表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/64

最強と最凶 ~死生有命~


 「 嘘だろ…… 」


 その乱れた白銀の髪に――。


 歴戦の魔法兵達は戸惑いをみせていた。

 

 「 ……一体、何が……起きた…… 」


 老紳士の威風な冒険者服は、無残にも襤褸切れとなる。

 押さえた右肩。その傷口から止め処なく、流れる――夥しい量の血。


 濁った水溜りの中で膝を折る……隻腕となった ゲイリー・バトラー 。

 

 それは、寸秒前には想像もつかなかった――姿。


 想像を絶する苦痛に、歪ませる表情。

 ――虚ろな瞳、必死の形相でその姿を見据えていた。


 醜悪な異形。辛うじて人の形を留める肉体……。

 狂うように笑う、剥き出しの人面。


 その肉塊が不気味に蠢く――化物。

 

 その光景に……誰一人として理解が追いつかなかった。


 先程までの両者の壮絶な攻防。その中で…… ゲイリー は、確かに……この化物をあと一歩のところまで追い込んでいた。


 しかし……()()()()()()……。


 ()()()()()()()()()()……。


 ()()()()()()()()


 どこまでも底の見えない闇が洞窟内を覆っていく。


 逃げることも出来ず、ただ呆然と立ち尽くす――魔法兵達。

 

 瞬間――血の混じる老紳士の口元が緩む……。

 

 慄く、周囲を……丸呑みにして、 ゲイリー は……。


 ―― ()()()()()()()()()()()() ――。


 「 ……そう、ですか…… 」


 それは苦痛と歓喜、そして……増悪を吐き出すように。

 

 「 ……貴方が……『 ()() 』でしたか…… 」


 そう、呟くのであった――。

 

 「 ――――――――――!!!? 」

 

 ―― 『 神徒 』 ――。

 

 その言葉に イザベル の表情は、驚愕 と恐怖に歪む。


( ……あれが…………!!!? )


 聴き覚えがある……。それは魔法師団の兵役時に、先生(ゲイリー)の口から幾度も聞いた言葉であった。


 その正体は霞のように消えては現れる……現実味のないもののように イザベル は感じていた。


 けれども ――。


 イザベル が捉えるその姿は。

 

 剝き出しの肉塊が細胞分裂を起こし、傷口を修復していく。


 何度、致命傷を負わせても……死なない体。


 まさしく――真の化物。

 

 半信半疑であったものが……。


 今こうして、形となって現れ――。


 ――師を追い詰め。


 そして……今、その命を奪おうとしていた――。


 ( ――不味い……!!!? )


 冷たくなった雫が全身から滲み出る。


 先生(ゲイリー)の傷、それは明らかに致命傷――。

 この化物と違い、失った四肢は二度と生えてはこない……。


 酸素を求めて水中を彷徨うような……息苦しさに身悶える。


( しっかりしろ……イザベル・フィッツロイ!! )


 ――そう、自問自答する イザベル 。

 両者の壮絶な死闘。その残像がまだ……脳裏の片隅にこびりついていた。


( ……私はもう……その一線を踏み越えた…… )


 奥歯を噛み占め……眼に光を灯す。

 過去との決別。それが 彼女の思考を一歩先へと進ませる。

 

 ひどくゆっくり打つ心臓の中、……周囲を見渡す――状況把握。


 ( 魔法師達は、恐怖で足が竦んでしまっている…… )

 

 小さな鞄 < 異空間収納鞄 > へと手を伸ばす。


 ( お嬢様(アウレ) と 蓮花 は、満身創痍。最早……戦える体ではない…… )


 つまり、動けるのは私だけ――。

 

 片手五指に挟み、投げ入れる魔石に――。


 せめて、私が――。

 

