後の始末り
マキシウス家の襲撃、及び、カトリーヌの裏切りは、蓮花、イザベルを中心に後始末が行われた。
残る魔獣の群れは、母 アンヌ・マキシウス と 蓮花 が処理。
イザベルは、生き残った襲撃者を投獄。
アウレ と その父 ウェルター・マキシウス は、城内の安全な場所と避難。
そののち、イザベルと蓮花は城内の現状把握に努めた。
そして、わかった事……。
それは……。
今回の襲撃事件は< 魔獣大行進 >の影響で、手薄になったところを狙われた、ということだった。
マキシウス城内の兵士は全員、見るも無残な骸となっていた。
それは、まるで……事前に城中の兵士の配置を知っていたかのような……。
――計画的な犯行であった――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
真っ暗な部屋に光が灯る。
耳障りな羽音がその熱にやられ、力なく地面へと落下していく……。
「どこだ、ここは……」
ぼんやりと、霞む――視線を巡らす。
四方八方、土壁に囲まれた殺風景な部屋であった。
「……俺は……、確か……城に潜入して……」
頭は、上手く……機能しない。
立上ろうとするが……。
両手両足の自由が利かない。
「――っ痛――――――――!!!?」
――その時、右腕に激痛が奔る――。
「……動くと、出血しますよ」
その女の声で、全てを思い出す。
栗色の髪。眼鏡の若い女。
服装はあの時と違い、全身、紺色の薄着姿。
ボディラインが、恐ろしいほど妖艶であった。
椅子、道具を運んできて、……対面に座る。
(確か、この女は……)
そうだ、あの時……、こいつに廊下でやられて……。
「おや、目覚めですか?」
艶めく唇から言葉が零れる。
その声色は脳裏にこびりつき、思わず息を呑んでしまった。
「ここはどこだ?」
「ここはマキシウス城の地下ですよ」
医療器具を触りながら、怪しくも、どこか楽しそうに答える――女。
その瞬間――右腕の痛みは、暴れ出すように痛み始めた。
「あ”ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
それは、何千本の針で肉をぐちゃぐちゃにかき混ぜられる感覚。
額からは滝のような汗が流れだす。
意識が断続的に霞む。
それは、徐々に……耐えきれないものとなっていった。
「あら、薬が効れてきましたね」
「……ハァ…………ハァ……俺をどうするつもりだ……」
「……その質問、説明する意味あります?」
顔を近づた女は太ももの間を強く踏みつけて、問う――。
その狂気の瞳に焦燥しきった自分の顔が映っていた。
男はその目を知っている。
それは戦場で幾度となく見た――捕虜に向けられる目――である。
「……な、何が、……知りたい……!」
「全部です!今回の首謀者、目的、理由。貴方達の事。知っている全てです」
瞳孔を開いたまま、能面のような狂気顔で女は問う。
「……俺たちは傭兵だ。……ただの雇われた。……誰になんて、……もう……知っているだろ……」
その痕跡はそこら中に残っていた。
医療器具に。
女の衣服に。
座る地面に。
それは……先約達の血痕だった。
女は「うーん!」と、顎に手を当て……とぼけた顔。
……考えるフリをし、――黙る。
その時間……経過だけで……。
――充分に拷問として成立していた――。
気が遠くなるほどの痛みは、この世の生き地獄、生殺しだ。
恍惚の笑みを浮かべ、艶かな口元を吊り上げる。
……この女は愉しんでやがる。
このサイコ野郎!が。
……。
……早く、……殺れよ。
「……どうせ、助けるつもり……もないだろうが……教えて……やる。……俺らの雇い主は ■■■■■■■だ。……どうだ……これで……満足か……」
そう呟くと――女はニコリと微笑み。
――安らかな死を約束したのだった――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふっ――!」
イザベルは、吐息を漏らす。
全身にこびり付いた血をふき取り終えると。
マキシウス家の地下室へと繋がる秘密の階段を上っていく。
ひと仕事が終えた。
そんな恍惚の表情を浮かべた……。
そんな時――。
「――終わったのか?――」
突如、階段の上から聞こえてきた――幼い声。
それは……壁にもたれ、待つ――お嬢様であった。
その姿にイザベルは思わず、驚嘆の声をあげる。
「お嬢様――⁉なんでいらっしゃるですか……」
「そんな事はどうでもいい!分かったんだろ、今回の襲撃の黒幕が……」
腕を組み、金色の髪が揺れる。
それは、おおよその事は、知っている雰囲気であった。
更にその碧い眼が、事の真相、真実を問い詰める――。
「今回ばかりは、駄目です!これは、私たちの手には、負えない問題です!|先生≪ゲイリー≫が帰ってから対処します!」
「……な!?それじゃあー、ダメなんだよ!な!頼むよ!」
「いいえ、駄目です!」
頑なに「拒否!」を突き付けるイザベル。
どうやら……意思は固そうだ……。
(どうすっかなぁ――)
と、天井を見つめるアウレに……。
いつもの悪知恵が思い浮かぶのであった……。
「……そういや、ニーナが製造している、例の『媚薬』。……生産数と納品の数がどうにも合わないだが……何か……知っているんじゃないか?」
その言葉と、にやけ面にイザベルは肩を震わした。
「……しかも、流通させてたの数倍の強さの『媚薬』を……大層、夜のお愉しみに使ってんだろうな……その犯人は?」
そう、怪しく呟く……その声に、大量の冷や汗をかいていた。
「一つ、気になったんだが……襲撃された時――何で、イザベルは、その < 魔力水 >を持っていたんだ?」
そう、蓮花が魔獣の大群に襲われた際、イザベルが渡した< 魔力水 >。
それをアウレは、見逃さなかったのだった。
「――駄目です!絶対っっっい、ダメ!」
イザベルは首を大きく、横に振る。
「……月5本」
「――駄目です!」
「……月6本」
「……いえ、」
「……7本!」
アウレの碧い眼が、猛る。
「んん"……」
「……8本!」
「…………」
「なら……わかった!……9本……で、どうだ!」
「……っっ……………………………………………………………………分かりました……」
――――――勝った――――――!!!!!
アウレは心の中で大いに叫んだ。
この女は、ちょろいすぎる――!!!!!!
それは、この先、どうあがいてもこの アウレ・マキシウス 逆らえないという……。
……絶対服従の敗北宣言であった。
「ふっふっふっふっ!!!!!」
変な、堪え笑いが止まらない。
全てが順調に進んでいる。
……さあて、ここからが本番だ……。
この事の落としどころ。
そして、……ある秘策も……。
――その全てが、この アウレ・マキシウス の掌で躍る――。
「あっはっははははぁぁははは――!!!!!」
そう、確信し、高笑いをする。
その幼い顔は、……歓喜と狂気に歪み、悪魔の顔へと変貌していくのであった。
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ご愛読頂き誠にありがとうございます。
この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。
作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。
3章 リセポーセ騒乱編 のテーマは 『愚者達の狂宴』です。
タイトルの ”外道”その伏線回収と3章の本当のクライマックスが始まります。
『踊れ!全ては、奴の手で!』
次話、3章のクライマックスです!
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