明かされた策略に問われる覚悟
「 ――なんじゃと! 中継地点が――! 」
全隊の指揮官 ゴルドエ・ベルトライン は思わず、漏れる声を――塞ぐ。
( これは……全員の士気にかかわる…… )
すぐさま、指揮官級の『 魔法師 』を招集し、緊急の会議が行われるのであった。
伝令からの詳しい報告を聞いた ゲイリー・バトラー が開口一番、声を発する。
「 ……それで、……現在の状況は? 」
「 ……それが……冒険者の半数以上が壊滅。行方不明者多数……。襲撃者は消息不明です。なお、事態の収集のため、冒険者ギルド長 グラド・ジャドス 様が中継基地に向かっております。 」
「 中継基地の班長の一人 イザベル・フィッツロイ と、その班はどうなりましたか? 」
「 ……なんと……申しましょうか……そちらも……消息不明……と…… 」
その言葉に ゲイリー の眉が一瞬、動く。
辺りに漂う、重い空気。
補給の要、中継地点の壊滅は、ダンジョン攻略を即――中止する程の緊急事態であった。
「 ……不味いぞ! ゲイリー 殿!このままでは全員無事に帰還することが、叶わなくなるぞ! 」
ゲイリー は、自分の白い髭を摩り、思案を巡らす。
現場の指揮権は ゴルドエ にあるが、全隊の最終決定権は ゲイリー と二分している。
しかし、これはどう考えても退却の一択……。
「 ここは、一度、引き返すべきじゃろう…… 」
そう、促す ゴルドエ 。
これは論を俟たない提言であった……。
……だが、しかし……。
「 ――いえ、続行です。 」
ゲイリー は断固拒否をする。
「 ――な……!?正気か!このままでは全滅もあり得るのじゃぞ――!!!? 」
その返答に熱が帯びる。
ゴルドエ は、この攻略隊、約五百名の『 魔法士 』の命を預かる将である。流石にこの非常識な提案は呑めなかった。
しかし、老紳士の双眸が告げる。
「 ――ええ、元より、この隊は決死隊です。それに……このまま、引き返すことは……この国の即――終わりを意味します…… 」
その奥に、秘める灯は一切の揺るぎない……と。
その言葉に流れ出す、不穏な空気。
「 この御仁は、何を言っているんだ 」と、そんな雰囲気が辺りを包みこんでいた。
「 ――な、決死隊……国が終わる? どうゆうことじゃ……!? 」
「 ゴルドエ 様は……この < セルタニア魔法国 > の状況、……そして……この< |魔獣大行進≪サタンビート≫ > 、更に謎の襲撃者……、何者かの意志を感じませんか……? 」
立場上、迂闊な判断もできない……。ましてや、個人の一意見で決定するなんて、愚策もいいところだ……だが、……。
「 ……意味がわからん⁉…… ゲイリー 殿には心当たりがあるというのか……? 」
この ゲイリー・バトラー という男の発言は無視できないものがある……。
その問いに ゲイリー の口元。
その扉が今、静かに……開かれる。
「 ――ええ…… 」
ゲイリー の瞼が深く、ゆっくりと瞬く。
「 ……これは、…… 」
その一間に ゴルドエ は息を呑む。
「 ―― 私が招いた状況ですので…… ―― 」
「 ――な、――――――!!!? どうゆうことじゃあ――!!!? 」
その耳を疑うような発言に思わず、声が漏れる。
頭が上手く、追いつかない……。
―― 今、この老紳士は、国を脅かす事を行った、と自供したのである ――。
「 この騒動が起きる前……私は…… 」
( ……待て…… ゲイリー 殿は……何を言っておる……? )
「 ……ある者にしか、わからない情報を、とある国に流しました…… 」
( ……ある者?……とある国?…… )
ゴルドエ の思考は深く、沈んでいく。
突如、放り出される情報の海に……溺れさせられていた。
「 ……その直後に……一連の騒動が、ここ、< リセポーセ > で起こった…… 」
脳裏に浮かび上がる、二つの国。
謎の多き、宗教国家 < オドミナル聖教国 > か――。
はたまた、< セルタニア魔法国 >と冷戦状態の軍事国家 < イドロイト皇帝国 > か――。
……ん、……ちょっと、待て……。
< セルタニア魔法国 > 国内の増税も……。
この騒動に連動しておる、じゃと……。
……それは、つまり……。
―― < セルタニア魔法国 > 内に裏切り者がいる ――。
ということになる。
( …… 何ということじゃあ …… )
ゴルドエ の額から溢れ出す、汗の雫が地面に落ちる。
燃えるような金色の大炎の刺繡の漆黒のローブ服。その裾の下で拳を握りしめた。
( この < クルードセツア迷宮 >の攻略が、国の命運を分ける、というのか……!!!!? )
そして、……静かに閉ざす――目。
暗い意識の中、黄金に輝く――両天秤。
片方に、五百名の部下達の命、その死地に追いやる将の責任。
もう一方に、この長年、< セルタニア魔法国 > の師団長の一角を牽引し続けた異才の魔術師の言葉。
それらを秤にかけてから、目を見開く。
視界には攻略隊の指揮官の面々。
ゴルドエ は、部下の顔を一人一人眺めていく……。
道中、リセポーセの冒険者の予想外の活躍。
自ら先陣を執って魅せる ゲイリー・バトラー の雄姿。
それらにとって、彼らの心に灯った火、その士気は消えていなかった。
そして、最後に、片眼鏡 < モノクル >の老紳士を視て、気づく……。
( そうか、この御仁は…… )
心に灯る――火が燃え盛る。
( ワシら試していたのか……? )
刻まれた全身の傷が疼く。
その老紳士の姿に……カタンと秤が傾いた。
思わず、漏れた――息。
「 ゴルドエ 様……? 」
その様子を間近でみていた ルーカス が思わず、心配の声を発する。
そして……、 ゴルドエ は腹を決めるように、――口元を綻ばせる。
「 ふっ……面白い…… ゲイリー 殿は……この隊に、この老体に、その決死の覚悟をみせよ、と言うのかのう……? 」
その熱を、無言で見つめる ゲイリー の眸。
ゴルドエ には、それが無言の肯定に視えていた。
「 ……久々か……いや、それ以上じゃ…………いいじゃろう……! 」
その筋骨隆々の身体から溢れる――灼熱の闘気。
「 不肖! この ゴルドエ・ベルトライン 。我が主 アルトバラン・メルバトス 様の名に恥じぬ、戦いを…… 」
それは、かつて栄光、 火源 魔法師団 副団長 としての自負。
「 ……見せてやるわい…… 」
その覚悟を示す。
その言葉に……老紳士は。
「 ええ……期待しておりますとも…… 」
口角を微かに吊り上げるのであった。
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ご愛読頂き誠にありがとうございます。
この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。
作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。
最終章 クルードセツア迷宮攻略編の開幕 でございます。
この章は作品内の最強のキャラ ゲイリー・バトラー が活躍します。
そんな彼に相応しい、チート級の敵をご用意しました。
次回をお楽しみいただければ、幸いです。
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