 微かに震える声の詠唱。


 「 ――我、問う魔導の理を万象にて現し、障壁なり我を護れ 疑似防御壁(オボローナ)―― 四重(シュトリミス)復唱(ホウフトーレデ)―― 」


 『 霊糸 』を飛ばし、魔石が光り出す。


 しかし……。


 「 ――――なっ――――!!!? 」


 その瞬間の様子を イザベル の掛ける眼鏡(魔具) <  術視鏡(メイナスエンド) > が、捉えていた。


 ――それは、展開される『 術式 』。


 それが……。


 ()()()()()()()()()()……。

 

 ―― ()()()()() ――。

 

( ――なんで……!!!? )


 ――駆け巡らせる思案。

 泳がせる視界……瞬間――足元を覆う、()()()『 ()()() 』がその眼鏡に映り込む……。


 ( これは……一体……!!!? )


 ……先刻もそうだった。この『 方円陣 』が広がった瞬間、先生の 固有魔術 『 天罰斬糸(ネメセウス) 』の熱光線が消滅していたように視えた……。


 ――もし、その可能があるとすれば……()()() ”()()” ()()()()


 ――いや、発動中の『 術式 』 の ”消去” は四大不変機構。

 そんな魔術など、不可能に近い……。


 またしても イザベル の脳裏によぎる『 神徒 』という言葉。


 人の領域を超えた、神に近いの存在……。

 それが……この化物の正体だとすれば……。


 ( こんなの……どうすれば…… )


 頼みの『 魔導 』を塞がれ、イザベル は成す術を無くしていた。

 

 

 

 


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 


 

 

 ( ……くそっ…………くそっ……糞がぁぁぁあ”あ”ああ…… )

 

 何度も立ち上がろうとする アウレ の小さな身体。

 全身の傷は今もなお、疼き、身体の力を奪ったままであった。


 ( …………俺は……またそうやって何もできず…… )

 

 その悔しさに拳を地面に叩きつける。


 ( ……這いつくばっているだけなのか!!!!!!!! )

 

 そう、碧い瞳を必死に巡らす視線の先……。

 

 膝を屈する ゲイリー・バトラー 。

 

 その彼へと忍び寄る不気味な影。


 その紅い瞳が光芒一閃、揺れ動く。

 

 無数に切り刻まれた身体の傷が、細胞分裂を繰り返し、再生と修復を続け出していた。


 その様子に アウレ は眉を顰めた――。


 ……()()()()……。


 ()()()()()()()()()()()()……。


 碧い眼 < 魔成眼(ルミナスサイト) > が映し出す――その化物の内部。

 

 異常な『 魔力 』の流れ……。

 

 ―― その集結点、青白い発光体 『 ()() 』――。


 以前は……夥しいほどの数だった……。


 ――()()()()()()()()()()()()()()()


 それは、明らかな兆候。

 

 ――そうか、これは……。


 胸からこみ上げる血の味。

 

 動け――。


 折れた肋骨が肺に刺さっている可能性がある……だが……。


 動け――。

 

 ――それがどうした……そんな言い訳にならねぇ……!!!!


 何度もよろめき、また膝をつく アウレ 。


 瞬間――その身体を イザベル が支えた。

 

 「 ……お嬢様!!!?……その身体では無理です…… 」


 気遣い、心配する声をかける。


 ( ――この身体では、もう……剣すらも上手く握れねぇ……。……だが………… )

 

 しかし、アウレはそれを振り払い――。

 

 

 「 ……まだ、終わっってねぇぇええ”え”え――!!!!!! 」


 

 振り絞る、叫び声――。

 

 「 「 ――――――――!!!? 」 」


 その咆哮に一同の視線は金髪の少女へと注がれる。

 

 「 ――俺らは!!! 何をしに、ここにいる!!!! 」


 少女の擦れた声が響き渡る――。

 

「 ――わかっているのか!!!! 今、動かないと……じじい(ゲイリー)はここで死ぬ!!!!! 」

 

 灯す――火種。


 「 誰でもいい――!!!!! 」


 腹の底から沸き上がり、延焼していく……。


 「 ――あと、()()だぁぁぁあ”あ”ああ!!!! 」


 強く、激しく……連鎖する感情。


 「 ……動けぇぇぇええ”え”えええええ――!!!!! 」

 

