16話 国王陛下の言い分 その1
「会議場の前で随分と元気にはしゃいでいたようだな、メジラマ侯爵」
「こ、国王陛下……! は、ははあぁ! 申し訳ございません!」
サンセット様はゼノン様の登場に心底、驚いているようだった。彼の気持ちを考えれば当然だけれど、私達も驚いている。まさか、こんなタイミングで現れるとは思っていなかったから……。
「何を突然、謝っているのだ? 大きな声を出さなければいけない程の事情があったのだろう? 気にすることはないぞ」
「そのようにおっしゃっていただき、誠にありがとうございます……! とても勿体ないお言葉ですっ!」
サンセット様は明らかに異常な汗を流していた。冷や汗なのだろうけれど、物凄く取り乱しているのがよく分かる。私やお父様を恫喝している時とは態度がまったく違うわ。こんなに焦るなんて、ゼノン様に直接呼び出しを受けていたのに、どうやって乗り越えるつもりだったのだろう?
「まあいい。マリストル伯爵……随分と叱責を受けていたようだな?」
「は、はい……左様でございますね」
「私の記憶が正しければ、メジラマ侯爵に叱責されるようなことはしていないように思えるのだが? 何かあったのか?」
ゼノン様はおそらく、内容について把握しているはず。それを敢えて繰り返すことで、サンセット様にプレッシャーを与えているんだわ。チラッとヴィクター兄さまの方向を見ると、無言で頷いていたし。ゼノン様の作戦みたいなものなのだろう。
「それがですね……私はメジラマ侯爵に、シルバーマン議長が罷免されたことだけを伝えたのです」
「ほう……それで?」
「そうしますと、メジラマ侯爵は激昂されました。慰謝料未払いの件が白紙になったことと、私達がゼノン国王陛下に相談に行ったことを叱責してきたのです」
「……」
一切淀みなく、お父様はゼノン様に伝えた。つまりは私達の本当のお父様に……なんだか、不思議な光景だった気がする。
「ふむ、なるほど……そういうことか」
「はい、そういうことになります」
「あ、あの、その……」
「わ、私は関係ありませんわよ……だって、こんな……!」
シリス・トークン公爵令嬢が何か言っているようだけれど、もちろん、関係ないで通るわけがない。彼女の屋敷は名誉ある公爵家なのに……これから大変でしょうね。
「虎の威を借る狐……随分と叫んでいたな。ウィンベルに対して凄まじい物言いだった」
「き、聞こえていたのですか……?」
「当たり前だ、あんなに叫んでいたのだからな。お前は議員の罷免を、ウィンベルが私に相談したからだと思っているようだが、それは少し違うぞ」
「えっ……?」
「ウィンベルやヴィクターからの相談はきっかけでしかない。議員の罷免はお前のような貴族との癒着を失くす為に行ったことだ。議会の信用が崩壊しては、国家全体が滅びかねないからな」
鋭利な刃物で斬られるかのような、ゼノン様からの言葉。サンセット様は自分もタダでは済まないことを、自覚したでしょうね……。




