羅刹との邂逅 ~死路脱出~
イザベル は、魔石を取り出し――詠唱。再び、集中砲火を浴びせる。
しかし、仮面の男が展開する『 魔法防御壁 』は、相変わらずの高強度。
全弾、透明な天蓋の前に阻まれ、いとも簡単に灰塵と帰す。
繰り返す――同じ……状況。
つまりは、苦し紛れの足止め。手詰まりの……消耗戦である。
( ……このままでは確実に三人共、殺られる…… )
そう、推測する アウレ は、必死に周囲を見渡す。
出入り口は瓦礫の山に埋まり、脱出はもはや、不可能……。
増援は……期待できない。
唯一、この速さに対抗できる 蓮花 は、もう、動けない……。
( ……くそ、こいつ、みたいに、瞬間移動が出来れば…………!!!?……)
そう、気づき……。
――碧眼を泳がせる。
( ……待てよ!?……瞬間移動か……!? )
洞窟内の地面や壁を見渡す。
奔る青白い光線。
それを辿る……。
その中に、淀み、溜まる……一点。
( ――あった!!!! )
空間が歪みだす――残滓。
それに活路を見出す。
これしかないと――。
そして、金色の髪を靡かせ……。
「 ――――――!!!? 」
砲撃の手を緩めず、詠唱する イザベル の前に立ち塞がる。
「 ……なに……を……しているのですか……!? 」
仮面の男 に対峙する碧い双眸、その口火を切る。
「 ――そうじゃねぇ! やるなら――前だ!!!! 」
「 …………!!!? 」
困惑する イザベル 。
( お嬢様が何を言っているのか……?わからない……。)
アウレの碧い眼はまっすぐと、その一点を見つめていた。
( ……なるほど……ネ…… )
横たわる 蓮花 は、その意図に、いち早く気が付き。
震える膝を抑え、立ち上がる。
「 ……蓮花 ……それ以上は…… 」
「 ……寝言……は……寝て……から……言う……アル……よ…… 」
血の気の引く顔に精一杯のやせ我慢を浮かべる。
「お前がそれを言うなよ」という、表現を浮かべる アウレ の顔を見て……。
一瞬だけ、表情を緩ませ……頷く。
「 ……しかし、それも……死路ネ……かなり難しい……賭け……アルよ…… 」
「 同じ、死路でも、無様に背を向けて逃げる廻るよりは、よっぽどいいだろ! それに……賭け事、得意なほうだ! 」
そう、微笑む…… アウレ に。
「 ……ふっ、同感ネ…… 」
満身創痍の身体に鞭を打つかのように 蓮花 が、笑みを返す。
その様子を見ていた イザベル は、ようやく、あることに気が付き……いつもの溜息をつく。それは……諦めにも似た覚悟。
( そういえば……それを教えたのは私でしたね…… )
口角を緩ませる。そして、新たな魔石を両手五指に挟み――問う。
「 ……で、……お嬢様、それはどこですか……? 」
「 あの、にやけ顔 の……後ろだ! 」
「 ……それは、……最悪です、……わかりました! 特攻ですね…… 」
「 お嬢ー が右側で、……私が左側ネ、……イザベルは……後方アル……」
アウレ が剣を掲げ、八相の構えをとる。
「 いつも、通りだな! 」
「 それでは……準備は宜しいでしょうか? 」
「 ――おう! 」
イザベルは仮面の男の頭上目掛け、高く高く……十二個の魔石を投げる。
――それが、合図となり――。
光り出す――その刹那。
―― 我、問う魔導の理を万象にて現し溢れし 石の槍を穿て 岩石槍 十二重復唱――――。
―― 三人は一斉に散開、行動を開始する ――。
散らばる空中で無数の魔石から術式が展開され、石の槍が顕現。全方位、 仮面の男 の視界を埋め尽くす。
―― 魔導師 イザベル・フィッツロイ の魔術 岩石槍――。
更に回転し、螺旋の弾丸と化す。
対する、仮面の男は、『 魔法防御壁 』を展開。透明の天蓋に包まれ、迎撃の態勢。
―― 再三再四の足止め ――。
その内に、蓮花 が陽動、攪乱し、隙をみて アウレ が一撃喰らわせ、離脱する……という算段……。
であったが――。
「 ―― 蓮花!? 」
走り出そうとした瞬間、 蓮花 が失速する。
( ――――!!!? 蓮花の動きがいつもより鈍い――!!!? )
イザベル が後方から肩を貸し、追走。
青ざめた表情の 蓮花 は イザベル と二人三脚で前進する形となった。
( ……陽動は、一人でやるしかないか…… )
アウレは進行方向を変え、 仮面の男 の正面に対峙する。
高速の触手の攻撃を警戒し、『 瞬歩 』の動きから滑り込むように間を潰す――。
―― 北辰一刀流 『 長短の矩 』――。
( こっちに向け――!! この野郎!! )
残像の中に明確な殺気を放つ――誘い。
それに 仮面の男 は まんまと応じた。