 血の滲む口元から零れ出す――檄……。


 それは……。

 

( ……わしらは……馬鹿か…… )


 歴戦の魔法師を震わせた……。


 「 ……嬢ちゃん……の言うとおりじゃ…… 」


 灯す瞳に――、翻す漆黒のローブ(魔法師団)服。


 「 ――動ける者は詠唱を開始しろ!!!!! 」


 重々しく声が共鳴し、その背中を燃えるような金色の大炎の刺繡が靡く。


 「 ――なにも考えるな!!!!! 」

 

 顔に刻まれた深い皺と無数の傷。

 歴戦の猛者であること、と共にその覚悟を示す――。


 「 ――ありったけの全魔力を注ぎ込め!!!!! 」


 熱を帯び始める場内。それが伝播していく……。

 

「 「 「 ―― 汝、()()()()()()()()()()()()()()()…… 」 」 」


 呼応する兵達は、競うように詠唱を始める。


「 「 「 ……()()()()() ()()()()()()()穿()() |猛炎槍≪フレイルーン≫ ―― 」 」 」


 瞬間―― イザベル が目を見開く。


 ( ――不味い……!!!!! )


 ……()()()()()()()()()()()()()()()


 ――背筋を奔る戦慄。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()『 ()() 』()()()()()()()――。


 『 ()() 』、『 ()() 』()()()……()()()()()()()()()()()()――。


 ()()()()()()……。

 

 「 待ってください!!!!! 『 術式 』は無効化され……――――――!!!? 」


 その瞬間 イザベルの眼鏡 <  術視鏡(メイナスエンド) >に映り込む、光景。

 

 それは……。

 

 次々と魔法兵達の掌に浮かび上がる――()()()()()


 ( ――嘘っ……!!!? ()()……()()()()()()()……!!!? )

 

 刹那――剥き出しの肉塊がその動きを止め……。


 咄嗟に展開する透明な天蓋 『 魔法防御壁(ヴォーグ) 』 。


 ()()()()に……。


 ( ……やはり……そういうこと……でしたか…… )


 混濁する意識の中の ゲイリー は……()()()()()()()()()()()


 『 魔法 』はその血と肉に、刻み込む『 術式 』の因子魔術。

 この魔術世界(まやかし)の輪の中で 第二代 魔法皇王 アルベスタ・セルタニア が()()()()()()()()()()()――()()()である。


 ―― ()()『 ()() 』は、()()()()()()()()()()() ――。


 展開される火魔法の閃光。


 ―― 恐れるな ――。


 無数の灯が連なり、仄暗い洞窟内を煌々と照らす。

 

 ―― 燃やし尽くせ ――。

 

 烈火の如く撃ち込まれる――集中攻撃。

 弾着弾の音が鳴り響き、洞窟内を揺らし……。


 ―― 奴らの腹の中で存分に暴れてやろうぞ ―― 。


 憤怒のように揺らめく焔が絶え間なく、『 魔法防御壁(ヴォーグ) 』の外壁を焼き尽くす。

 

 その轟音の中を……。


 「 ―― 汝、血の契約を伝ひて不変の楔となり魔を滅ぼす 蒼炎の槍なりて敵を穿て |蒼炎槍≪ブレイルーン≫ ―― 」

 

 ―― 重く響く、低い声色。

 

 激しく燃え盛る――蒼炎の槍。


 それは 元 |火源≪サラマンダー≫ 魔法師団 副団長。


 『 特級 』 魔術師 ゴルドエ・ベルトライン だけが使える 固有魔法 であった。


 筋骨隆々から放たれる、その槍は、大小様々な火魔法と重なり一つの大炎となる。

 

