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奈落の死闘 ~原初終末~


 魔獣の大海を真っ二つに一刀両断する黒い竜巻。

 その斬撃は、祭壇の上の 悪魔王(アザエル) を飲み込む……。

 

 その瞬間を――。

 

 巨鬼(ベヒモス) と対峙する (リー) 蓮花(リェンファ) が――。


 周囲の魔獣に応戦する イザベル・フィッツロイ が――。


 ――目撃していた。


 沈黙する戦場……その一瞬に イザベル が思案を巡らす。


( ―― お嬢様(アウレ) が…… 狂騎士(バティン) と 悪魔王(アザエル) を倒した!!!!! ―― )


 洞窟内は、指揮官の 悪魔王(アザエル) がいなくなったおかげで……魔獣達が混乱し、その統制が取れなくなる……。今の お嬢様(アウレ) なら……祭壇の横、大扉まで、容易にたどり着くことが出来る。


 ――その好機に イザベル は『 練功術 』その体術で魔獣達の濁流を掻き分け、進軍を開始する。

 

 ……残る問題は、残党の魔獣……約 五百体 と  巨鬼(ベヒモス) 。

 

 ここまでの激戦を経て……私の魔力容量は残り少なくない――。

 頼みの< 魔力水 >も全て使い切ってしまった……。


 おそらくは……もう……たいした援護、砲撃魔術はできないだろう……。


 ――しかし――。

 

 お嬢様(アウレ) が作った祭壇までの一本道。

 このまま、突き進み――祭壇まで、たどり着ければ……勝機は……ある。


 

 この窮地を抜け出せる一筋の光明。


 

 

 「 「 ―― はぁぁあ”ああぁぁあ”あああ――!!!  ――」 」

 

 

 

 ――勇往邁進する――その時……。



 彼女の目に映り込んできたのは……。


 

 ―― お嬢様(アウレ) の異変だった。

 


 ( ……あれ……?……おかしい…… )

 

 

 急に回り出す視界。

 全身の力が抜け落ちていく……。


 

 ( …………ヤバい………… )

 


 一瞬、目の前が真っ暗闇になり……手から滑り落ちる宝剣。


 

 ( ………………なんだ……これ………… )

 

 

 気付くと…… アウレ は前屈み、膝から崩れ落ち――。


 

 「 ――――――!!!?――――お嬢様!!!?―――― 」

 


 地面へと派手に倒れこむ――。

 

 その異変に…… 蓮花 と イザベル の両名はすぐに気づく――。


( ……まさか……この状況で……魔力の底が尽きた……アルか?…… )


 < 魔力欠乏症 >。魔力の著しい減少に伴って、発生する機能不全のことである。

 

 原因は < 魔正眼 > の覚醒。北辰一刀流 『 捨目付 』によって、魔力の流れを単なる視覚だけで見るではなく、実際に視えないところまで可視化することが出来るようになっていた。つまり、『 魔力制御 』の飛躍的な向上……。それに伴って魔力の消費も増大していたことに起因する。

 

 それと……もう一つ――。

 

 狂騎士(バティン) から奪い取った宝剣であった。その虹色の刀身は、高純度の <  特異魔石(レリック)  > で作られていた。

 北辰一刀流 『 星王剣 』 。最高の『間』での――全身全霊。先程の神業のような一撃は、身体中の全魔力を剣へと伝える業である。

 今までの普通の剣では、その出力を全て乗せることが出来ず、自然と、制限する形で発動していた。

 しかし…… この <  特異魔石(レリック)  > は、大量の魔力を保管する機能を有し、更に高出力の魔力にも耐えられる強度を持つ。

 その結果、アウレ の魔力を必要以上に吸い尽くし、その魔力容量はガス欠状態となっていた。

 

 

 ( ――――まずい――――!!!!! )

 


 ―― 倒れ込む、お嬢様(アウレ) を取り囲む 魔獣達 ――。

 

 瞬間―― イザベル は、 お嬢様(アウレ) へ向け、『 霊糸 』を飛ばす――。

 

 ――だが、しかし……。

 

