第八話
店の外に出ると私たちは車に乗り込む、そして発進。
「北に向かっているな……」
永山さんはカーナビを指しながら言う。ナビにも先ほどの地図アプリ同様、点滅する赤い点がゆっくりと大通りを北上していた。
「あ、止まった」
最初は裏道を通っていた永山さんも、途中で大通りに入る。しっかりとない日には赤い点が見えるが、追手が乗っている車は目視できる範囲では見当たらない。
しばらくすると赤い点が突然とある建物の敷地で止まったのだ。あれ……ここって………。
「はぁ、めんど。そういう事かいな」
永山さんはそう言って、車を道路脇に止める。
「さぁ、どうする? 降りるか? 行くか?」
「行きます! 自分の目で見たいんです!」
「分かった。じゃあ行こうか、ところで質問だ。地図を見ると、学園の敷地から離れているように思うが……ここは?」
「一部の関係者しか入れませんが、昔の礼……拝堂……です……」
「礼拝堂ね……」
永山さんはそのまま車を発進させ、学園に向かった。聖光学園は海沿いにある。その為、どんどん建物が少なくなっていき、港を過ぎた。そして
「どうやって入ろうか」
永山さんは車を学園の目の前にあるコンビニに止めながら言う。今日が土曜日とはいえ、部活はしている。
警備は厳重。私が忘れ物を取りに行っている隙に、入ってもらおうとしても、警備員が取りに行くことになる。でも大丈夫、私は抜け道を知っているから。
「永山さん、そこの小道に入ってください」
私は、学園の校門から少し離れたところにある小道を教える。
「あそこか? 分かった。って嫌やわぁ山道やん……」
永山さんは文句も言いながらも私の言う通り、車を小道に向かって走らせる。車はどんどん山道を進んでいく。
曲がったりくねったりしながらしばらく進むと、木が途切れ大きく開けた場所に出るが、門があり、その奥に3階建ての建物が、礼拝堂がある。
「しまっとるやんけ!」
永山さんは車から降りながら言う。
「大丈夫ですよ」
私はそう言って車から降りると、ポケットからカギを取り出す、そして門のカギを開けた。
「開けました」
私は門を開きながら永山さんに向かって言うと永山さんの車が入りやすいように後ろに下がった。
「ほへぇ…すごいな…なんでカギなんか?」
永山さんは車を止め、車外に出た。
「言いましたよね、一部の関係者しか入れないって。ここ、お父さんが学園で管理を任されていたところなんです」
私は震えながら言う。
「なるほど。こっちは裏口やな」
永山さんは銃を構えながらゆっくり歩く。
「はい、車で走ってもらえれば分かったと思いますが、高い……ですよね?生徒にも不便だっていうので、旧校舎を取り壊して新しい礼拝堂を立てて、此処は学園の物置にしたそうです」
「俺もそっち系の高校やが、確かに学校の敷地内とはいえ礼拝するたびにいちいち山登りはしたくないな」
永山さんは苦笑いしながら言う。
「さて入るか。スオミは……行くよな……」
正面に回った永山さんは私に尋ねる。私は強く頷いた。彼のため息が聞こえるとドアを勢いよく開いた。
椅子などは撤去されている為、タイル張りの床と目の前には大きく取り付けられた十字架。後は何もなかった。
「気を付けろよ……どこから来るか分からんからな」
永山さんの言葉に私は頷く、そして永山さんが礼拝堂に足を踏み入れ、真ん中くらいまで足をすすめたその時。
「っ! しまっ!」
急に目の前がまばゆい光を放った。だめ、目を開けていられない。私は顔を覆う。そのときだ、突然私は後ろから誰かに鼻と口を抑えられる、声を上げ永山さんの名前を呼ぼうとした瞬間。
「うっ」
後ろから衝撃を受け私は気を失った。
意識を戻すと私は広い空間にいて体を誰かに拘束されていた。ゆっくりと後ろを振り向く、すると一人の髪の長い女性が私の後ろに立っていた。
「よく来てくれたね、永山武彦君」
笑い声が聞こえ、私は声の方向を見る、そこにはライトに照らされた玉座があり、初老の男性が……あれ? あの人……先生!?
そこには私の部活の顧問の先生であり、父の友人である、天野シキヤ先生が立っていた。
「おっと、急がないほうが良いぞ。あれを見ろ。彼女が死ぬことになる」
先生はそう言って手を上げる、すると、私たちのたっている方にも光が照らされた。
永山さんを取り囲むように、永山さんの家を襲撃した特殊部隊のような恰好をした人が8人立っていた。
「先生! 天野シキヤ先生がどうしてこんな真似を!!」
私は先生に向かって叫んだ!
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