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第一話




 某町。

「っ、何なのよ!!」


 悪態をつきながら、狭い路地を走る。私は足を止めず、追いかけてきている何かを視線だけで見ると、路地の角を曲がろうとした。その時!


「あぐぅっ」


 背後が勢いよく爆発、私の体は爆風を受け進行方向に飛ばされると、そのまま地面を転がり、背中を近くのビルの外壁に勢いよくぶつけた。


 痛い……動けない……でも逃げなきゃ……私は、地面にうつ伏せになると、肩で息をしながら呼吸を整えた。その時だ、重厚な何かを引きずるような足音が聞こえてきた。


「もう追手が……とにかくここに隠れないと……」


 私は、ビルの壁につかまりながらゆっくりと立ち上がりビルのドアをゆっくりと開いた。


 そして、ビルの中に入ろうとするが、足がもつれ倒れこむようにビルの中に入った。ビルの中に入ると、壁を支えにゆっくりと立ち上がり、震える手で扉を閉め鍵をかけると、もっと奥に行こうと、廊下の方を振り返る。


 すると、目の前にあった半開きになったドアの隙間から光が漏れていた。誰かいるの?


「すみません! 追われているんです! 助けてください!!」


 私はゆっくりと歩きながら、ドアを勢いよく明けて叫んだ!


「っ……くそっ、回線が……」


 真正面に椅子に座りブツブツとぼやいている20代後半くらいの大人の男の人がいた。


「あの。すみません! 追われているんです! 助けてください!!」


 部屋に入った時よりも大きな声で叫ぶ。彼は私を少し見ると軽くため息をつきながら


「こちら、永山探偵事務所です。現在、依頼受託中です。御用の方は日を改めてお越しください」


 え?彼は私と目を合わせようともせず、無愛想な声で私に言う。私はもう一度話しかけようと、デスクトップ型のパソコンとその横に置いてあるノートパソコンのキーボードのエンターキーを何度も押している彼に近づこうとした。


 その時、外から轟音が響いた。もう追手が!?


「お願いします永山さん! 私を助けてください!」


 探偵と言っても助けてくれないかもしれない、それでも私は会わなければならない人がいる。少しの間だけでもかくまって欲しい……。


 私の声を聞いた永山という探偵は軽く舌打ちをし、頭を掻いた。


「俺はまとめて依頼を受けてないの。マルチタスクなんかやっていません!」


 え、えぇぇぇ……永山さんは強い口調で私に言うと、再び、パソコンの方を向きキーボードのエンターを何度も押し始めた。


 確かに急に来て助けてくれと言った私が悪い、それは分かる、仕事が立て込んでいるのかもしれない……でも……何なのこの人…。


 不安を覚え、一歩下がろうとした、その時! 私の正面、ちょうど永山さんの後ろにある大きな窓から何かがぶつかったかのような音がなる。


 え? 何なの? 私はゆっくりと窓に近寄ろうとしたその時、何度も何かが窓にぶつかり円形状のヒビができていた。


「えっ!」


 これって弾!? もう追手が!? 私は思わず、窓から離れる、しかし足が滑りそのまましりもちをついた。


「ま、窓が……弾が……」


 私は震える声で窓を指しながら永山さんの方を見る、しかし彼は深くため息をついた。


「あ~、うるさいな。たかだか銃弾で喚くなよ……」


「た、弾ですよ。何でそんなに冷静なんですか! あなたの後ろから撃たれてるんですよ? し、死にますよ?」


 思わず声が出る。何を言っているのだろうかこの人は…


「うっし! 購入できた! クロスケの買い物終了」


 永山さんは勢いよく立ち上がりながら机の上に置いていたスマートフォンを握り、操作した。そして


「で? お嬢さん。私に何か用なんですか? 」


 永山さんはスマホを机に戻すとゆっくりと私に近寄り、手を差し出した。どうやら仕事が終わったようだ。


「え、だ、だから。わ、私を助けてくださいって」


 私は彼の手を借りながらゆっくり立ち上り彼に、助けを乞う。


「助けてって言われても、さ、どう助けたらいいのか具体的に言ってくれないと、お金に困っているの? それともストーカー? あ~この時期だと定期試験か。勉強かな?」


 乞う立場の人間が思ってはいけないことかもしれない、駄目だこいつ。


 その時、左側にある大きな窓が勢いよく割れ、楕円状の物体が侵入、近くにあった家具の角にぶつかると爆発した!


「きゃあっ!!」


 私は頭を抱えながらその場にうずくまる。


「あっ! 掃除しないといけないだろうが!!」


 いや、問題はそこじゃないでしょ。幸いこの建物は吹き抜けになっており、私たちは2階部分と言っていいのかは分からないが上の層にいた。


 そして爆弾が放り込まれたのは下の階層の窓からだったのと、威力が小規模だったため煙はすごいが、爆発の影響はほとんどなかった。


「な、なんでそんなに余裕何ですか! てゆーか今の状況分かってます!? あなたも死ぬかもしれないんですよ!?」


「そん時はそん時よ。死んだらええがな、死んだら」


 えぇぇぇぇ……なんなのこいつ。ここにきて何度目かになる驚き。冷静というか肝が据わっているというか、こいつは信用してはいけない。逃げないと。


「で? 依頼内容は?」


 ゆっくり立ち上がり離れようとした私に向かって彼は詰め寄る。


 その時。爆弾が投げ込まれた窓を勢いよく突き破り大男が侵入、私に向かって飛びかかってってまずいまずいまずい!


「わ、私をあいつから守って! 私の安全を確保して!」


 私は思わず、黒いマントのようなコートにシルクハットの帽子をかぶり、能面のようなお面をつけた大男を指しながら叫ぶ。


 すると永山さんは頬をポリポリとかくと面倒くさそうな表情で私の腕を掴む。そして、私の体を引っ張りながら私の正面に出た。えっ! なんで、彼の意図が読めない。


 彼は私と大男の間に立つような位置になったのだ。


「え、守れってそういう意味じゃ!」


 永山さんに向かって叫ぶ。


 だが、大男の太い右腕が永山さんに振り下ろされようとした。私は思わず目を瞑り顔をそむけた。


 その時、何かが弾けるような乾いた音が鳴ると、下の方から何かが落ちる大きな音が響いた。

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