( ――――な、――――!!!? )

 

 ―― その糸は弾け飛ぶように切れ……消滅 ――。


( ――――!!!?……な……私も……魔力が……もう………… )

 

 刹那―― イザベル へと飛び掛かる 小鬼(ウールゴブリン) 。

 

 「 ――――くっ――――――!!! 」

 

 焦る、彼女の不意を突く一撃。

 肩口に槍の鏃が突き刺さる。

 

 襲う激痛――。

 

 四方八方、絶え間ない攻撃に イザベル は必死の形相で躱し続けていた――。


 

 瞬間――眼鏡越しに、映り込む光景……。

 

 

 ……それは今、まさに……。


 

 倒れた お嬢様(アウレ) へと……。


 

 ―― 魔獣達が襲い掛かろうとする様子であった ――。


 

 時が止まるかのように流れる一瞬……。

 

 

 「 「 ―― 嫌ぁああああああああ!お嬢様ぁああ”あ”ぁぁぁ!!! ―― 」 」



 叫ぶ声も虚しく……。

 

 

 イザベル は……それを……只々、視ることしかできなかった――。

 


 無残に衣服を切り裂き……。

 

 

( …………ああ……だめ………… )

 

 

 その柔らかな肉に鋭い爪を突き立てる。

 

 

 ( …………もう………… )

 

 

 蓮花 が お嬢様 の元へ向かおうとしているが――。


 

 間に合わない……。

 


 ( ………………………………瓦解する………… )


 

 ――うねる洞窟内の風穴。それに――逆行する疾風。

 

 

 魔力が無くなった私には…… お嬢様(アウレ) を救う手段は残ってない……。

 


 ――仄暗い中を高速で駆ける――影。

 


 無慈悲に斬り刻まれる少女の体……無抵抗で蹂躙されていく……。

 

 

 ――光刺す一点へと――。

 


 そう――イザベルの瞳が絶望に染まった……。



 ――その瞬間――。


 

「 「 ―― 深き淵 隔絶し異なる界へと繋げ 開封(アニグマ) ―― 」 」

 

 

 艶やかな低い声色の詠唱が洞窟内に響き渡る――。

 

 

 祭壇の横……古扉を切り刻み――。



 勢いよく、打ち破る――。

 

 

 空高く、舞い上がる――威風堂々たる冒険者服。

 

 

 その姿を……。



 彼女(イザベル) は……。



 滲む眼に焼き付けた……。


 

 ( ――――よく……来て下さいました…… )


 

 銀色の白髪と顎髭の老紳士。


 

 ……思わず、感情が込み上げてくる――。


 

 ( ――  先生(ゲイリー・バトラー)……!!! ―― )

 

 

 その片眼鏡<モノクル>越しに覗く、鋭い視線が――。

 

 イザベル・フィッツロイ ――。


 李 蓮花 ――。


 アウレ・マキシウス ――。


 三者の姿を捉える。

 

 ――状況を瞬時に理解し、手を伸ばす、腰につけた小さな鞄 < 異空間収納鞄 >。


 

 そして、両手五指に魔石を挟み、次々に遠投――。


 

 ――それらは イザベル と アウレ 両名の目の前へと正確無比に投げ込まれ……。

 


「 ――我、問う魔導の理を万象にて現し 障壁なり我を護れ 疑似防御壁(オボローナ) 四十重(クワランタ)復唱(ホウフトーレデ) ―― 」



 各処で透明な防壁が展開 ――。

 ――両名を魔獣の魔の手から守護する。


 敵地の、ど真ん中に降り立った老紳士は……詠唱を終えると、すぐさま踵を返し、『 瞬歩 』―― お嬢様(アウレ) の方向へと駆けだす。

 ――迫る狂う魔獣の濁流。その隙間を縫って、稲妻のような進行、速度で駆け抜けていく。


 その合間で……魔獣達の急所を的確に捉え、打ち込む――掌底。

 

 『 練功術 』 絶技 『 発勁 』。

 

