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  作者: 有栖
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君の瞳に

私は貴方を目で追っている。先週まで目にも留まらなかった貴方のことを今日は目で追い掛けている。気付かれないように、気づいて欲しいと願いながら…。


5月1日の午前9時。84人の中の1人にあなたと私は肩を並べた。

その日から始まり、「はじめまして」と声を交わすこともなく目を合わせることもなく3週間の時間を経て突然貴方から「これ、受け取って貰えますか?」と、メモの切れ端を渡された。

そこに書かれていたのは「零」と一文字。

驚いた。その一瞬、その一文字が私の中へと貴方を引き寄せたことに驚いた。

部屋に入り、登録するまでに使った時間は1時間。

メモを渡された瞬間嬉しさが込み上げてきたけれど、恥ずかしさや相手から見られてる自分がどうなのかを考えるととてつもなく恐ろしい。不安。緊張する。とにかく臆病で自信の無い自分を取り繕うために平然を振る舞う。

そんな私を彼はどう思っているのだろうか。いつも誰かの目を避けるように、少しでも自分を好きになれるように、いつも笑顔を崩さずに、とにかく相手に優しく居ようと過ごしている。

この鎧を脱いでしまったなら。失敗してしまったら。そんな不安に襲われてしまう。

グルグル回る負の感情を押し殺して一言。

「よろしくね」とだけメールを送ってみた。

よくやった私!やっと送れた!その瞬間にピロンと携帯が鳴り、携帯画面に「鵜原 零」と表示された。顔が緩んでしまう。

“追われる女は直ぐに返信を返さない”と、どこかの本で読んだけれどもそんな事は忘れてしまっている。速攻で既読、速攻で返信。した後で、「あ、、ガツガツし過ぎたかな。」とプチ反省会。



5月1日、僕の目に1人の女の子の姿が留まった。

それは、小さい身体を更に小さくする様にして人混みを歩いていく可愛らしい子だった。「すみません、すみません」と唱えている。童顔で少し高めの声の彼女は見た目と違い、とても控えめで大人しそうな印象だった。

俺はそんな彼女に、一瞬にして心を奪われてしまった。

どうにかして話し掛けたい。どうにか視界に入りたい。

そう願って視線を送ったり、わざと前を横切ったりしてみても彼女はちっともこちらを向かない。

「小島 優」彼女の周りにはいつも人が溢れている。年下の子にも、何歳も上の先輩にも同じように分け隔てなく只々優しく笑顔で振る舞う。

俺は、彼女の別の顔を。そこにいる誰も見たことの無い彼女の笑顔を独り占めしてみたいと思った。

だから俺は決意した。今週が終わる前に彼女に連絡先を渡し、彼女をデートに誘おうと。

でも、、彼女に彼氏や好きな人は居るのだろうか。

もしチャンスがあるならば何と声を掛けようか。

彼女決意したが実際行動しようとすると頭が真っ白になってしまって全然言葉が出ない、足が動かない。

彼女を前にすると、緊張で汗ばむ程強く握りしめられた拳を緩めることは出来ない。だから、彼女の視界に入るまでにも3週間を費やしてしまった。

そして今日こそ。と決意して彼女の前に立ち、「これ、受け取って貰えますか?」と小さなメモを差し出した。

その後家に帰り、彼女からの連絡を待つが一向に来る気配がない。お願いだから早く連絡をくれ。不安と緊張で心が持たない。

そんなことを唱えながら携帯を握りしめていると、ついに彼女からの連絡が来た。「よろしくね」の一言。嬉しい!今なら空までジャンプ出来そうだ!顔がニヤけてるのが自分でも分かる程だ、きっと世界一ブサイクな顔をしているに違いない。だがいい。

「よろしくね」と送り、そこから寝るまでの3時間とにかくメールを交わした。

彼女は俺の1つ下で、妹がいるらしい。そして意外にもHIPHOPを聞くらしい。休日は家で映画やドラマに浸るらしい。

「もっと知りたい」その感情に掻き立てられ、気づくと彼女をデートに誘っていた。

「明日、優ちゃんの用事が済んだら、少しだけデートしませんか?」



「明日デートしませんか?」その一言に目が丸くなった。

連絡を交わした3時間で、もっと知りたいと思ってしまった私がいた。

だから、とにかく普通に。平然を装いながら「いいよ」と送ってしまった。

え!待って!はや過ぎない!?展開はや過ぎない!?デート!?!?何着ればいい!?髪型は?化粧は?うわっ爪も磨こうかな、、待って待って待って!どーーーしよーーー(汗)

翌朝。…ぜんっぜん寝られた。

漫画とかなら寝られないシーンなのに、しっっかり寝られたわ。

逆にびっくりした。こんなにも熟睡出来たのいつぶりだろう。

そしてまた現実に引き戻され、とにかく焦りに襲われた。

彼に会うまであと30分。何回も鏡を見返し、お店のガラスに映る自分を確認する。駅の前で待つ彼の姿を確認した。胸が鳴った。ニヤける顔を隠す様に心を静めて


「ごめん!お待たせっ」


彼女の声が背中から聞こえた。

振り返るとそこには白いレースとブルーのスカートを身に纏った彼女が立っていた。

え!可愛い!!想像の何倍も可愛い!!髪型も可愛いし、メイクもいつもより可愛い!!こんなに可愛くていいのか!?

とにかく可愛い彼女を前に俺は (続)

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