 舞い上げる火の粉が流転し、地獄の様相を見せていた。


 しかし……天蓋の中で、不気味に佇む――剥き出しの化物。


 「 これでも……駄目か…… 」


 ゴルドエは灼熱の熱波に、ぬぐい切れないほどの汗を滲ませていた。


 「 ――いや!!!あと、()()だ!!!!! 」


 アウレ の碧い眼が、断ち切るようにその留意性を示す。

 

 ピシッと音を立てる天蓋――小さな亀裂。


 それは……その絶対防御が、崩壊する予兆であった。


 その碧い眼 < 魔成眼(ルミナスサイト) > に映り込む、青白い靄――魔力。


 その集結点、発光体の『 ()() 』()()()()()()()()()()


 ( ……やはり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()() )

 それは決して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()――。

 

 「 ――撃て!――撃て! 叩きこめぇぇええ”え”えええ!!!!! 」

 

 凶器と化す熱風の中 ゴルドエ が声を張り上げる。

 蜷局を巻く火柱が大蛇の舌を見せ、猛烈に立ち騰っていた。

 

 ( ゲイリー 殿の見解どおり……()()()()()()()()『 ()() 』()()()()()()()()()()……。それは、絶えず攻撃を浴びせる限り、『 魔法防御壁(ヴォーグ) 』以外の行動はとれない、ということ…… )

 

 つまり、ここが――正念場。


 この砲撃が切れた瞬間――わしらの完全敗北となる。


 『 魔力水 』は、もう全て使い切ってしまった……。

 よって……魔力の補充は見込めない……。


 それは……。


 兵達の残りの魔力が尽きるのが先か――。


 それとも、この化物の魔力が尽きるのが先か――。

 

 最早、これは……()()()()()()()()()()。その火花を散らす――()()()


 「 ――気張れぇええ”え”えええ!!!!! 」


 「 ――あと、七つ!!!!! 」


 刹那――その透明な天蓋は破れる。


 ……被弾する――化物……。


 だが……その姿が突然――消失する。


 「 ――――――――――!!!? 」


 ―― ()()()()() ――。


 標的を失う魔法兵達は、視線を泳がせる……。


「 ――左側、四二度!!!!! 壁面です!!!!! 」


 ()()()() ()()()() ()()()()()()()()()――。


 姿を現し……壁に張り付く――凶暴な肉塊。


 伸ばす触手の表面。無数の魔獣の口から奇怪な声を発し……。


 魔法兵達の『 火炎防御陣形(ファランクス) 』へと襲い掛かる。

 

 放たれる目にも留まらぬ触手の斬撃――。

 

 前衛の構える大盾を喰らい――貫通。

 

 ―― 阿鼻叫喚の嵐 ――。

 

 兵達の上半身もろとも吹き飛ばしていく。


 「 ――……構わな、撃ち込めぇええ”え”え!!!! 」


 仲間の血飛沫と肉片が烈しく飛び散る中を。


 無我夢中で撃ち込む――火魔法。


 洞窟内の壁から壁へと高速の立体機動の回避を見せる――化物。

 

 無数の砲撃が飛び交い、その照準を捉え……気迫と物量で撃ち落とす。

 

 堪らず展開した『 魔法防御壁(ヴォーグ) 』。


 その上から更に叩き込む、集中砲火が――。


 化物を釘付けさせ……再び、天蓋の中へと封じ込めることに成功していた。

 

 しかし……。


 全隊を指揮する ゴルドエ の額に伝う雫――。


 このままでは――。


 ――まだ、届かない……。


 「 危ういのう…… 」

 

 ――そう、が呟いた……。

 

 瞬間――老紳士の震える左手が挙がる。


 指で弾き、放物線を描く――()()()()()()……。


 ―― ”()()” の <  特異魔石(レリック)  > ――。



 『 ……正直に言って半信半疑だ…… ゲイリー 殿 …… 』

 