 練り上げた (魔力)――『 内功 』を波として伝え、その内部から破壊する『 練功術 』の技。

 その攻撃に……抵抗虚しく、次々と倒れこむ魔獣……。

 

 とても老体とは思えぬ、洗練された高速の近接戦闘で進軍する ゲイリー は……。

 

 あっという間に アウレ の元へと辿り着き、周囲の魔獣達を一蹴、彼女を抱き上げる。

 

 「 ……ご無事ですか、お嬢様。 」


 その頸動脈、胸の呼吸の動きを視て、生存確認……その安堵の声を上げていた。


 「 驚きました……なぜ?貴方がここ(最下層)にいらっしゃるのですか? 」

 

 ゲイリー の腕の中、糸の切れた操り人形のようにぐったりと凭れる少女の姿。


 瞬間――彼女の口元が微かに動く。


 「 …………ざ……ま……みろ………… 」


 その勝ち誇ったような言葉に……老紳士は口元を綻ばせた。


 「 ……安心しました……まだ、それだけ悪態つけるのなら……大丈夫でしょう…… 」


 そう、呟くと――足に魔力を溜め、跳躍――。


 颯爽と魔獣の海を飛び越え……後方の イザベル を護る魔術防壁の上部から侵入……その結界内で着地に成功し、彼女と合流を果たす。

 

 「 ――先生! 」


 「 ……よく、耐えました イザベルさん。……もう、大丈夫です。 」

 

 そう、言うと…… ゲイリー は アウレ を、そっと地面に降した。

 

 老紳士の眸に映る イザベル の姿……全身ボロボロの冒険者服に所々滲む血痕……。

 彼女も深手を負っているが…… お嬢様(アウレ) に比べればまだ、軽傷という様子であった。

 

 「 ……まだ、動けますか? 」


 「 ……はい……ですが……もう、魔力が…… 」


 「 なるほど……では、これを…… 」


 そういうと―― ゲイリー は < 魔力水 >を手渡した。

 それを受け取った彼女はすぐに封を切り、一気に飲み干し……静かに瞑想……身体の状態を確認する。

 暫らくして……眼を開ける彼女は……目くばせし、小さく頷くのだった。

 

 「 大丈夫そうですね。ここからは、私達が引き継ぎますので……イザベルさんは、お嬢様をお願いします…… 」


 「 ……わかりました! 」

 

 その言葉に力強く返事をし、 イザベル は周囲に魔石をばら撒き――詠唱。

 自分と お嬢様(アウレ) を囲う 『 疑似防御壁(オボローナ) 』 を展開させた。


 その様子を確認した ゲイリー は、自らが張った『 疑似防御壁(オボローナ) 』を解除する。


 ……そして、周囲をゆっくりと見渡した。


 「 さてと……話は、あとでゆっくりと聞かせてもらうとして……まずは……後始末が先ですね…… 」


 聞こえてくる無数の獰猛な息遣い……。


 その威嚇をものともせず、一歩、一歩と前進する ゲイリー。

 

 ――漆黒の両手袋の中、手の筋肉 をほぐすように動かす。

 

 すると……その手の甲には十字形の装飾、()()()()()()が煌めき出す。


 フィッツロイ族の秘蔵魔具 『 冠十手套(ディオトレッド) 』。

 

 悠然と魑魅魍魎に立ち向かい、迎い入れる様に両手を広げる老紳士。

 

 光芒一閃を揺れ動く、双眸。その凄みを増していく。

 

 ―― その様子を見守る イザベル の背筋に……戦慄が奔る……。


 その影響に……。


 「 …………あれ……俺は……今…… 」


 「 ――気づかれましたか……!!!? お嬢様(アウレ)! 」

 

 アウレ が目を覚ます。

 朦朧とする意識の中、上体を起こすと……そこには老紳士の後ろ姿が視えていた。


 「 ……あれは……じじい……なのか…… 」


 その毅然した後ろ姿が、蜃気楼のように霞んでいく。

 

 「 そうです、 お嬢様(アウレ) 。 よく見ておいて下さい――あれが、 『 魔導師 』 先生(ゲイリー・バトラー) の魔術です 」

 

