5話 国王陛下に会う その1
「ウィンベル……少し、時間を取れるだろうか?」
「お父様……? 如何なさいましたでしょうか?」
その日、急にお父様が私の部屋にやって来た。その表情は暗い……すぐに良くないことだと察知する。
「どうなされたのですか? お父様……?」
「実は、以前に議会に婚約破棄の慰謝料の件を訴えたことがあっただろう?」
「はい……ございましたね」
もう、2週間近く前の話にはなるけれど……ようやく動きがあったということだろうか?
「議長のリオネス・シルバーマン公爵とも話す機会があったのだ。私の訴えはシルバーマン議長に確実に伝わったと思っていた」
「はい、伺っております。何か、問題が起こったのでしょうか?」
私は嫌な予感がしてしまっていた。婚約破棄を言われた時に、サンセット・メジラマ侯爵が言っていた言葉だ。
確か……彼は議会に精通していると言っていたはず。まさか、それが表沙汰になったのかな?
「サンセット・メジラマ侯爵が議会に掛け合っているようだ……婚約破棄の慰謝料に関する件は、どうなってしまうのか、分からないのだ……」
「お父様……」
やはりそういう話だったか……サンセット様なら、やり兼ねないことだけれど。
「もしも、議会への訴えが通らなかった場合は……どうなるのでしょうか?」
「そうだな……その場合は、誠に遺憾だが、慰謝料は支払われないことになるかもしれないな」
「そうなんですね……」
仕方ないのかな……解決する手段がないわけではないけれど。それを強く進めるのは、私としては賛成出来なかった。別の人に迷惑を掛けてしまう結果になるし……。
「ウィンベル……諦める必要はないと思うぞ?」
「ヴィクター兄さま……?」
そんな時に、ヴィクター兄さまが現れた。決心に満ちた表情になっている。
「慰謝料の件に関しては、議会を頼る必要はないだろう? ウィンベル」
「ヴィクター兄さま、もしかして……」
あ、これは……もしかして。ヴィクター兄さまは頼る先を既に考えているようだ。で、でも……大丈夫なのかしら?
「ウィンベルも察しは付いていると思うが、今回のことは、泣き寝入りをして良い事態ではない。最悪の場合、王家に助力を求める必要があるだろう」
「やはり、その話なのですね……」
まあ、確かに最終的には王家を頼る必要が出て来そうね。なぜなら、私とヴィクター兄さまの血縁上の親は現在の国王陛下であるのだから……。
ただ、私事で迷惑を掛けてしまうのは申し訳ないと言うかなんというか……そんな気持ちにもなってしまうけどね……。