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黒の魔王。

 チチキトク スグカエレ


 はうう。


 開いてみるとそれだけが書かれた魔紙。


 真っ赤な血の色で、それだけ、


 どう見ても何回見返してもひっくり返しても裏を見ても、それだけしか書かれていない。


 でも。まさか。


 あたしに届いたってことはこのエアメールは間違いなくあたし宛。


 じゃぁ、間違いない?


 父さんの事!? 父さん……、父、魔王ゼノン・マックロードその人が?



 でも、どういう事?


 あたしがここに居るってバレてるって事?


 そう一瞬考えて。


 ううん、っと、考え直す。


 あたしがここに居るってバレてたらこんなまどろっこしい真似せずに直接会いに来ているはず。


 それにこの文面。


 万が一にも第三者に見られても構わないようあたしにしか意味が通じない書き方をしたのだと思えば納得もできる。


 だって、魔王が危篤だなんて、トップシークレットじゃない。


 そんな混乱のもとになるような情報を迂闊に漏らすわけがない。


 と、すれば。


 ああ。これ、この付近の人族の街で手当たり次第に撒いたのかな。空から撒けばそんなに手間もかからない。飛行機の魔具を自動で飛ばして街の上空から一枚ずつ撒けば。




 父さん……。


 あたしは別に父さんの事が嫌いで家出をしたわけじゃ無い。


 父さんのようにはなりたくない、ただそれだけの理由だった。


 父さんが魔界で元気でいる、そんな前提が崩れるだなんて1ミリも考えた事も無かった。


 それなのに……。





 あたしの全身から黒い霧が噴き出した。


 感情が黒く染まり、それがそのまま影響したかのような漆黒の粒子。それがあたしの身体を覆う。


 黒い髪はより黒く暗く漆黒に鈍く蠢き。


 そこに存在を主張する黒く光るツノが伸びる。


 全身が漆黒のドレスに包まれ手には黒のグローブ。指には黒く鈍く光る指輪がはまる。


 脚には黒いエナメルな編み上げブーツ。そして。


 真っ黒なマントが肩にとまった。



 黒の魔王。マックロードの血筋の魔王。子供の頃からすでにそう呼ばれていたあたしのこの姿。



 あたしはそんな魔王の正装に身を包み、夜の街に飛びたつ。


 上空高く舞い上がったあたしはそのまま東の地、ノドの地にある魔人の国エノクを目指して飛んだ。


 風を切り、闇を切り裂き。音の速さまで速度を上げる。


 このまま飛べば今夜中に帰る事ができるだろう。それまで持ってくれと願いながら。涙が弾け霧になった。





 水平線の先から陽がさして。


 夜明けの太陽が昇り出したところであたしはエノクの首都コンドルゼノンに到着した。


 中央塔、通称魔王城の上空から防御結界を潜り抜け自室のバルコニーに降り立つと、そのまま部屋を抜け王の居間を目指し廊下を駆け抜けた。

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