第6話 異常者の放課後デート ショッピング編
投稿遅れてすみません。
机の上にいつのまにか置かれていた紙にはこう書いてあった。
【神崎零様、神宮慈玲奈様。私の連れがお二人をご不快にさせてしまったこと、私がお二人を異常者という蔑称で呼んでしまったこと、深くお詫び申し上げます。私、綾崎香澄は一華様に仕える神宮慈家のメイドでございます。一華様から、学園内でのお二人をサポートするように仰せつかっております。雑事から荒事、何でもおっしゃってください】
「なぁ、玲奈。綾崎がいつ机の上に紙を置いたか気づいたか?」
「まったく気づかなかったわ。うちにこんなに優秀なメイドがいるとは知らなかったわ」
「まぁいい。用が出来れば使うとしよう」
そうして俺達は残っていた飲み物を飲んでカフェを出た。
「次はどこに行く?」
「とりあえず歩きましょ」
「それもそうだな」
俺と玲奈はまた歩き出す。
「おっ、ちょっと寄っていくか」
「そうね」
俺達の目に入った店、それは。
「いらっしゃいませ。零様、玲奈様。本日はどのような物件をお探しですか?」
不動産屋だ。
不動産屋は俺達のデートの鉄板だ。
そのため、ここは常連と言える。
なので、店員も俺達が何者か知っており明らかに学生である俺たちにもしっかりと接客してくれるのだ。
「デートでよったのだけれど、そうねぇ。一軒家でそこそこの広さがある家。駅とかからは遠くていいわ。治安は最優先。でも人通りがあまり多すぎる場所は嫌ね。お金に糸目はつけないから探して頂戴」
「承知しました」
そう言って店員はパソコンを操作して、玲奈の言った条件に合う物件を探し始めた。
この不動産屋の会社は全国各地に手を伸ばしている。この会社の社長はやり手で、最近は海外進出を画策しているらしい。
ちなみに一華さんに恩があるらしくたまに土産を持って一華さんの家に来ていたため顔見知りだ。
昔はよく、普通ではない額のお小遣いを俺達に渡していた。
今も会ったらお小遣いをくれる。
俺達としては親戚のおじちゃんと言った感覚だったりする。
昔から良くしてくれているので、物件を買うときは大抵この会社の不動産屋で買うようにしている。
「零、ここでの買い物終わったら帰りましょ。私、少し疲れたわ」
「そうだな、学校帰りだし今日はこのくらいにして帰るとしよう」
「それに」
「それに?」
俺がそう言うと玲奈は妖艶に笑った。
「零への、お仕置きもしなきゃだしね」
玲奈の言葉に俺は目を見開く。
そうだった。
俺は急に帰りたくなくなった。
だが、この状況で帰るのを引き延ばすのなんて不可能だ。
俺が何をしようと、言質を取られている時点で玲奈はこの物件の買い物が終わったら俺を強引に家に帰らせるだろう。
詰んだ。
迂闊だった。
完全に忘れていた。
そして玲奈の今の表情、お仕置きはかなりきついものとなるだろう。
「お待たせいたしました。3件ほど条件に合う物件を見つけました」
俺が顔を引きつらせていると、店員がそう話しかけてきた。
「どこ?」
「北海道、岡山県、広島県です」
「そう、なら買うわ」
「ではここにサインを」
店員が契約書とペンを取り出して、玲奈に渡す。
「分かったわ」
玲奈はペンで契約書に必要事項を記入していった。
慣れたことなのですぐに終わった。
俺達はよくこの店を使っているので必要事項を記入するだけでいい。
「これでこれらの物件は3件とも全て玲奈様の物です。他にも買われていきますか?」
「私はいいわ。零は?」
「俺もいい」
「じゃあ今日はもういいわ。また来るわ」
「はい、またのご利用をお待ちしております」
そう言って店員は頭を下げた。
そうして俺達は不動産屋を出るのだった。
不動産屋を出た瞬間、玲奈は俺を逃がすまいと自分の腕で俺の腕をがっちりとホールドしてきた。
これでは抜け出せない。
実を言うと単純な力で言うと俺よりも玲奈の方が強い。
俺も普通の高い方なのだが、玲奈が高すぎるのだ。
まぁ逃げる気なんてないが。
俺は結局、玲奈にがっちりとホールドされた状態で家まで歩くのだった。
「お帰りなさいませ。零様、玲奈様」
家の前に帰ってきた俺達の目に入ったのは見覚えのある人物だった。
ついさっきカフェで見たばかりの人物。
綾崎香澄がメイド服を着て俺達の家の前に立っていた。
