羅刹との邂逅 ~天蓋地獄~
「 ……いったい……その身体に何体、いるんだ…… 」
その時、アウレの碧い眼に映りこんできたのは……。
仮面の男の体内に巡る、異常な『 魔力 』の流れ。
―― その集結点、青白い発光体 ――。
それは夥しい数――『 魔臓 』であった。
『 魔臓 』とは魔力を溜めておく、器官のことで、『 魔力 』を使う者は必ず持っている臓器。
アウレ は 蓮花 や イザベル 、 ゲイリー などの『 魔術師 』の『 魔臓 』を視てきた。
しかし、『 魔臓 』は、一個体の生物に対して、一つの臓器なのである。
それは、魔獣も同様で、複数の『 魔臓 』を持つ生物など、ありえないというのは ゲイリー の講義でも同じ見解であった。
―― しかし、この仮面の男はどうだ? ――。
いくつもの『 魔臓 』が犇き合い、同居している。
それは、魔力の集合体が、かろうじて人の形を留めている……そんな、様子である。
もはや、人外の……生物……。
なぜ、このような歪な形に……。
普段、青白いはずの『 魔力 』が、どす黒く変色。
点在する無数の『 魔臓 』から枝葉の様にいくつも分かれ……。
( ……これは……俺と同じ…… )
洞窟内に奔る、無数の『 魔脈 』と結合し、同調しているように溶けだす――。
( 『 魔脈 』に干渉した、魔術か!!!? )
――瞬間、仮面の男の足元、空間が歪み……。
「 ――――――――!!!? 」
かくして……吸い込まれるように消失するのだった。
な、…………。
そこにいった、はずの 異形の化物が消えた。
静まり返る場内。
その異常事態に。
( ……何が起きた!?……どこに……いった!!!? )
アウレの視界が右往左往。
蓮花 も目を見張る。
そんな二人が目線を配る中……。
イザベル の眼鏡、< 術視鏡 >だけが、その瞬間を映し出していた。
それは空間が歪んだ――瞬間。
その亀裂の奥、漆黒の中に拡がる……『 方陣円 』。
イザベルは再び、思い出す。
マキシウス家襲撃事件の時の カトリーヌ の姿を。
この『 方陣円 』の正体は、間違いなく――『 術式 』だ。
おそらくは彼女が逃走しようとした、時と同じ紋様の……『 術式 』。
―― 転移の魔術 ――。
そして……。
その『 方陣円 』が、今まさに お嬢様 の背後に浮かび上がったのだった。
「 ――――!!!? ――お嬢様!後ろです――――!! 」
アウレはその叫び声と同時に、影の存在に気付く……。
振り向く――より早く……。
―― 仮面の男が出現していた ――。
( なんだ、今のは……!? 虚を突かれた!!!? )
アウレを捕まえようと手を伸ばす――仮面の男。
「 ――――くっ――――!!!? 」
混乱する頭の中、身体は即座に動いた。
―― 北辰一刀流 『 長短の矩 』 ――。
残像となったアウレは後ろに下がりながらも……。
右手は龍の口、剣の柄の上に乗せ、左手で鯉口を切る。
―― 瞬間、仮面の男の掌が、空を掴む。
柄頭を下へと向け、自然と落下――鞘から解く。
――と同時に姿勢を沈みこませて、息を吐く。
「――っ――――!!!!!!」
下から湧きだす、魔力を淀みなく……全身からへと、――柄へと、――剣へと、――通していく。
「 ぁぁぁあ”ああああ”ああぁぁぁぁぁぁあ”あああ――!!! 」
気迫が体内を巡る高熱の白い息となって洩れる。
腰の捻りと前進する重心移動で、更に剣速は加速していく。
しかし、仮面の男は……既に……。
身体の周りを円形上に覆う――透明の壁 『 魔法防御壁 』 を展開。
( ―― ここを逃すと、二度と好機は訪れない……押し通す ―― )
それは、今できる、最高の一撃。
まさしく、全身全霊。
横一文字の一閃は黒く変色し、輝き出す。
北辰一刀流兵法 抜刀術。
×
北辰一刀流 口伝奥義 『 星王剣 』
放たれた、その剣戟に――。
仮面の男の『 魔法防御壁 』は――。
硝子細工のように、音を立て――砕け散り……。
振り抜く――ままに……。
―― 左腕を切断する ――。
「 ――――――――!!!? 」
仮面の男の左腕が宙に舞う。――瞬間、イザベルは驚きを隠せない表情を浮かべる。
蓮花 の < 白虎纏鎧 > ですら、届かなかった『 魔法防御壁 』を……。
( お嬢様が……斬った…… )
すかさず、仮面の男の足元に魔石を投げ入れ……。
( ……とにかく、この隙を逃さない!!! )
―― 追撃の為に動く ――。
―― 我、問う魔導の理を万象にて現し溢れよ、霊糸なり縛れ 綾織―― 四重復唱 ――。
地面に散らばる魔石が煌めき出す。
魔石から無数の『 魔力の糸 』が射出。
仮面の男を縛り上げた。
―― そして、その動きに同調する…… 蓮花 。
( これは……千載一遇アル……!!!!!! )
魔力を足に溜め――仮面の男へと一直線に跳躍する。
( これを逃したら……後はない、ネ!!! )
目を見開き、研ぎ澄まされた感覚を解き放つ。
「 らあ”ぁぁぁあああああああ――!!! 」
蓮花が咆哮と同時に、空中で身体の中心線を捻り、弓なりにしならせ、反動をつける。
そして、拘束のされた仮面の男を押し潰すよう――全身で。
―― その鋭き『 魔力の爪 』を振り下ろす ――。
…… が ……。
―― それは……瞬きする暇もない一瞬 ――。
仮面の下の紅の双眸が鋭い光芒を放つ。
斬られた腕の傷口から滴る血が……。
突如、蠢き、膨張する――肉塊。
連鎖的、爆発するよう膨れ上がり……イザベルの拘束魔術を引きちぎる。
「 ――――――――!!!? 」
そして……膨れた肉塊が破裂。
中から巨大な触手が高く伸び……枝葉のように分裂……。
細く鋭く形状変化する六本の触手が放射状に拡がり……。
攻撃態勢の 蓮花 へと猛烈な速度で襲いかかる。
「――――くっ――――――!!!!? 」
咄嗟に空中で翻す――漆黒のローブ。
必死で身体を捻り、回避したが、間に合わず……。
―― そして、六本の鋭い触手が 蓮花 の全身に貫通する。その瞬間、宙に鮮血が舞ったのだった。 ――。
〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::〓:::
ご愛読頂き誠にありがとうございます。
この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。
作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。
最終章 クルードセツア迷宮攻略編の開幕 でございます。
この章は作品内の最強のキャラ ゲイリー・バトラー が活躍します。
そんな彼に相応しい、チート級の敵をご用意しました。
次回をお楽しみいただければ、幸いです。
この小説を読んで「面白そう」「楽しみ」「!?」と思った方
上のブックマークと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです。