( かかった!……やはり…… )
刀圏内に入った アウレ は八相の構えから剣を高く天へと振りかざす。
笑みを貼り付た仮面、その双眸。
邂逅直後から微かに匂う――違和感……。
それは徐々に濃くなり……。
―― 確信を得る――。
( ……狙いは……おれか――!!? )
――瞬間、洞窟内に奔る『 魔脈 』、魔力の流れを捉える。
刀身が黒く変色し、輝き出す。
前進する推進力、体重移動、魔力の流れをその切先へと集約させ――。
――打ち下ろす一閃。
―― 北辰一刀流 『 星王剣 』 ――。
火花が散る衝突――その一瞬の間に。
仮面の男を覆う――透明の天蓋『 魔法防御壁 』は。
再び、硝子細工のように音を立てて、砕け散る――。
( ……やはり……これは有効だ…… )
そして、伸びる刀身、その斬撃は。
その仮面を捉え、真っ二つにしようとした――その刹那。
突如、空を斬った。
「 ――――――――――!!!? 」
―― それは、仮面の男の消失 ――。
( ――な、……誘いこまれたのか……!!!? )
打ち下ろし後の態勢、崩れたままの視線が泳ぐ。
( ――くっ――イザベル!奴はどこだ――!!!? )
咄嗟に送る―― イザベル への視線。
その眼鏡 < 術視鏡 > が映し出す、『 方陣円 』。
その指し示す――方向は、……後方であった。
( ―― それは……やばい !!!! ―― )
ゆっくりと流れる時間。
振り向き、飛び散る汗の雫が地面へと落ちる――よりも早く。
―― 仮面の男 が出現し……。
―― 膨れ上がる、肉塊。
( ―― 間に合わない ―― )
その瞬間、宙を舞い、煌めく――魔石。
―― 我、問う魔導の理を万象にて現し溢れよ、霊糸なり縛れ 綾織―― 六重復唱 ――。
無数の『 魔力の糸 』が仮面の男へと射出。
その肉塊の脈動を縛り、一時的に制止する。
その間に……。
「 お嬢様、早くこちらへ…… 」
目的地に着いた イザベル と 蓮花 両名が手を伸ばし、 アウレ を呼ぶ。
『 魔脈 』は呼応するように発光し、空間が歪み始め……。
アウレは、急ぐ――その場所へと。
…… しかし、……。
ブヂッブヂッと音を立て、『 魔力の糸 』を引きちぎり……。
突出する――おどろおどろしい触手。
必死に走りながら振り返る アウレ の碧眼に。
高速で忍び寄る影が映り込む……。
――その、刹那。
三度、無数に散らばる魔石達が光り出す。
――我、問う魔導の理を万象にて現し溢れよ、障壁なり我を護れ 疑似防御壁―― 四重復唱――。
走り込む アウレ の後方に何重にも透明な壁――『 疑似防御壁 』を展開する。
しかし、迫りくる――六本の触手。
その先端は裂け、化け物ような口がその壁を次々と食い破っていく。
「 ――――くっ――――――!!!? 」
イザベル は、翳す手を震わせ、全魔力を込める。
激突し、轟音を響き渡り――再びの衝撃音。
何度も何度も何度も響く度……。
最後の壁の大きなヒビが入り……。
軋みだす、『 疑似防御壁 』。
しかし、 イザベル の魔術は、触手の勢いをギリギリのところで殺すことに成功していた。
――その合間を アウレ は振り切るように走り抜け、二人と合流。
――瞬間、足元から『 方陣円 』が拡がり、空間が歪み始める。
揺らぎ始める――三人の視界。
硝子細工のような衝撃音を立て……。
崩れ墜ちていく。
舞い散る破片の中、蠢く触手は、停滞。威嚇のような狂熱の息を吐いていた。
そして、……その奥でこちらを凝視するかのような――仮面。
紅の双眸が光芒を放つ。
その姿は、周りの背景ごと吸い込むように……。
三人は < 死の転移陣 > の渦に飲みこまれていくのだった。
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ご愛読頂き誠にありがとうございます。
この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。
作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。
最終章 クルードセツア迷宮攻略編の開幕 でございます。
登場しました 謎の仮面の男。
彼のスペックのおさらいです。
自在に形を変える高速の触手
絶対防御の透明な天蓋 『 魔法防御壁 』
転移魔術
無詠唱
再生する不死身の肉体
無尽蔵かと思えるほどの魔力
となっております。
次回をお楽しみいただければ、幸いです。
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