マキシウス家強襲 ~虚々実々~
烈風が渦巻く――マキシウス城の中庭。
その冷気と熱気が入り混じる中、少女の金色の髪が靡く。
辺りは吹き荒ぶ死臭とその一滴まで出し搾る――血飛沫。
月の眩耀に映る斬撃が、その怪しさを増していた。
それでもなお、雪崩のように押し寄せる魔獣の群れ。
その終わりが見えない猛撃、大攻勢を剣で斬り開きながら……アウレは――確信する。
――この突撃は確実に成る――、と。
一騎当千の 李 蓮花 の猛攻。
それを的確に汲み取り、的確な連携する イザベル・フィッツロイ。
迫り来る――魔獣達の壁を アウレ・マキシウス が斬り崩す。
そして、……。
「――奥様、お願いします!――」
「 ――汝、血の契約を伝ひて不変の楔となり魔を滅ぼす 氷河の障壁と成せ 樹氷河 」
二つの放射線状に氷山が連なり、魔獣の大群を飲み込み――凍結死させる 母アンヌ・マキシウス の魔法。
それは……先行する蓮花のすぐ横をかすめ……。
その結果、カトリーヌの元へと繋がる一筋の道が出来たのだった。
「……これは……勝機ネ!」
蓮花は再び、脚に魔力を溜め、一気に爆発させる。
蹴り出す大地はひびが入り、飛翔する――後方に白雷が迸る。
そして、放たれた弓のように。
魔獣の群れを放物線を描くように飛び越し……。
カトリーヌの元へと急降下――勢い、そのまま――その鋭い爪を振り翳す――。
――その瞬間――。
白い修道服が、蓮花の目の前に立ち塞がる。
それはその猛攻を止めようとする――最後の襲撃者の姿だった。
(……当然、……そう来るネ……)
放たれる蓮花の『魔力の爪』が……。
「――邪魔ネ――!」
襲撃者を一蹴する。
胴に斬られた襲撃者の身体から盛大に噴き出す血。
その血飛沫をわざと蓮花へと向ける。
その目くらましに……思わず、ズレる着地点――蓮花の攻撃は空を斬る――。
――その隙に……。
今度はカトリーヌが空高く飛翔し、城壁の上へ避難するのであった。
そして……。
「……これはこれは、想定外です!流石に……分が悪い……。」
余裕が零れる口元に、蓮花が叫ぶ。
「――逃げるアルか――!!?」
「ふっ、安い挑発ですね!」
――そう、時間稼ぎである。
「――何が目的ネ!」
その間にイザベルは城壁に、埋め込まれた魔石に『魔力の糸』、魔術回路を繋げようと手を翳す。
が……。
「――はくじょうするアルよ!」
――起動しない。
(――なんで!?まさか……仕掛けた魔石の術式が壊されている……!?)
「……なかなか、楽しかったですよ……。」
そう呟くと、カトリーヌは手を翳し、空間が歪ませる。
その様子――魔術を見て、イザベルは耳を、疑った。
詠唱していないのである。
(――そんな、……ありえない……。『無詠唱』で魔術を発動させるなんて――)
「――待つネ――!」
蓮花が追撃を開始しようとするが、……到底、間に合わない。
そのまま、カトリーヌは……。
その歪みへと吸い込まれるように退却する……。
――その刹那で。
――アウレが明後日の方向へと動く――。
残りの魔獣をかき分けるように斬り伏せ――カトリーヌと別の方向へ駆け出していた。
(……こうなれば、一か八か、だ……)
アウレの碧い眼に映し出す……カトリーヌから伸びた一本の線。
――つい、先程の蓮花の言葉――。
『――やっぱりそうネ!『魔脈』に干渉しているアルよ――』
その言葉が指し示す、先――『魔脈』の大元へと……。
(……ようは、その『魔脈』を斬りゃいいだろう……)
駆け出しながらも剣の柄を握り直し……八相の構えをとる。
あの日、そう――蓮花との『立士の儀』で。
発動しなかった…… ―― 北辰一刀流 奥義 星王剣 ――。
今にしてみれば……勝利への焦り、からくる――『力み』でもあったと思う――。
しかし、問題はもっと奥にあった。
地面から伸びる『魔力の線』は至る所に伸びている。
それは、ダンジョンを中心に――。
ギタの森に――。
リセポーセの市街にも――。
そして……マキシウス城の敷地内、そう――アウレの今いる足元にも……。
カトリーヌはその一つを利用しているしかない。
そうだ、利用すればいいんだ。
重力と同じように……。
膝を沈みこませ、足の裏に流れる魔力を――捉える。身体中には『外から取り入れる力』と『元から内にある力』。その二つを理解し、……体内へと調和、融合させねばならない。相殺させないためには……『脱力』が必要。それは、力を抜くことではない。無駄な力を抜き、一方向に増幅させる循環させていく『流水』。身体の、骨、関節、筋肉、血……全てを意識し、淀みなく流すように連動させる。その一つ一つの意識が偶然のように積み重なる研鑽……。
(――ええい!ごちゃごちゃと、うるせぇぇえええ――――!!!)