 それは……在りし日の 元 火源(サラマンダー) 魔法師団 団長 アルトバラン・メルバトス の言葉。


 『 この『 禁咒 』の魔法 『 黒陽臨界 (ラドフメシア) 』は、確かに強力な魔法……だが、使用するには膨大な魔力が必要となる。全盛期のわしでも一日一発が限界だった……。それを四発も……本当に、それ程の事になるのか……? 』


 眩い、閃光――が、醜悪な姿、事象を照らし出す……。

 

( どうやら……この『 輪廻呪印(ダエグルーン) 』も……改竄できなかったようですね…… )

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その瞬間、ゲイリー は、凶悪に口角を吊り上げた。



 「 ―― 深き淵 隔絶し異なる界へと繋げ、開封(アニグマ)――。 」



 天蓋の上空にゆっくりと回転する、紅き球体。赤く滾る――疑似太陽。

 

 その表面が湧き立つ度に熱波が押し寄せ、『 魔法防御壁(ヴォーグ) 』を包み込む……。

 

 ―― 天上の業火 ――。


 唸るような轟音が衝突する瞬間――。

 

 ―― 静止 ―― 圧縮 ―― 爆縮 ――。


 ほとばしらせる火口は、輪郭を闇の中に溶かし、黒き珠を顕現させる。

 

 その余波が全ての感覚を奪い、姿、形ある者を……無へと帰す――。


 最上級の危殆指定『 禁咒 』の火炎魔法。

 

 ―― 『 黒陽臨界(ラドフメシア) 』 ――。


 その衝撃は……透明な天蓋をも喰らい、大気に吸収され逆行――嵐が吹き荒れる。


 だが……。


 この世とあの世の地獄の門ような火の壁をくぐって、亡霊のような人影がよろめき出る。


 「 ――くっ――これでも…… 」


 ――驚愕するも……決して、その砲撃の手を緩めない。


 「 ――あと、()()!!!!! 」


 爆音の後の爆音。


 連鎖するように絶え間なく、隙間なく……続く――絨毯爆撃。

 

 広い洞窟内に白煙が立ち込め、着弾の突風が晴らす。……そして、また白煙の中へと包まれる。


 上昇を続ける灼熱の温度、消費する酸素を喰らい尽くす。


 一兵たりとも振り絞ぶる――全魔力。


 汗の雫が滝のように流れ……息苦しさと消耗が、兵達を同時に襲う。

 しかし、細部も緩ませず、必死の形相で詠唱を続け、魔法を展開し続ける。

 

 轟々と音を立てて、燃え盛る炎が際限なく広がっていく。

 その髪の毛一本すら残さず、焼き焦がす――魔法。


 その燎原之火に――天蓋の外殻は赤く熱されていた。

 

 その狭間……。

 

 血を失い過ぎた ゲイリー は……。


 最早、その限界を超えていた。


 突然の吐血――。


 「 ――じじい!!!!!? 」


 混濁する老紳士の意識……。

 そこに走馬燈のように浮かび上がる 魔法皇王 ノーマン・セルタニア の言葉(忠告)


 『 ゲイリーよ……本当にやるのか。これは、お主の娘の命を奪った『 術式 』じゃぞ…… 』


 ()()()() ()()()()()()()()()。三大厄災の一つ 『 ()()() 』。

 この『 術式 』の機能は三つ。魔力の”吸収”、『 術式 』の”増殖”、そして……”供給”である。


 それらの機能を 魔法皇王 ノーマンの右眼 < 魔成眼(ルミナスサイト) >で ”解析”、”再編”。

 更に、それぞれの機能を()()()()()と <  特異魔石(レリック)  >に埋め込み、()()魔力回路(パス)で繋げた。

 

 <  特異魔石(レリック)  > には、魔力を保存する効果がある。

 

 そして……その <  特異魔石(レリック)  > に、()()()()()()()()"()()"()()……魔力回路(パス)を通し……()()()()()()()"()()"()()()


 ()()()『 ()() 』。()()()()()()()() 。


 しかし……これには、()()()()()()()()