「綾崎、何故お前がここにいる?」
「私は本日付けで零様と玲奈様にお仕えするように一華様に命じられています。当初は学園内でのサポートだけの予定だったのですが、本日のお二方の行動から学園外でも面倒ごとが考えられるため、学園外でのサポートも、つい先ほど、一華様より命じられたのです」
「そうか、だが不要だ」
「帰っていいわよ。私からお母さんに伝えておくわ。勿論貴女の肩身が狭くなるようなことはしない」
「そういうわけにもいきません。一華様から断れてもサポートしろと命じられております。ご安心ください。お二方の愛の巣である家にご命令なく入るような真似はしません。一華様よりお二方の家の隣の物件を私に与えられておりますので。家での雑事など面倒になれば、ご命令とあらばすぐに片づけましょう。家事という点だけなら、恐れながら私の方がお二方よりも速く出来ますので」
綾崎はそう言い切った。
それには強い意志を感じる。
「これは無理ね」
「一華さんがそこまで言っているのなら、まぁいいだろう。それに俺達を不快にさせるような行動はしないようだしな」
「勿論にございます」
「とりあえず、今日は部屋に戻れ。お前の電話番号を教えろ。連絡先もだ」
「承知いたしました」
「待って」
俺が綾崎の電話番号と連絡先を聞こうとしたら玲奈から待ったが入った。
「どうしたんだ?」
「零のスマホに私以外の連絡先を入れるなんて嫌」
玲奈がそう顔をしかめながら言った。
そういえばそうだった。
玲奈は俺のスマホに玲奈以外の連絡先を入れるのを嫌うのだった。
久しく連絡先を追加しようなんて思う機会がなかったから忘れていた。
「そうか。なら玲奈、お前のスマホにお前が綾崎の電話番号と連絡先を入れておいてくれ」
「分かった。綾崎、いいかしら?」
「勿論にございます」
そうして玲奈と綾崎は連絡先を交換した。
「それじゃあ、今日は帰って頂戴。用が出来れば連絡するわ」
「承知しました」
そう言って綾崎は俺達の家の隣の家に入っていった。
「それじゃ、私達も家に入りましょうか」
「あぁ、分かった」
俺はポケットに入れておいた鍵を取り出して家の扉を開ける。
そうして俺達は家の中に入った。
俺と玲奈は靴を脱ぐ。
次の瞬間、玲奈は俺に腕を掴んですぐに寝室にひっぱっていった。
そして俺を強引に寝室に押し込んだ。
そのまま勢いで俺はベッドに倒れる。
「捕まえた」
俺達のベッドには柵がある。
その柵には左右に一つずつ手錠がつけられていた。
玲奈は俺の両腕をその手錠で拘束した。
「それじゃあ、私は道具を取ってくる」
そう言って玲奈は寝室を出ていった。
ちなみにこの手錠は本物だ。
知り合いの警察官から貰ったものだ。
勿論本来していいことではないが、その警察官は普通の警察官じゃないので問題はない。
鍵はベッドから離れた棚に入っている。
どう頑張っても取れない位置に保管しているのだ。
当たり前だが手錠を無理矢理壊すことも不可能だ。
さすがの俺達でも金属を壊すことは出来ない。
しかもこの手錠、長さが短いため今の俺は両腕を左右に伸ばしている状態だ。
手で何かを掴むことが出来ないようになっている。
俺も玲奈もピッキングが出来る。
余裕がなくなった時、ピッキング用の針金があれば手錠を外すことが出来てしまう。
それはお互いありえることだ。
俺も玲奈も色々と恨まれている。
そのため誘拐なども十分あり得る。
そういった緊急時に備えて衣服に針金などいくつかの物を忍ばせている。
まぁようするに余裕がなくなったときに衣服に忍ばせている針金で手錠を外せないようにするための処置だ。
「ふふ、零。お待たせ」
すると、色々なものを持ってきた玲奈が不敵な笑みを浮かべて寝室に入ってきた。
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作者別作品:転生したら平和に暮らそうと思っていたのに最強の能力を手に入れてしまった! ~転生した少年がチート能力で完全無双~
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上記作品番外編
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