第七話
それから数十分、車を走らせると。とある二階建ての建物で車を駐車した。
「さ、ここだ」
車から降りると、建物の2階に上がる。建物に前にはヘアーサロン射手とかかれた看板があった。
「あれ?あいつ今日休みかよ」
そこには定休日と書かれた、張り紙がしてあった。
「めんど、一階かよ。」
永山さんは、そういうと階段を下りる。
階段を降りると、音という大きな文字の下にミュージックと書かれている看板が掲げられた喫茶店らしきお店のドアを開いた。
「ヤツシー! おるんかい!」
永山さんは、店内に入るなり、誰かのものまねなのか、低くガラの悪そうな人の声で言う。
「なんやねん! いつまでお前はそのネタで引っ張るねん! 俺の名前はヤガミじゃ」
一人の男性の声が響くと、目の前にあるカウンターの下から体格の良い、角刈り頭でサングラスを掛けた男性が顔を覗かせる。
「お前そんなところで何してるんや? かくれんぼか?」
永山さんはケタケタと笑いながら、カウンター席に座った。
「ただの品出しや、なんしに来た……誰や。その子」
ヤガミと名乗った男性は私を指しながらいう。
「おまえ、アイツラが相手してくれんからってついに未成年に手を………あかん。警察に電話や」
「ただの依頼人じゃい!? あとあいつらが相手ってどういう意味じゃ」
永山さんは立ち上がりながら突っ込むと、ゆっくりとカウンターの席に座る。
私もそれにつられて永山さんの左側に座った。
「拓馬〜。騒がしいけどなんかあったの?」
女性の声が聞こえると、カウンターの後ろのドアからショートヘアの女性が出てくる。
「って、永山じゃん。いらっしゃ……誰その子!?」
その女性も八神さんと同じ反応になる。
「冬華、警察に電話。こいつ、ついにやりやがった」
「え、ええ。そうね、まさか未成年に手を出すなんて……いつかはやると思っていたけど。」
「だぁぁぁっ! おのれら! いい加減にしろ。このバカップルが! この子は依頼人じゃ‼」
永山さんは声を荒らげながら立ち上がった。
「知ってる。知ってる。その子でしょ? シュナが言ってた子は、解析の準備できてるよ? 」
「じゃあ! このやり取りは何なんだ! 何がしたいんじゃお前らは‼」
永山さんは机をバンバン叩きながら唸る。
「「ターくんをからかいたかった。」」
冬華さん?とヤガミさんは真っ直ぐな目で悪びれる様子もなく、平然と声を合わせて永山さんに言い放つ。
「ターくん言うなぁっ!」
この三人仲いいなぁ。
「初めまして、スオミ・明希さん。俺はこの建物のオーナーで床屋と喫茶店をしている八神拓真だ。こいつが言っているヤツシって言うのは高校時代のとある事件からこいつがちょいちょいからかう時のネタに使っているだけだ。」
「あったねぇそんな事。懐かしいや。初めましてスオミ・明希ちゃん。私は窪谷冬華。こいつのパートナーよ。特科の刑事からは話聞いてるわ。こっちに来て」
冬華さんは笑顔で言うと左後方に足をすすめると、カウンター内に入るドアを西部劇にあるような、2枚の扉を開いてくれた。
私はそこを通ってカウンター内に入ると、冬華さんに連れられて先程彼女が出てきた、ドアを通って店の奥に行った。
「さて」
「掃除しますか。」
ドアを締めながら、永山さんと八神さんの声が静かに聞こえた。
ドアを通ると左右に部屋があり、さらに真っすぐ行った所にドアがあった。
「こっち」
私は言われるまま、左側の部屋に入った。部屋の中心には小さな机が置いてあるだけで、残りは巨大なパソコン本体と、モニターが2つ。それとプリンターが3つおいてあった。
「さ、そこに座って。研究書は2つあるって聞いてたけど別物?」
「いえ、多分同じものです」
私は紙袋から、USBメモリと紙の束を渡した。
「同じなら、紙媒体の方はいらないと思うけど……まぁいいや両方見ちゃいましょう」
冬華さんはパソコン本体にUSBメモリを挿し込み。プリンターに紙をセット、しばらく操作し、ボタンを押した。
「特課のスパコンには負けるけど、うちのは凝り性の馬鹿が拘り抜いたパソコンよ。そこまで解析に時間はかからないと思うから、そこに座って待ってて」
冬華さんは、パソコンの前に座ると、キーボードを操作しはじめた。
そして、エンターキーを押した瞬間。微かにだが外から悲鳴が聞こえた。
「なんの悲鳴!?」
私は立ち上がる。
「あー。つけてきた奴らでしょ。大丈夫だって! あの二人ならあっという間だから」
つけてきた!? あ、だから、二人は掃除と言っていたのか。