 ”()()”の機能。それは、魔法皇王の< 魔成眼(ルミナスサイト) >をもってしても、抑制する程度でしか抑え込めなかった、強力な『 術式 』であった。

 一定の魔力制限を超えると『 術式 』が暴走、勝手に”増殖”し、魔術回路を介して過剰な”供給”を繰り返す。

 結果――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それは。魔力回路(パス)を焼き切り、魔臓をも破壊するほどの魔力が雪崩れ込む――()()であった。

 

 禁忌の呪法 『 輪廻呪印(ダエグルーン) 』


 ( ……()()()()()()()()()()……()()()()()()…… )

 

 刹那―― お嬢様(アウレ) へと送る双眸……。


 ( ……()()()()()……()()()()()()…… )


 瞬きもせず、交わされる碧い眼 < 魔成眼(ルミナスサイト) >。

 

 ……が、その姿を映し出す――。


 無数の黒い痣から発露する青白い閃光。稲妻のように身体の内部を駆け巡り――制御不能の激流葬となって、血管と魔力回路(パス)を焼き尽くす。


 「 ――な――じじい……待て…… 」


 そして……老体の『 ()() 』()()()()()()()()()()()、瞬間――。

 

 再度、その化物へと向けられた左手。震える指で弾く――()()()()()()


 「 ……それ以上は……駄目だ…… 」


 ……吊り上げる口角。

 

 ――『 輪廻呪印(ダエグルーン) 』が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――。


 その最期の命を燃やしきるように……。


 「 ――やめろぉぉおおお”お”おおぉぉおお”お”おお!!!!! 」


 ――無言の怨嗟。


 ……その詠唱(絶叫)

 

 刹那――()()()()()()()()()()()()()


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

 『 魔法防御壁(ヴォーグ) 』を解き……急速的に膨れ上がる肉腫――。

 

 それは()()()()()()()()――。

 

 「 ――させぬわぁぁぁあ”あ”ああ!!!!! 」


 瞬間――ゴルドエ の魔法 |蒼炎槍≪ブレイルーン≫がその肉塊を焼き潰す――。


 そして……。


 ―― 再びの 『 黒陽(ラドフ)臨界(メシア) 』 ――。


 上空にゆっくりと回転する、紅き球体。不規則な回転のズレに黒く染まり滾る。


 ――その疑似太陽が醜悪な化物の姿、形を飲み込み……。


 再び、衝激音 ――。

 

 ―― 爆縮 ――。


 劈く閃光に、身を引き裂く衝撃が伝播する。


 塵が大きく揺れ動き……流転する次の瞬間――。

 

 一瞬の静寂……そして、訪れる暗黒世界――。


 死の灰が舞い散る場内に――。


 ……兵達の荒い息だけが木霊していた。

 

 火魔法の弾幕……その打ち止め……。

 

 全魔力を出し切った魔法兵達は……。


 ――次々とその場に膝をつく。


 ――それは勝敗の執着地であった……。


 しかし……。


 暗闇と白煙に包まれた洞窟内……。


 ゆっくりと気流が対流する。


 「 ……おいおい…… 」


 煤と汗に、まみれた魔法師達がその光景に愕然とする。


 「 ……噓だろ…… 」


 黒い人影がゆらゆらと揺れ……。


 肉は焼き焦げ、蒸気の音を上げる――二足歩行。


 黒く炭化した肉片が崩れ落ちていく。


 剥き出しの肉が泡のように蠢く。


 その姿に……。


 「 ……不死身……の化物…… 」


 魔法兵達の誰かが、そう呟き……。

 

 抗いようのない、その絶望に平伏す――。


 

 その瞬間……。

 


 ――()()()()()()()()()()()()()()

 


 ()()()()()()()()()()()()()()……。


 

 「 ゲイリー 殿……!!!? 」


 

 ――()()()()()()()()()()



 虚ろな瞳……。

 


 刹那―― お嬢様(アウレ) へと……。

 


 ()()()()()――。

 


