蠢く思惑
クルードセツア迷宮13階層。
地上から降り注ぐ大滝に鮮やかな虹がかかる。
外界の光が緑の芝生が辺りを映し出す――開けた休憩地。
絶景が観るものの心を奪う安息地。
響く滝の音の中に……飛び交う怒号が混じっていたのだった。
「――ああ!?< |魔獣大行進≪サタンビート≫ >だと、何を言ってやがる!」
多くの冒険者達がアウレ、イザベル、蓮花の三名を中心に取り囲み、詰め寄る。
「――ですから!その可能性があるんです!ここは、一度引き返してください!」
イザベルが必死で訴えている――だが、それでは駄目だ。
「――嬢ちゃん達に何でそれがわかるんだ!」
「――そんな話信じられるか――!」と。
冒険者達の反論は、もっともであった。
しかし、このままでは、……まずいことになる。
イザベルの表情から焦りの色が窺えた――時。
「イザベル、交代だ……」
そう、呟き――アウレが冒険者達の前に立ち塞がったのだった。
そして、……雄弁に語り出す。
「失礼します。勇猛な冒険者の皆様。私はアウレ・マキシウス。このリセポーセの領主ウェルター・マキシウスの娘でございます。」
「――!!!?……はぁ?何言ってんだ?嬢ちゃん、冗談もほどほどにしないと――!?」
アウレは懐からマキシウスの家紋が入った装身具――証明を見せる。
「お嬢様!!!?それは、持ち出し禁止の……!!!?」
驚く――イザベルにアウレは不敵な笑みを浮かべる。
それを見た、冒険者達は……たちまち静まり返る。
精巧に彫られたその家紋は二つとない、紛れもない証。
それこそ、同じ物(偽物)を作れば……即――斬首刑である。
「……おいおい、マジか……」
「冒険者様のお怒り、不満はごもっともです。しかし、このままでは皆様の身に、危険が及ぶ、可能性があります。それは、冒険者ギルド、並びにマキシウス家の者としても見過ごすことの出来ない事です。……なので、ここは一度、退去して頂き、安全性の確認させて欲しいのです。もちろん、現在、受注のクエスト報酬やその後の保障、さらに今夜の宴会代も当家マキシウス家が全て出させて頂きます!」
潤んだ碧い瞳が、金色の前髪から覗く。
「……ご協力頂けないでしょうか?」
その少女の慈愛にも似た、訴えは……。
「――おい!てめえら!聞いたか!この姫様の声を!」
屈強な冒険者達の心を震わえる。
そして、一つになる。
「――撤収だ!周りの冒険者どもに伝えてやれ!今夜はマキシウス家の驕りで――宴会だと――!」
冒険者達は直ちに行動に移す。
仲間同士で連絡をとり、今、ダンジョン内にいる冒険者の所在を洗い出すのだった。
その、騒がしい中……。
あっけにとられるイザベルと、蓮花に……。
アウレは呟く。
――「な、ちょろいだろ!」――と。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――< |魔獣大行進≪サタンビート≫ >の発生――発覚。
冒険者ギルドの対応は迅速かつ、統制の執れたものであった。
全冒険者にダンジョンへの一時入場禁止、速やかにダンジョンの現状況の把握がなされた。
そして、マキシウス家政務室にて……。
冒険者ギルド長 グラド・ジャドス。
リセポーセ辺境伯 ウェルター・マキシウス。
執事長 ゲイリー・バトラー。
マキシウス家のメイド イザベル・フィッツロイ。
の四名が集う。
部屋中を深刻な空気が重く漂う。
そんな中、一連の状況を踏まえた上で、先に口を開いたのは冒険者ギルド長 グラド・ジャドス であった。
「……なるほど、ダンジョンの活性化ではなく、< |魔獣大行進≪サタンビート≫ >の予兆だと……。」
その確認するかのような問いに、イザベルは頷く。
「……ええ、ほぼ間違えないかと、あの子の感はこういう時よく当たります……」
「あの錬清国出身で冒険者としても名の通った <猛虎> 李 蓮花 さんの発言です、信憑性は高いです……」
更にゲイリーが答える。この二人は、知っていた。蓮花の勘が、よく当たることを。
「攻略中の冒険者からの定期連絡はどうなっていましたか?」
「それが、……数日前から<白狼の牙>の定期連絡が途絶えておりまして……。調査隊も15階層から先へは、魔獣数があまりにも多く、先に進めない状況です。」
「なんと!あの<白狼の牙>が、ですか!?」
その発言にウェルターが驚愕する。
A級冒険者チーム<白狼の牙>。
リセポーセ、一の冒険者チームでクルードセツア迷宮の階層をいくつも破ってきた実力者集団だ。
――ダンジョン最前線で消息不明――。
それは、この問題がいかに、深刻かを表していた。
「――旦那様、この場合は最悪の事態を想定する必要があります。まずはクルードセツア迷宮の全面封鎖とダンジョン入口付近に調査、防衛基地設営。そして……来るべき備えとして、資金援助をロレンチ商会代表ディオレ・ロレンチ様に要請すべきかと――」
動揺した様子ウェルターは「そ、そうですね……」と力のない返事で賛同した。
「……しかし、この状況はまずいですね」
そう、言うとゲイリーは、自分の白い髭を摩る。
数手先の思案。
ここからは、一手すら間違えることが出来ないである。
「……旦那様、この街の冒険者の戦力では手が余りますので、ここはアルトバラン・メルバトス様にご助力をお願いしましょう。」
そのゲイリーの提案にウェルターは「そ、そうですね……」と再び、力のない返事で賛同した。
そして……。
「――恣意てはお願いがあります、この件、私自らメルバトス領へ出向くことをお許し頂けますでしょうか?」
その発言に……。
「ええっ!?……この状況を ゲイリーさん抜きで、対処しなければならないですか?」
ウェルターは酷く動揺した。
なぜ?こんな緊急時に?ゲイリーさんが直接出向く、意味は?
そんな疑問が駆け巡る、……しかし、ゲイリーの眼はそれを答えさせないほどの鋭い、圧を放っていたのだった。
「……冒険者ギルドの方々は引き続き、ダンジョンの調査をお願いします。私が離れている間、対応は……イザベルさん!あなたに全て任します。」
「……?はい!わかりました!」
ゲイリーの名代、その重責を……。
イザベルは、平然と受け入れた。
それはまるで、いつもの事のように……。
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ご愛読頂き誠にありがとうございます。
この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。
作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。
3章 リセポーセ騒乱編 のテーマは 『愚者達の狂宴』です。
一部の折り返し地点となりました。
ここから物語は徐々に急転直下していきます。
良ければお付き合いください。
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