第三話
その時! カチッという音がしたと思ったら、銃声が鳴った。
男も私も永山さんの方を見る。永山さんの位置からは柵が邪魔になっている、上手いこと柵の間と間を狙ったとしても彼に当たるの?
しかし銃弾が不規則な動きをした、真っすぐ放たれたはずの銃弾は左に大きくそれた。いや違う、カーブだ、まっすぐ進んでいたはずの弾は柵に当たらないところで左に曲がった。
そして大きく弧を描きながら柵の上を通過し、男の左こめかみに銃弾が命中、ゴンという激しい音が鳴ると同時に男の体が大きく揺れる。
え? 死んだ……私は体勢を崩している男を見るが鮮血はない、それどころか当たったはずの弾の先端が平らに歪んでいた……これ何なの。
そう思っていると永山さんが勢いよく階段をかけてくる。そして声を荒げながら男の顔面を殴りつけた!
男はそのまま柵を超え一階に落下、何かに激突し激しい音がした。
「大丈夫か?」
永山さんは私の体を支えると、ナイフをゆっくり抜く。っ……いたい……。
「あ~……深く刺さってない大丈夫」
そう言って彼は自分の服の袖を破ると、私の傷口に巻いてくれた。
「さっきの人は死んだんですか?」
私は震える声で尋ねる。
「あぁ、大丈夫だろ。落ちたときに変なところ打ってなければ。殺傷能力が極めて低い、衝撃だけ与える弾丸使ったから」
永山さんはそう言って、銃弾を入れる部分を開き、銃口を上に向けた。するとバラバラと弾が床に落ちるがそれは途中で霧のように粒子のようになって消えた。
あの射撃能力、格闘術。そして曲がる弾に、消える弾もしかして……この人
「な、永山さんは能力者なんですか?」
私は永山さんに尋ねると。それを見た永山さんは怪訝な表情をし、こう答えた。
「は? 知ってたからわざわざ裏口から来たんだろ? 誰に言われてきた。クロスケか、特ヲタか? うーどんか?」
何を言っているのか分からない……どういう事なんだろうか……あ、そういえば私いかないといけないところが!
私は立ち上がりながら思い出す。紹介してもらった所に行かなくちゃ。
「あの、永山さん。依頼のお礼はします! でもその前に鷲川町のここに行きたいんですけど、探偵さんならご存知ですよね?」
私は厚かましいが、いかなければいけないところがある。そこの場所を書いたメモを探偵である永山さんに渡しながら頭を下げた。
永山さんはそれを受け取り見る。あれ、永山さんがすっごい苦笑いしている。
「し、知らずにここに来たのか……あんたが探しているのはここだ」
永山さんはあきれた表情で私を見た。
「え、えぇぇぇ。し、知らないうちに私、目的地に来てたんだ……」
「ったく、寄越すなら電話しろ、っていつも言ってるのに………」
永山さんは頭を掻きながら悪態をつく。
「しゃーね。今から君にここを教えたやつの所に行く、依頼の報酬もそいつらからたぁぁぁっぷり貰ってやる」
「え? あ、はい! えっとけいさ「白音署の奴らに言われてきたんだろ? 知ってるっつーの」
永山さんは私の言葉を遮ると私がここに来た時以上に面倒くさそうな表情をした。彼は何かを考えるような仕草をしながら一階を見ると、『えぇぇ』と言う、彼の声が響いた。
「に、逃げられた? あの状況で動けるはずもない…外に仲間がいたのか?」
永山さんと一緒に一階を覗く。すると、先ほどまで気を失っていた男たちが消えていたのだ、服を残して。
あの一瞬で運び出されたのかしら? 私がそう思っていると永山さんは柵から飛び、一階に降りた。私も階段を使い一階に降りる。く、臭い何なのこの匂い。
「やられた。もう一人いやがったな……」
永山さんも匂うのか、鼻と口を押えながらつぶやく、2階にいるときは気がつかなかったが一階中に何かが解けたような異様な匂いが充満していた。
そして男たちが倒れていたところには、彼らが来ていた服がありそこに白い粉のような物が大量にあった。
「これって?」
「溶かされたんだよ、何者かによって。証拠隠滅ってやつだ。これは本格的にあいつらのところ行かなくちゃな」
永山さんは粉々になった一階を歩き、ぼろぼろのテレビ台の中からリモコンのような物を取り出すと、割られた窓に向けて操作、電子音が鳴ると、上から重厚なシャッターが下りてきた。
さらに、2階部分の割れた窓や壊れた扉に向かってリモコンを向け操作、すると一階の窓と同じようにシャッターが下り、塞いだ。
「よし、これで壊れたところから侵入はされない。さぁ行こうか。連絡もなく君をここに寄越した輩のいる警察署に」
永山さんはそういうと二階に上がるための階段の真横にあるドアに向かって歩いて行った、私も後ろを追いかけ、二人そろって外に出た。
「あ、君の名前を聞くの忘れていた。名前は?」
「えっと、明希です。スオミ・明希」
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