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火属性魔法の宗家<メルバトス家>


「お嬢様?私に隠していることありませんか?」

 

 執事長ゲイリー・バトラーがお嬢様アウレ・マキシウスに問いかける。

 それは白いあご髭を触りながら、なにかを察した様子だった。

 

「ん、んーないよーなんにも……」

 

 全身から大量の汗が噴き出す。

 

「本当ですか?」

 

 顔を近づけ、覗き込むゲイリー。

 片方だけの丸い眼鏡モノクル奥が鋭く光る。


 何か怪しい……という疑心の眼。


 その様子に、アウレの碧い瞳、目が泳ぐ。

 

 蓮花、イザベルには再々、口止めを指示したし、弱みもこちらで握っている。

 万が一でも漏れることはないはずだ……。はずだが……。

 

「ほ、ほんとだよー。」

 

「……まあ、いいでしょう!……それよりも明日は旦那様とお嬢様、私でメルバトス家の<御三家会談>を予定しております。いいですか、くれぐれも粗相のないようお願い致します。」

 

 白髪老執事(ゲイリー)の言葉はいつも、予知をするかの如く、針の糸を通す……。

 

 

「おおよ、まかせとけ……」

 

 

 その言葉にアウレは……引きつる笑顔で返したのであった。



 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

 

 封建制の<セルタニア魔法国>において、火属性魔法の宗家<メルバトス家>は東一帯を統べる大貴族である。

 

 その自治権を有するメルカッツ領の<城塞都市コルコソヌ>は領主 アルトバラン・メルバトス侯爵が治めていた。

 

 さらに、メルバトス家の下には派生した分家マキシウス家とリフィル家がある。

 古くよりの慣習で、独立した意思決定を相談し、一つの都市同盟のもと、政治を行うのが<御三家会談>であった。

 

 今回、アウレはマキシウス家の当主 ウェルター・マキシウスの付き添い、メルバトス家への顔出しするために同行することとなっていた。

 

 「アウレちゃん、飴ちゃん舐めるかい?」

 

 メルバトス家に向かう道中。

 馬車の中で、緩みきった顔の父ウェルターがアウレにお菓子を渡す。

 

 これは普段、忙しくてなかなか会えないから、きっと、この|親バカ≪ウェルター≫は娘成分が足りてないんだろう……。

 だから、このお菓子貰うことは、謂わば……一種の親孝行なのだ。

 断じて、この旨いお菓子を貰うためではない。

 そう、心の中で正当化し、次々と渡されるお菓子を貰い、口に頰張った。

 

 傍からみたら……完全に小動物の餌付けである。


 そんな様子を……。

 

 「旦那様。旅行ではないのですから、ちゃんとしてください。」

 

 そう、ゲイリーが注意する。

 すると、ウェルターは真剣な顔で「もちろんだ!」と返した。

 そして、数秒後には、お菓子を催促するアウレに対して緩みきった顔、親バカに戻る。

 

 その様子を見て、ゲイリーはいつものため息を吐く。

 

 そうこうしているうちに馬車は林道を抜け……。


 

 メルバトス領の<城塞都市コルコソヌ>に到着するのだった。

 


 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 


 「でっけー!!!!!」


 

 <城塞都市コルコソヌ>は川岸に沿て、築城されており、小高い丘の上、二重の高い石垣の防壁がそびえ立つ。

 四方に川の水を流した深いお掘があり、城門は屈強な兵士が一切の侵入者を寄せ付けない。

 その壮大さはまさに、メルバトス家の権威を現していた。

 

 たまらない様子のアウレは窓から乗り出して、外の世界を見ていた。


 馬車はお掘に架かる頑丈な橋を渡る。

 

 金色の髪が風に舞う。

 颯爽と橋の上を流れる雄大な風景。

 見上げると一層高くなった城壁が連なる。

 

 (この城を落とすのに何万の兵が必要なんだ?)