 煉られる高濃度の魔力が全身を循環――。


 

 その瞬間――。

 

 

「 ―― 深き淵 隔絶し異なる界へと繋げ、開封(アニグマ) ―― 」

 

 

 それぞれが独立して動くような複雑な動きをする――両手五指の先。

 そこから無数の糸が射出され――戦場を駆け巡る。

 

 瞬間――右手を大きく振り上げ――横薙ぎに払う。

 

 すると……その動きに連動するかのように――。

 バラバラと魔獣達の肉片が舞い落ちていく――。

 

 続いて左手と――。

 

 まるで演奏を指揮するかのよう両手を操る。

 

 降りそそぐ――朱色の雨。

 

 戦場を高速で飛び回る――魔力の糸。

 

 耳を劈く風切り音が反響する。

 

 弛み、撓る――五十本の……斬撃。

 

 それが……向かい来る敵、その全てを切り刻み――無へと帰す。

 

 固有魔術 『 天罰斬糸(ネメセウス) 』。

 

 アウレ はその刹那の様子に……目を見張る。

 

 「 …………すげえ…… 」

 

 思わず漏れ出す――感嘆の声。

 

 悔しくも……桁違い、圧巻の力。

 

 ―― 冷酷無情な暴力 ――。

 

 その前に獰猛な魔獣も為す術なくの吸い込まれていく――。

 

 そして……。


 「 ―― ゲイリー 殿 !!!!!! ―― 」


 重装備の鎧を幾重にも鳴らし、大勢の魔法士がこの階層に入ってくる。

 

 皆一様、漆黒のローブ(魔法師団服)を羽織り、その背に燃えるような金色の大炎の刺繡を施した集団。


 元 火源(サラマンダー)魔法師団 アルトバランの私兵 その数 約三百名。

 

 それは、このダンジョン攻略の精鋭部隊であった。


「 ――何じゃあ……これは…… 」


 到着して開口一番。ゴルドエ が、その驚きの声を挙げる。


 目の前で繰り広げられる光景。


 巨大な魔石が紅光と輝き、仄暗い洞窟内を照らす。

 

 断続的に暗転を繰り返す。


 ざわめく慟哭。


 ―― 犇く魔獣の大群 ――。


 満地に広がる血の海。

 

 ―― 巨神の暴走 ――。

 

( ……ここは……地獄か……!!!?…… )

 

 そう見紛うほどの地獄絵図に ゴルドエ は困惑していた。

 そんな彼に対して、先にその中で交戦する ゲイリー は、すかさず声をかける。

 

「 ―― ゴルドエ 様。奥に重症の生存者が二名、最優先で救助してください。あと、大型魔獣と交戦中の 蓮花 さんに加勢をお願いします。 ―― 」

 

 その声に我を取り戻した ゴルドエ は、すぐ、行動に移す。


「 ――わかった!前衛は突撃態勢!中衛と後衛は援護しつつ防御陣形、拠点を作れ! ルーカス 隊は、わしと化物退治じゃ!ついてこい! 」


 的確な連携の元、 火炎防御陣形(ファランクス) が組まれる。


 前衛には大きな盾を持った魔法士達が 敵の猛攻を阻みつつ陣形を作る。その後方、中衛がその補填、魔法防御壁や砲撃魔法で、支援。その間に後衛が最大火力の魔法砲撃を叩き込んでいた。

 

 結果 あっという間に イザベル達を取り囲む陣形、拠点が完成する。


 その一方、別動隊の ゴルドエ 達。

 その目の前で繰り広げられる光景に……啞然とさせられていた。


「 ……なんですか……この化物は……!!!? 」


 戸惑う ルーカス が尋ねる。

 

 牛角の頭部に鬼の形相……。


 人の五倍はあろうか、というほどの巨体に、奇怪な紫の毛皮……。


 その異形の姿はまさしく……。

 

