK呼んでみる」
俺は玲奈に勧められたものを読む。
キーンコーンカーンコーン
ちょうど最新話まで追いついた時にチャイムが鳴った。
皆が席に着き、俺と玲奈はスマホをポケットにしまう。
「はーい。皆おはよー。今日も授業はありませーん。今日は部活動紹介をして終わりでーす」
「部活か」
「面倒ね」
「零君も玲奈も、もうちょっと興味持とうよ。この学校、結構部活に力入れてるんだよ」
「「興味ない」」
「まぁ、二人ならそういうよねぇ。まっ、力を入れてるって言っても私は、そしてこの学校は生徒の自主性を重視してるから入りたくなければ入らなくてもいいと思うよ。まぁ青春の一ページにはなるだろうし、何かに熱中できるのなんて学生の内なんだからやっておいて損はないと私は思うよ。それじゃあ、行こうか。今日は上級生には普段通り部活してもらってるからそれを見ていくよー。部活のリスト配布するから回していってー」
一華さんがプリントを配布していく。
俺の手元に来たプリントを眺める。
数が尋常じゃない。
サッカー部、バスケ部、テニス部、野球部、卓球部、陸上部、水泳部、吹奏楽部、筝曲部、美術部、科学部、茶道部、華道部などなど。
ざっと100以上あるだろう。
「この学校、在校生多いから部活多いんだよねぇ。正直私としては管理が面倒」
「理事長がそれ言っていいんですかー」
「いいんでーす。それじゃ、部活動見学にレッツゴー」
俺達は教室から出て、移動する。
まずは運動場からだ。
運動場はものすごく広く、いくつかに仕切られている。
基本的にその仕切り一つ分につき一つの運動部が使っている。
周りには他クラスの一年生もいた。
恐らく部活動見学はまとめてやるのだろう。
「さーて、しばらく運動部を見学してきてねー。終わりの時間になったら放送を流すから一回教室に戻ってきて」
そう言って一華さんは校舎に帰ってしまった。
周りの生徒達は一斉に移動していく。
「玲奈。どうする?」
「別に運動に興味はないし。適当にベンチに座って休んでましょ」
「そうだな」
ということで俺達は校舎に近くに設置されている屋根の付いた休憩所のようなところにあるベンチに座る。
「ここいいわね。いい感じにサボれそう」
「そうだな。また来よう」
そうして俺達はスマホを取り出す。
俺と玲奈は全く同じソシャゲを開く。
最近ハマったアニメのソシャゲだ。
課金なんかは全くしてないが、そこそこ続けているので結構強い。
ちなみにフレンドは玲奈だけだ。
俺と玲奈は適当にログインボーナスを消化する。
それが終わり次第他にやっているゲームを開いてはログインボーナスやルーティーンをこなしていく。
さすがに俺達も人目のあるところでイチャイチャするほど公序良俗から反してはいない。
まぁしたくなったらするが。
《部活見学中の生徒は自分の教室に戻ってください》
「戻るか」
「えぇ」
教室に戻ったら、教室には一華さんしかいなかった。
「おっ、二人とも早い」
「校舎近くのベンチでゲームしてたから」
「イチャイチャしてたんじゃなくて?」
「してないです」「そういうのは家でするから」
「はは、そっか。それで運動部はどうだった?ゲームしてたっていっても多少は見てたでしょ」
この人は普段適当な感じの、気の抜けるような口調だが。
間違いなく若くして大企業の社長を務める天才だ。
その観察力、洞察力、人の行動を読むプロファイリング能力は人とは思えないものがある。
まぁ、玲奈の母親だから玲奈の行動が分かるというのもあるかもだが。
「それもそっか。まっそうだよねぇ。二人は部活なんて、するわけないよねぇ」
「あら、まだ文化部があるでしょ」
「ないよ。二人が興味を示すような部活なんてない」
一華さんは無表情ではっきりと口にする。
この人は本当に読めない。
いつも明るい癖に、たまに恐怖を感じる。
俺達への予言めいた言葉、しかもそれらは全て当たる。
俺も玲奈も大抵のことは理解できる。
できてしまう。
だから興味を失う。
だが、俺も玲奈もこの人だけは理解できない。
でもきっとそんな人だからこそ玲奈の母親、俺の義母を務められるのだと俺はそう思う。
「まっ、適当に見るだけ見たら?この学校。面白い子もいるし」
一華さんはそう言って笑う。
それは普段のあっけらかんとした笑いじゃなくて、大企業の社長の黒い笑いだ。
「まっ、母さんがそう言うならそうするわ」
「玲奈」
「何?」
「学校、楽しい?」
「まだ三日目よ。分からないわ」
「そっか。零君は?」
「同じく」
「そっか」
そうして会話は終わり、俺と玲奈は席に着く。
そしてすぐに皆が教室に戻ってきて、今度は部活塔に移動し先ほどと同じように見学するよう指示された。
今回は俺達も歩いて適当に見ていく。
大抵の部活は体験入部のようなこともできるみたいだ。
そうえいば、先ほどの運動部の見学でも一年生が上級生と試合していた。
俺と玲奈はただただひたすらに部活塔を歩いて文化部の活動を見ていく。
どれも興味は惹かれなかった。
勧誘なんかもされたが無視した。
そして結局俺達はただ見るだけで部活見学の時間は終わった。
教室に戻ったあと、入部届となる紙が配布された。
掛け持ちする場合は担任に言えば貰えるらしい。
あと、部活に所属しない場合もちゃんと帰宅部と書いて提出しないといけないらしい。
俺と玲奈は即効で帰宅部と書いて一華さんに提出したのだった。
作中に出てきたWEB小説は架空の物ですが、実は作者が何となく思い浮かべていて書きたいと思っている物だったりします。
代表作を一区切りにしてこっちに本腰入れたらのろのろと書き始めるかもしれません。(なお、絶対ではないうえ多分やるにしても数か月後)
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作者別作品:転生したら平和に暮らそうと思っていたのに最強の能力を手に入れてしまった! ~転生した少年がチート能力で完全無双~
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