 生前、戦国時代のような合戦では、騎馬や城攻めがあったが、この異世界では規模や技術進歩が違う。

 アウレにとってそれら全てがどれをとっても規格外のものであり、未知な体験で……。

 

 ――心が、身体が、勝手に躍り出す。

 

 そう、――アウレの身体は半分以上、馬車の窓から乗り出していた。

 

 その様子に父ウェルターは慌てて、馬車から落ちないよう足を抑える。アウレがはしゃぐ度、顔に靴底が何度も当っていたのに、何故か嬉しそう表情を浮かべていた。

 


 馬車を引く頭二本の角の生えた奇妙な馬が城内に入っていく。

 

 すると、そこには市場、商店、住居が並んでいた。

 

 外からでは見えなかった活気。


 それを横目に馬車は更に――奥へと歩を進ませる。

 

 やがて、……。


 正面に豪壮な建物が見えてくるのであった。


 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 「よく来たな、ウェルター、ゲイリー殿。もう、スザンは到着しているぞ!」

 

 絢爛豪華な広い玄関に大男が多くの使用人を従え、3人を迎える。


 この城の主 アルトバラン・メルバトスである。

 

 荘厳な金の刺繡にあしらわれた貴族衣装。

 無造作に生えた赤茶の髪、髭は連結し、獅子のたてがみのようになっていた。

 

 「これは……アルトバラン様、お久しぶりです!」

 

 ウェルターはいつもより慎重かつ、丁寧に挨拶する。

 何故なら、マキシウス家にとってメルバトス家とは身分、家柄も格上の存在であるからだった。

 

 アウレの碧い眼にはアルトバランという男は、でかく視える。

 

 体格もそうだが、彫りの深い顔立ち、風格……そして、身体の奥に秘める魔力……。

 

 まさにメルバトス家の威厳、威光を表すような男であった。

 

 「おお、この子がお前の娘か?」


 「はい、お初にお目にかかります!アルトバラン・メルバトス様。わたくしの名前はアウレ・マキシウスでございます。以後お見知りおきください」

 

 アウレはドレスの裾を掴み、天使の微笑みを魅せる。

  傍からみれば、どこからどうみても貴族の淑女。

 

 ゲイリー直伝。

 ―― 奥義 猫被り ――。

 


 光り輝くような黄金色の髪、澄み渡る湖のような碧い瞳。

 服装は純潔のような真白なドレス。

 まさに、神が下界に使わした神聖な少女。

 その姿、仕草に思わず、メルバトス家の使用人達の息が漏れる。

 

 それは……横にいる親バカ(ウェルター)も同様であった。

 我が子の成長に感激して思わず、震え……。

 

 ……頬擦りしようとした――。

 

 ――その首根っこを持ち、ゲイリーが制する。


 そして、冷徹無比に声をかけた。

 

 「さあ、アルトバラン様、旦那様。スザン・リフィル様もお待ちですので!急ぎましょう!」

 

 「待ってくれー!アウレー!愛しき我が娘にほんの少し!少しでいいから!触れさせてくれー!」


 

 ――と、叫びながら引きずられるウェルターをアウレは容赦なく、手を振って送り出したのであったらしく


 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

 「ここでしばし、お寛ぎ下さい」


 そう、メルバトス家のメイドに促されて、アウレは応接室に通される。


 部屋に入るとそこにはショートカット黒髪の可愛らしい女の子が先に座っていた。

 

(ん……歳はだいたい同じくかな……)


 端正な顔立ちに花びらのようなフリルの付いたドレス。

 椅子に、大人しく座る姿はまさに『座れば牡丹』。

 どこかの国のお姫様といった印象であった。


(おっと、貴族らしく挨拶、挨拶っと……)

 

 「初めまして、私はアウレ・マキシウス。貴方は……?」

 

 「……初め……まして……私……は……カーラ・リフィル……です。」

 

 返事をする声があまりに小さくて、上手く聞き取れない。

 

 「えっと……今、なんと?」とアウレが聞き返すと、俯むき顔のまま、耳を赤く染め沈黙する。


 「……」

 

 (なんだろう?……気弱な性格なのか?)

 

 しかし、これでは間が持たない……。


 さて、どうしたものか?と首をひねる。

 

 ……すると、ある妙案を閃いた。

 

 「なあ!」

 

 アウレがカーラを突拍子もなく呼ぶ。

 

 カーラが視線をあげると……。

 

 そこには……物凄い変顔をしたアウレがいた。

 

 「!?……プッ……ア、アッハハハ……や、やめて!……ヒィ……その……顔……アッハハハ!」

 

 おお、凄い効果だ!