 ―― 打壊 の巨人 巨鬼(ベヒモス)――。


 ――怒り狂う咆哮。


 一撃必中の棍棒。その斬撃を振るう度、場内に突風を巻き起こる。


 その合間を揺れ動く、濡羽色の黒髪が躍動。

 少女は絶えず、跳躍を繰り返す。


 巨鬼(ベヒモス) が、執拗にその姿を追い……。

 

 身体を翻す 李 蓮花 は……。


 その猛攻を紙一重で躱し続けていた。

 

 巨鬼(ベヒモス)の全身に浮かび上がる、無数の引っ掻き傷。

 それは 蓮花 が『 魔力の爪 』の斬撃で刻み付けたものである。

 

 ゴルドエ 達には……それだけで、これまで両者がおこなってきた激戦の様子が容易に想像できていた。

 

「 「 助太刀するぞー!猛虎――! 」 」


 「 「 ――――――――――――!!!? 」 」


 その声に 蓮花 は目を見開く。


 願ってもない救援……。そう、口元を緩ませた。

 

「 ルーカス! 魔法詠唱! 」

 

 魔法師達はすぐさま、火魔法を 巨鬼(ベヒモス) めがけて放つ。


 各自に直撃する高火力の砲撃。瞬間――巨大な体躯を包む、火柱、硝煙。

 しかし、……その中から姿を現す――無傷の巨体――。

 その猛攻は一向に止まる気配がない。

 

 「 ――構わず撃ち続けろ!!!!!! 」


 その刹那――今度は ゴルドエ も詠唱に加わる。


 翻す――漆黒のローブ(魔法師団服)。その背中を燃えるような金色の大炎の刺繡が靡く。

 その重厚な装備の下、筋骨隆々の全身から溢れる――『魔力』が空間を支配する。

 

 それは目に視えないはずの『 魔力 』。それが高密度に練り上げられていき……。

 

 「―― 汝、血の契約を伝ひて不変の楔となり魔を滅ぼす 蒼炎の槍なりて敵を穿て |蒼炎槍≪ブレイルーン≫ ―― 」

 

 重く響く――低音。

 

 老魔法師の握り込んだ拳を開くと掌から火柱が上がり……。

 

 激しく燃え盛る――蒼い炎の槍。

 大型魔獣へ向け、振りかぶり……放つ。


 灼熱の業火が 巨鬼(ベヒモス)の顔面を直撃――するが……。


 

 「 ――ちっ――これでも駄目か!!!?―― 」

 


 視界を奪われる一瞬……たじろいだ巨体。

 

 ( ――――()()――――()()()()()()()()()――――!!!!!! )

 

 その一瞬の隙に 蓮花 は渾身の魔力を振り絞り――跳躍。

 

 練りあげた魔力を高出力で一時的に濃縮、解放する。


 固有魔術 < 白虎纏鎧 >。


 更に激しさを増す 『白い魔力』は、やがて……雷の属性へと性質変化し……帯電。


 固有魔術 < 白雷迅雷 >。

 

 勢いを増し、急浮上し――その反動をつけ、身体を弓なりにしならせる 蓮花 。

 蒼い炎の中で、その『 魔力の爪 』を振りかざす――。


 瞬間――全身を襲う、激痛――。

 

 脇腹の傷口からドロッとした何か、が噴き出した……。


 ――だが……。

 

 

( それが……どうした!!!? 関係ないアル!!!!!! ここでやらなきゃ……誰が殺るネ!!!!!!!!!! )


 

 蓮花 は()……()()()()()()()()()()()――。


 

 渾身の一撃を……。

 

 

 ―― 巨鬼(ベヒモス)の眼球に叩き込む ――。


 

 ―― 地面を揺らし、轟く断末魔 ――。

 


 「 ――――――――――――!!!? 」


 

 その鋭い『 魔力の爪 』を肩まで深く突き刺し、ねじ込む。

 その傷から噴き出す血飛沫が 蓮花 の顔を――全身を――濡らしていく。

 

 瞬間――その身動きの取れなくなった 蓮花 の体を 巨鬼(ベヒモス) の手が掴む――。


 ――小さな身体を簡単に圧死させる強大な握力に――。

 