 ()()()()()()()――。



 ()()――。

 


 ()()()()()……。

 

 

 「 ――な、――――ふっざけんなぁぁあ”あ”ああぁぁぁあ”あ”ああ――!!!!!!!! 」


 

 ()()()()()()()()()()――。



 ――刹那……。

 


 背後から……()()()()()()


 

 「 ――()()()()()…… 」


 

 翻す――漆黒のローブ(魔法師団)服。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 筋骨隆々の全身から溢れる――『 魔力 』が、空間を支配していく。

 

 

 ( ……ここに来る道中の ゲイリー 殿は……確かに言っておった…… )

 


 ――「 ()()……()()()()()()()()()()…… 」――。

 

 

 ようやく……今、その意味が分かった……。

 

 この言葉は……()()()()()()()()()()()


 ……()()()()()()()()()()()()


 ()()()()()……。

 ()()()()()との戦闘の時も……。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 全ては……()()()……。


 ()()()()()()()――。


 ()()()()() ()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ――ならば……今、動かずして、いつ動く……!!!!!

 

 高密度な『 魔力制御 』。そこに忍ばせる――覚悟の火。


 それが……。


 厳烈 に――。


 峻烈 に――。


 燃え上がる―― 熱烈峻厳 。

 

 瞬間――その眼・鼻・口元から噴き出す血。


 ( ここに示せ、魔法師としての教示を―― )


 体中の血液が逆流するほどの憤怒に身を焦がし……無理矢理、こじ開ける臨界点。

 

 ( もう、二度と魔法を使えなくなっても良い―― )


 激しく駆け巡る魔力が――その回路を焼き切り、その血に刻まれた『 術式 』が、紅く煮え滾る。


 ( ……最後の最期まで闘い抜いた漢達への―― )


 ()()()()()――。



 「 ―― ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() 蒼炎の槍なりて敵を穿て |蒼炎槍≪ブレイルーン≫ ―― 」



 老魔法師の掌から灼熱の火柱が上がる。

 

 激しく燃え盛る紅の色が、更に蒼へと変色。細く、長く圧縮――変形していき……。


 ゴルドエ の掌で一本の槍の形となる。


 握り込む柄 を高く掲げ……浮き立つ青筋の剛腕に溜めた腰のひねりを加え、一気に開放。


 振り下ろす――高速の投擲。


 大気を切り裂く、螺旋状の回転――突風。燃焼の推進力を得て……更に加速していく。


 音をも置き去りにする――|蒼炎槍≪ブレイルーン≫は――。


 ()()()()()――()()()()となる。


 硝子細工のように飛び散る破片。


 一直線に天蓋へと突き破り――。


 醜悪な顔、眉間を貫通――串刺しのまま吹き飛ばし……。


 壁に激突――深々と突き刺さる。


 ()()()()()()()()()……()()()()()――()()


 その肉塊を焼き尽す――完全燃焼の炎。


 しかし……。


 その焦熱地獄の中で笑い狂う――醜怪の表情を浮かべていた。


 その不気味さに一同は――戦慄を覚える。


 鮮やかな蒼の炎がいつまでも……揺らめく。


 最後の『 魔臓 』が消滅し、その活動停止する、その最後の最期まで……。


 アウレ・マキシウス は、その姿を……碧い眼に焼き付けるのであった。

 



 


〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::


ご愛読頂き誠にありがとうございます。


この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。


作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。


最終章 クルードセツア迷宮攻略編


この物語のクライマックス 『 最強と最凶 』 の最後でございます。


テーマは 『 この作品の最期 壮絶な介錯 』でした。


また、この回は 最後の最期に少女は何を観るのか?というあらすじの伏線を回収させて頂きました。


正直に申しますと、これが今の限界。

全て出し、書ききった話でした。


力不足は否めませんが残りあと一話。


最後まで妥協ないラストを迎えたいと思います。


この小説を読んで「面白そう」「楽しみ」「!?」と思った方


上のブックマークと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