 

 何だか楽しくなってきた。

 生前、遊女相手に百戦錬磨、自慢の変顔がこんなにも通用する。

 

 どんどん、カーラに変顔を近づけ……。

 

 

 ――カーラはソファーに仰向けで倒れ、腹を抱えて笑っていたのであった――。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 


 「まったく!なぜ、お父上はメルバトス家の次男である、この俺を御三家会談の付き添いせず、両家の子守りなんぞさせるんだ!」

 

 メルバトス家の廊下をズカズカと歩く貴族姿の少年。

 その後ろを御付きの執事が追いかけていた。

 

 少年の名はメルバトス家の次男ギリアス・メルバトス。

 煌びやか貴族衣装に身を包み、剣山のように立たせた赤茶の短髪。

 歳は十四ながら、大人に負けないほどの背丈の彼は……。

 精悍な顔立ちの眉間に皺を寄せ、烈火の如く猛り立っていた。

 

 「……ギリアス様、旦那様にもお考えあってのことでしょう……」

 

 「ふん!メルバトス家の次期当主は俺だ!決して!兄上ではない!それは父上もご承知のはずだ!」

 

 「ですが……やはり、……」

 

 そう、余計なことを呟く――付き添いの執事を「黙れ!」とギリアスは突き飛ばす。

 そして、倒れこんだ執事を踏みつけながらギリアスが叫ぶのであった。

 

 「うるさいぞ!……お前は!……誰に向かって口を開くか!」


 執事の何度も頭を踏みつけ……数分間。


 「ふん!」

 

 散々踏みつけたので、飽きたのか……その暴行を止め。

 

 「……もう、よいわ!……それよりそのガキ共はどこにいるのだ?」

 

 「……は、はい!……応接室で……お待ち頂いております。」


 と、踵を返す。

 

 そして、去り際に冷たく、言いつけるのであった。

 

 「……ああ、それと……お前はついてくるな!」

 

 そう言うと――ギリアスは応接室の方へと向かっていったのであった。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 


 

 応接室の前。

 

 「おい!入るぞ!」

 

 ノックもなく、部屋のドアが勢いよく開く。

 

 

 ギリアスが部屋を入ると……。



 そこには誰もいない……。

 

 

 「あのガキ共もぉぉお!どこに行きやがったぁぁぁあああ!」

 

 

 激怒したギリアスは、もの凄い剣幕で城中を探しに行くのであった。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

 

「……何処に……行くの……?」

 

 アウレはカーラの手を引く。

 退屈しのぎに、メルバトス家の庭先を散策することにしたのであった。


 「わー、綺麗――。」

 

 メルバトス家の中庭は広大で、様々な花や植物が綺麗に咲き乱れている。

 花壇や垣根は自然美を残したまま、丁寧に剪定されていた。

 その様式美にメルカッツ・アルトバランという男がどういう人物か……が窺える。


 カーラはその花壇の鮮やかな花を覗き込み、一気に明るい表情なっていた。

 

 きっと、この子はこうゆう場所が好きなんだろう。

 ここに連れてきて正解だったな……。


 と、アウレは満足そうに頷いた。


 暫くすると……。

 

「――ん?なに作ってんだ?」

 

 しゃがみ込んだカーラは色とりどり花を集め、……作った花の冠をアウレの頭に乗せた。

 

 それは御伽話の世界のような光景。

 祝福するかのように 花びらが風に舞い上がっていた。

 

「似合うか?」

 

 アウレは腰に手を当て、雄々しくポーズを決め、微笑む。

 

 ――カーラはそれを見て、満面の笑みと小さな拍手で答えたのであった――。

 

 

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ご愛読頂き誠にありがとうございます。


この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると嬉しいです。


作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。

第3章 リセポーセ騒乱編始まりました。


ここから本編の話になります。


テーマは『愚者達の狂宴』


見どころは

新キャラ5人。

四つの北辰一刀流口伝奥義。

裏切りに次ぐ裏切り。

ダンジョンの異変。

マキシウス家襲撃事件。

後半から作風が一変。

そして、絶望の4章へと続く序曲です。


この小説を読んで「面白そう」「楽しみ」「!?」と思った方


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