31話 ジクトと通る道
私達は桜の通りを歩いていた。宮殿内に咲いている桜並木だ。とても綺麗な場所で、ここを通るカップルは必ず成功するとも言われている。宮殿内だけに一般人に開放されていないのが残念だけれど。
「なんだか不思議な気分だよ……この桜並木を君と一緒に歩いているなんて」
「そうかしら? 以前にも通ったことはあるでしょう?」
もうかなり前の話だけどね。
「そうだけど、あの時は付き合っていたわけじゃないしさ」
「それもそうね」
「それに……ウィンベルと一緒に国王陛下に挨拶に行く日が来るとは思っていなかった。俺としては以前から夢見ていたことだったけどさ」
「ジクト……ありがとう。嬉しいわ」
「ははは」
「ふふふふ」
幸せの感情が私の中に流れ込んでくる。サンセット様との問題が発生した時は本当にどうなるものかと思ったものだけれど。今にして考えると、あれも私には必要な試練だったのかもしれないわね……おかげ様で人を見る目が養われた気がするし。
サンセット様……家が没落しても安心して過ごしてください。私はもうあなたを恨んでいませんので。ご冥福をお祈り申し上げます。
「どうしたんだ、ウィンベル?」
「もう恨みのないサンセット様に、ご冥福をお祈りしたのよ」
「死んではいないだろ……身体的には元気だ。精神的には厳しいだろうが」
「ふふ、でも私は恨んでなんていないわよ?」
「絶対に恨んでいるな、それは……」
ジクトが引いている。ちょっと、私をそんな目で見ないでよね。私はそんなに悪女じゃないんだから……たぶん。
「それにしても……この桜並木は何度でも通りたい気分にしてくれるわね。ヴィクター兄さま達も同じように言ってたし」
「それには同意するよ。さしずめ、俺達の幸せルートといったところかな?」
「普段なら恥ずかしい言葉だけれど、今日はとても似合っているわね。そうなることを期待したいわ」
「はは、ありがとう」
ジクトはさりげなく腕を出してくる。そこに私は腕を絡めた。恋人同士が自然に近づきデートしているように見えるかしら? 私達の場合は近くに護衛が居るから、普通のそれとは違うだろうけれど。桜並木はまだまだ続いていく……この幸せは永遠であると信じたいわね。
「ところでジクト……子供は何人くらいが良いかしら?」
「2~3人は欲しいところかな?」
「そっか……きっと、第一子が生まれた時にはゼノン様のところへ行かないといけないわ。その時もしっかり頼むわね」
「子供が出来た時の報告か……今まで以上に緊張しそうだな……」
「よろしくお願いね、お父さん」
私はそう言いながらジクトの頬にキスをする。将来の子供まで考えられる関係性……そんな未来はすぐそこまで来ているのだ。私はそんな楽しい感情を胸に刻み込むのだった。
終わり