この何だか分からない……偶然の集結は……。
いちいち、頭で考えては……奇跡は起こせない。
そう云う――奥義だ。
(一回、全て……忘れろ!)
碧い眼を見開く。
(――もっと単純に!)
ただこの流れ、勢いに身を任せて。
(――あの日の掴んだ感覚を)
今という瞬間、この一太刀に全てを賭ける。
(――強く!強く!信じろ!)
――その瞬間、魔力は黒く濁り、強く光る。
刀身から一気に流れ込む魔力と共に斬撃を振り下ろし――地面へと放つ一閃。
――北辰一刀流 奥義 星王剣――。
その猛然たる斬撃は……。
暗雲が立ち込める大気を――。
鮮血に塗られた大地を――。
閉ざされた闇夜の帳を――。
――『魔力の流れ』ごと、断ち切ったのだった――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……ん、――――!?」
その瞬間――カトリーヌが作った……。
――空間の歪みが消滅する――。
「 「 ――――――!!!!!!? 」 」
――それは、蓮花にとって最大の好機――。
その隙を逃さない。
――すぐさま、飛翔して――。
「ぁぁぁあ”あああ――!!!」
――カトリーヌを『魔力の爪』で――殴る。
……命を絶つ攻撃ではない――相手の戦闘の不能にする攻撃。
峰討ちである。
その攻撃をガードしたカトリーヌは、勢いよく吹っ飛ばされた。
地面に倒れこむ寸前で受け身を取り、態勢を整えると、同時に――頭上いる 蓮花 を物凄い形相で睨み付ける。
その数秒の隙……。
その隙が、命取りになる……。
「――イザベル!」
「――分かってるわよ!」
「――我、問う魔導の理を万象にて現し溢れよ、霊糸なり縛れ 綾織―― 四重復唱――。」
イザベルの高速の詠唱。
カトリーヌはそこでようやく気付く――。
自分の近くに撒かれた罠に……。
「――しまっ……た――!!!?」
急いで、その場から離脱しようとする――。
「 ――――――――!!!? 」
――が、足が凍って動けない。
それは……アンヌの氷水魔法であった。
その瞬間、――足元の魔石が光り出し、無数の『魔力の糸』が空高く伸びる――。
カトリーヌを覆う形で展開し……。
一気に収縮する。
その刹那、カトリーヌは微笑を張り付けたまま、呟く――。
「 ……これは…………一本、取られました………… 」
そして、……。
立ったまま縛りあげられ……。
そこで、気を失うのであった。
やがて、……マキシウス家の中庭に朝日が差し込む。
――それは長い夜の終わりを告げていた――。
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ご愛読頂き誠にありがとうございます。
この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。
作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。
3章 リセポーセ騒乱編 のテーマは 『愚者達の狂宴』です。
全4話 マキシウス家 強襲編 の ”結” でございます。
ラストですが、3章のクライマックスはここからです。
とんでもない、どんでん返しをご用意しております。
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