 「 「 ――……ぐっ……あ”あ”あああ……ぁぁぁああああ――!!! 」 」

 


 ――小さな少女の骨を砕く鈍い音が響き渡る。

 


 「 ―― 猛虎ぉぉおお”お”おぉぉ――!!!!!!!!!? 」


 

 その光景に ゴルドエ が思わず、叫ぶ――。

 魔法師達と共に火魔法の砲撃を必死に打ち続けるが、……一向に止まらない……。

 

 その瞬間――白い雷光が (リー) 蓮花(リェンファ) の体を包み込み……放電。


 ――その脳髄に直接、流し込む――白い雷撃。


 それは……。

 

 巨鬼(ベヒモス) が 蓮花 を握り潰すのが先か――。


 それとも 蓮花 の雷撃が 巨鬼(ベヒモス)の脳を焼き切るのが先か――。


 

 「 「 「 あ”ああああ”ああぁぁぁぁぁぁあ”あああぁぁぁ――!!! 」 」 」



 ―― 瀬戸際の均衡 ――。


 

 その刹那――。


 

 突如、血飛沫を上げ……巨鬼(ベヒモス) の両腕が切断――。


 「 ――――――!!!? ……何だ――!!!? 」


 ゴルドエ の目を見開き……振り向く先……。


 離れた距離に佇む、老紳士の姿であった。


 その瞬間―― 巨鬼(ベヒモス) の口から湯気が立ち上り……後方へと大きく倒れこみ……。


 それと同時に――力なく落下する 蓮花 。


 「 ――いかん………………!!!? 」


 その小さな身体を ゴルドエ は、地面すれすれで受け止める。


 「 「 しっかり……せい、 猛虎!!!? 」 」


 満身創痍の傷だらけの 蓮花 、その口元が一瞬、綻ぶ……。

 

 「 ―― よう、やったー !!!!!!――」


 その様子に ゴルドエ は最大の賛辞を送り、すぐさま、抱き上げ、 イザベル 達のいる後方の拠点へと退避した。


 走り去る中――。


 魔法士達 約三百名が一糸乱れぬ連携――。


 ゲイリー・バトラー が、固有魔術 『 天罰斬糸(ネメセウス) 』――。


 魔獣の残党を蹂躙……殲滅していく。


 そして……。

 

 兵達が強固に守る安全地帯。その陣地の中で……。


 イザベル・フィッツロイ 。


 「 蓮花ー!!!? ……大丈夫……⁉ 」

 

 (リー) 蓮花(リェンファ) 。


 「 ……問題……アルよ……肋骨と……右腕……折れた……だけ……ネ…… 」

 

 アウレ・マキシウス。


 「 ……おい……重症……だ……ろう……それ…… 」


 開戦以来、離れた戦場で孤独な奮戦をしていた……三人は……ここで久しぶりの再会を果たした。

 

 「 お嬢ー……には……言われたく……ないネ…… 」


 帰ってくる……いつもの喧騒、戯れ……日常の会話中……。

 

 「 ――二人共!重症なんですから、大人しくしてください…… 」


 ……何とかこの地獄から生還することができた……と安堵していた……。


 

 ―― その瞬間、世界は暗転する ――。

 

 

 「 ――――――――――!!!!!!!!? 」

 

 

 一変する洞窟内の空気。


 

 この洞窟内の祭壇付近を……紅く照らす巨大な魔石――。


 

 ――背を向け逆光、浮かび上がる人影。

 

 

 その異常に――誰もが、その思考が停止する。

 

 

 アウレ達の脳裏の片隅の残る、一抹の不安……。



 ―― ()()()()()()()()()()()()()()()() ()() ―― 。


 

 ―― ()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()


 

 

〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::



ご愛読頂き誠にありがとうございます。


この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。


作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。


最終章 クルードセツア迷宮攻略編


長かった、後半戦 『 奈落の死闘 』 終了でございます。


以上、前哨戦の全てが終わり、次話はこの物語のクライマックス 頂上決戦 へと突入していきます。


これまでの全話。全伏線の終着点です。


最後の最期までお楽しみいただければ、幸いです。


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