「気になる? あとはパソコンが勝手にしてくれるだけだから、見に行ってもいいけど」
冬華さんは立ち上がりながら私に尋ねる。私はゆっくりと頷く、冬菜さんは笑顔になると私の傍に来ると、部屋を離れた。
ホールに戻ってくると、大の字に伸びた3つの人影があった。そして
「おるあっ!」
八神さんの右こぶしが、一人の男性の顎に命中、男性は仰向けに、私の方に顔を向けて倒れてきた。
あれ?この人……。サングラスをしているが間違いない……私は屈むとゆっくりとその人のサングラスを取った。
「せ、先生!」
私の声にその場にいた皆が私の顔を見る
「先生だと……どういうことだ、スオミ」
永山さんは立ち上がり、私に駆け寄りながら言う
「え、えっとこの人。私の学校の先生なんです……しかも私が所属している部活の副顧問の先生で……なんでこんなところに……」
「ただの先生ではないな、公務員にしては体ができすぎているし、何より動きだ……明らかに長期に戦闘訓練を受けている奴の動きだった」
八神さんは呟くように言う。その時だ。
「っ! スオミ!」
突然、永山さんは私の腕を左手で掴むと、体を引っ張り自分の後ろに立たせようとする。
そして、いつの間にか握られていた拳銃を構えながら、前に出る、それを見た八神さんも前に出ようとした。
その時、窓ガラスが割れ、何か小さなものが何発も喫茶店内に放り込まれた。
しかし、その何かは永山さんたちに向かう事なく、床に倒れている3人の男たちと、先生に命中。男たちは苦悶の表情を浮かべた!
すると、異臭を撒き散らしながら、彼らは白い泡状のものに包まれ、体が溶け出したのだ!
この匂いって永山さんの家に襲撃してきた男たちがいなくなった後にしたのと似ている……。
それを見た永山さんは舌打ちをすると、喫茶店のドアを勢いよく開ける。
冬華さんに、静止されるのを無視して私も外に出た。
外に出ると、黒塗りの高そうな車が動き出したところだった。
「させるか!」
永山さんは叫び、拳銃を構えると発砲した。あまりにもの早業。
どこを撃つのかを決めていたのではないかと言わんばかりの速度で、構えて、一発撃ち、すかさず二発、三発と撃ち込んでいたのだ。
しかし。映画のようにタイヤやドアのミラーを撃ち抜くと言うことはなく、永山さんの撃った弾は、窓枠に一発と走り去る車の右側後方、ちょうどランプの上辺りのボディに一発。そして、もう一発は、ナンバープレートの上に命中しただけだった。
「できれば、この場で止めたかったがまぁ結果オーライだ」
永山さんはそう言って、引き金に指を引っ掛け、銃をくるくる回すと右腰のホルスター?銃をしまうケースに入れる。
すると、銃が消えたのだ。
「わりぃな、拓馬」
永山さんは喫茶店に戻りながら八神さんに言う。
「ったく、ほんっっとお前等と言うか、特課と言うか。面倒事しか頼んでこんな」
入ってきたところで八神さんは永山さんに言う。永山さんは苦笑いしながら八神さんに近寄った。
「んで、お前どうするんやこれから」
「そら、相手の所に乗り込むに決まってるやろ」
永山さんはカウンターに置いてあったコップを掴み中身を飲むと笑いながら言う。
「え?乗り込むって、場所がどこか分かってるんですか?」
「あ~、此処やろ」
永山さんはそう言って携帯端末、スマートフォンを取り出し、それを私に見せた。すると地図アプリが開いており、赤い点々がずーっと動いていた。
「これって何ですか?」
「特殊な電波を発生させるペイント弾だ。さっき逃げる車に三発命中させた」
もしかしてさっきのってわざとあそこを狙ったの?なんてすごい命中率。
「電波の範囲から離れると面倒だからな、追いかけるか」
永山さんはそう言ってスマホをポケットに入れると、財布からお札を一枚取り出しカウンターに置いた。
「釣りはいらん。取っておけ」
「当たり前じゃ」
永山さんの言葉に八神さんは笑いながら答える。それを見た永山さんはドアに向かって歩いて行った。
「私も行きます!」
扉を開けて外に出ようとする永山さんに追いつきながら永山さんの服の袖を握って強く言う。
「副顧問の先生がどうして父の事件にかかわっているのか私も自分の手で知りたいんです」
「え~……やだ」
うっわ、すっごくイヤそうな顔をした。
「行きます!」
私は強く言う、すると永山さんは軽く笑った、そして
「はぁ。はいはい分かりました。守れなくても文句言うなよ」
私は頷くと永山さんと一緒に外に出た。
「あ、解析中の研究書どうする気だ?あいつら」
「後で連絡しておくわ」
面白ければ、評価。感想お待ちしております。